海ゴミアーティスト・あやお、作品を通じて伝えたいこととは
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世界的にも問題視されている海洋ゴミ問題という課題に向き合い、未来を変えようと動いている海ごみアーティスト・あやおさんを今回はご紹介。彼女は自身のユニークな発想を活かし作品を作り出すのだが、そのアート材料はすべて、「海辺に流れ着くゴミ」だというから驚きである。彼女が海ごみアーティストと名乗り、作品を作り続ける理由とは一体。
海ごみアーティストあやお
石川県在住。1992年生まれ。
8匹の保護猫と自身でリノベーションを手掛けた家で自給自足の生活を送っている。
美しい地球で生きたいし、綺麗な海で泳ぎたい。
だからゴミで魚を創る。想いが届かない層にも届くように。
Twitter:https://twitter.com/ayaotsukuru
instagram:https://www.instagram.com/ayaotsukuru
youtube:https://www.youtube.com/channel/UCvK_tlZofguLsruyn0H9iig
きっかけは「拾うだけじゃダメだ」と思ったから
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(石川県・能登島)
オーシャナ
あやおさんがゴミで作品を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
あやおさん(以下、あやお)
元々海が好きで、石川県能登島にある海まで徒歩2〜3分の古民家で自給自足の生活をしていました。能登島の海はとてもきれいですが、たくさんゴミが落ちているのを見てがっかりし、一人でゴミ拾いをはじめたのがきっかけです。
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(石川県・加賀市)1年前まで能登島に住み、現在は加賀市に住む
あやお
とはいえ、自分一人で拾っていても、漁師さんや島の人たちの中にも普通にゴミを捨てる人はいるので、「拾うだけじゃだめだ」と思うようになりました。捨てる人がたくさんいるから、どんなに拾ってもゴミがあるわけなので。
その時から、ゴミを使って地球を表現したり、貝殻ピアスなどのアクセサリーを趣味で作ったりするようになりました。とはいえ、当時は販売しても、少ししか売れませんでした。
でもつい3ヶ月くらい前に、「ゴミを海の生き物の形にした作品を作ってみよう」と思いつき、はじめて作ったペンギンが、驚くほど早く売れたんです。試しにもう一個作ってみたら、それも30分ぐらいで売れて。世間の反響が大きいと思ってからゴミで魚を表現したアート作品を作っています。
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(気候変動アクションのプラカードをゴミで制作)
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(あやおさんが作った初めての海の生き物の作品・ゴミペンギン)
オーシャナ
始めからゴミで経済が回る確信はありましたか。
あやお
最初のうちはお金にしようというより、「ゴミを捨てちゃダメだよ」という気持ちをゴミで表現したいと思って作っていました。ただ当時、あまりお金がなかったので「これがお金になったらいいな」ぐらいの気持ちでした。
偶然にも私の周りには多くのアーティストがいて、作品を作って生活している子がたくさんいるので、自分でもできるんじゃないかなと思ったんです。そこから、海ゴミアーティストを名乗り始めました。
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オーシャナ
この活動を始めたのはいつからですか?
あやお
ゴミアートをし始めたのは3年くらい前かな。海が好きだから「汚い海は嫌だな」と思い、海のゴミ問題について結構悩みました。夏には、3日に1回は海に入っていたので。
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(海に漂着したたくさんのゴミ。)
海ゴミアートができるまで
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(ゴミカツオ)
オーシャナ
作品を作るまでにどれくらい時間がかかりますか?
あやお
まず、ゴミを拾うのに2〜3時間くらいかかります。その後、洗って乾かして1時間くらい、選別に1時間くらい。作り始めるのはそれからです。1作品を作るのに、少なくとも1日はかかりますね。作品によって違いますが、最近は3日かけてやっと1作品が作れるくらいのペースです。
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(ゴミ拾い時のお写真)
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(洗って、乾かしている様子)
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(色ごとに選別。カラフルで素材もバラバラ。)
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(海ゴミがアートに生まれ変わりました。)
オーシャナ
作品制作でこだわっている部分を教えてください。
あやお
今やっているのは、友達のアーティストから使わない金具をもらって活用したり、購入していただいた方に送る手紙を葉っぱで作ったりしています。まだ、できていないけれど、将来的にはプチプチではなくてススキなどの植物を代用して梱包したいなと考えていたりします。キャンパスも使いたくないので、ゴミのみで作品をつくることを目標にしています。とはいえ、色々試してみないと、実現できるかはわかりません。
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(友人のアーティストが使わない金具を活用)
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(葉っぱのお手紙。なるべくゴミを出さないように。)
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(ダンボールはスーパーで調達)
ゴミで経済を回す「売れたゴミでゴミを買いました」
オーシャナ
あやおさん自身も、ゴミでできた作品を購入することはありますか?
あやお
この前、友人から6万円でプラスティックゴミから作ったランプシェードを買いました。プラスチックは溶かすことで、いろいろ加工ができるんです。ランプシェードを買うための6万円も、自分でゴミを売って稼いだお金で買いました。売れたゴミで、ゴミを買って。その友人も、私の作品を買ってくれると言っています(笑)。
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(シーガラスで作られたマグネット)
オーシャナ
元々、アートが好きなんですか?
あやお
昔、「山村留学」という仕事をしていたことがあって。山の中で18人の子供たちと3年間暮らしていました。みんな「自分のものは自分で作る」という生活です。お風呂は薪風呂で沸かしたり、みんなでご飯を作っていたりしました。元々、物づくりは好きでやっていたけど、山村留学の仕事をする中でさらに物づくりを学びました。
山から木を切り倒すところからはじめ、自分の家の食器も、椅子なども自分で作りました。また、古民家を購入し、元の状態から壁を塗り変えたりなど、リノベーションして生活しています。
届かなかった層にも、私の想いが届くように。
オーシャナ
作品を通じて伝えたいことはありますか?
あやお
「お肉食べるのを減らそう!」「環境問題について考えよう!」「自分の生き方について考えよう!」など…伝えたいことはたくさんあります。元々、これらの気持ちを伝えるためにSNSを使って発信をしてきました。でもあまり、届いてほしい人に届かなくて。だから自分の作品が有名になることによって、作品を出すときに自分が伝えたい想いを添えるようにしています。それが拡散されることによって、届かなかった人たちに届いてくれると思うので。そのおかげで今では、前より自分の伝えたいことを伝えることができていると思います。
ーあやおさん、ありがとうございました。
美しい地球で、これからもきれいな海で泳ぎたい。シンプルで真っ直ぐな彼女の気持ちに、頷く人も多いのではないだろうか。あやおさんの地球に対する想いがたくさん詰まった海ゴミアート作品。もはやゴミではなく、一種の資源ではないかと、ポジティブな発想にも導いてくれそうだ。