【玄界灘:DAY1】人々の入島を拒み続ける世界遺産・沖ノ島。「神宿る島」の海中は、群れ!群れ!群れの凄い海
「玄界灘でダイビングができる」
そんな噂がダイバーの間で囁かれるようになってまだ2〜3年。その名前からも、すごい海ではないかという勝手な印象を持っていたが、潜りに行く以外に全容をつかめる手段はないと思っていた。
そんな時、石垣島でのダイビングロケ中に、たまたま玄界灘でダイビング・クルーザーの船長をやっている松本圭司さんご夫妻に出会い、一冊の冊子を渡された。
その冊子というのが、「玄界灘 DISCOVERY CRUISE The Magazine for Underwater Adventures Number1 2017創刊号」。
ちなみに、裏は、「硫黄トカラ DISCOVERY CRUISE The Magazine for Underwater Adventures Number1 2017創刊号」と両表紙になっている。
「神宿る沖ノ島 ユネスコ世界遺産候補 絶海の孤島に潜る」、「絶品寿司と冒険の島々 壱岐島・二神島」、「新プロジェクト始動 福岡小呂島」というタイトルで、それぞれの海のポイントが写真とともに、詳しく紹介されていた。
未開拓という割には完成度の高い内容だったために、すでにかなり潜り込まれている、九州でも人気のスポットなのだろうと考えを改めたのだが、ダイビングメディアはまだ潜ったことはないとのことだった。
同時に、九州にこんな凄い海があるなら、やはり一度は潜ってみたいという思いも強くなっていった。しかも、沖ノ島は、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」候補地から、昨年7月に世界遺産に登録されたばかり。
加えて、この沖ノ島は、世界遺産になりながらも、古くからの信仰対象から、観光客が入ることが認められていない稀有な世界遺産でもある。
沖ノ島に関しては、以下のHPを参考に
http://www.okinoshima-heritage.jp
玄界灘という、ダイビングメディアが誰も入ったことのない、未開の海の孤島であり、かつ宗教的な神秘性を持った世界遺産・沖ノ島。ニュース性、話題性としても、潜る価値はおおいにあった。
都市型のダイビングショップが多い福岡の中で、唯一ダイビングリゾートのある糸島に店舗を構え、2隻のボートを駆使してガイドするDiver’s Guide SUNS。
オーナーガイドの木村尚之さんが船長の松本さんとともに開拓を続けた、“玄界灘の海が一体どれだけ凄いのか!”を取材し、噂に聞く、その全貌を明らかにできればとの思いで現地に赴いた。
ついに「神宿る島」海域に初潜入!
群れの多さに目移りする海
初日に向かったのは、玄界灘のダイビングポイントでも随一の人気を誇る「神宿る島」沖ノ島海域。台風7号が接近中のタイミング、この日に潜っておかなければ、滞在期間中、2度とチャンスは無いかもしれなかった。
この沖ノ島は、朝鮮半島との間にある絶海の孤島。糸島からは、約60kmの距離にあり、クルーザー・STINGRAYで約90分。途中対馬海流を横切るために、凪の日でも時に大きく揺られることもある。
しばらく海を走ると、目の前に標高の高い島影が見えてくる。来る前に「どれくらいの大きさですか?」と木村さんに尋ねたら、「西表のオガンくらいかな〜」と言っていたけど、形はともかく、サイズはかなり大きかった。まあ、島の中に原生林が持てるくらいだから・・・。
クルーザーが島に近づくと、1本目のエントリー前に、木村さんが、沖ノ島に向かって手を合わせた。何を祈っているのかを聞くのを忘れてしまったが、僕もつられて、手を合わせた。僕の場合は、ほぼ90%が安全祈願。残りの10%がすごい物が撮影できますようにというお願いだった。
最初に潜ったのは、沖ノ島でももっとも人気のあるダイビングポイント「屏風」。
対馬海流がぶち当たり、荒れる海の中、透明度の高い海中へとドリフトで一気にエントリーするなり、ブリの群れに取り囲まれた。
その向こうには、イサキの子が一つの根を覆い尽くすように群れ、イワシの群れには、常にアジやカンパチ、メジナが、アタックを繰り返していた。「なんなんだ、この魚影の濃さは!海中が魚で埋め尽くされている!」
しかもそれが、エントリーしてすぐの状態。
エントリー前の素潜りでのカレントチェックで木村さんが、「すげえ、ブリの群れ!真下にいる!」と叫んだ一言で、畳んでいたストロボのアームをセットした状態にして船上からエントリーしていた。
おかげで、すぐに撮影体勢に入れていたために、慌てることはなかったが、これだけの群れが一度に現れると、一体どの群れをメインに撮影すればいいのかと目移りしていたのは事実。
とにかく何も考えずに目の前に現れた群れを夢中で撮影し続けた感じで、1ダイブが終了した。
「いや〜、エントリーしたところが凄くて、メインの場所まで行き着けずに終わってしまいました」と木村さん。
ええ〜、これはまだ序章だったのか?
メインのポイントまで行っていたら、もっとすごいことになっていたのだろうか?
「群れを見てもらうには、このポイントが一番なのですが、荒れてることが多くて、今回は、1本目がギリギリでしたね。でも潜れてよかった」と木村さん。
玄界灘のダイビングサイト3本柱として、壱岐島、小呂島、そしてこの沖ノ島海域があるのだが、年間ツアーを開催して、沖ノ島まで潜りに行けるのは、約7割程度という。年間40日から50日、ツアーを開催するというから、だいたい、年間28日から35日程度。そして、この「屏風」に潜れる日は、その中で3割程度なのだと言う。
巨大キンギョハナダイが
「祇園」の街で舞う
次に潜ったのは、比較的新しく開拓されたポイント「祇園」。「えっと、ここは、1ダイブ中、ずっとキンギョハナダイ一本です」とブリーフィングされたが、ハナダイ系の撮影は、結構悩まされることが多い。潮の当たり具合、周囲にいるダイバーの動き、色々なものが要因でなかなか納得のいく撮影ができないことが多いし、基本そんなに広範囲でないことが多いからだ。しかし、潜ればその名前の意味がすぐに納得できた。
「なんなんだ、このキンギョハナダイの群れ方と、そして大きさは!それに、ソフトコーラルの群生具合は!」
キンギョハナダイの群れは好きで、どこでも撮影する被写体の一つ。しかし、ここのキンギョハナダイ、サイズが通常見慣れたハナダイの1.5倍はありそう。そして、その群れ具合たるや、どの根もソフトコーラルと、巨大キンギョハナダイに埋め尽くされている。
潮が回る岩の周りなんか、キンギョハナダイが洗濯機の中で泳いでるみたいに、旋回している。しかし、写真では表現しきれない。
群れ!群れ!群れ!
魚影が濃い海とはまさにこの海のこと
そして3本目、潜ったのは、「ノースタワー」。ここでも、群れ!群れ!群れ!沖ノ島には、群れのいないポイントは無いんじゃないかというほど、海中は魚の群れに覆い尽くされていた。
木村さんには、「さあ、これでどうだ!」とばかりに、玄界灘の群れの圧倒的な凄さを初日から見せつけられた。しかし、群れの凄さを1枚の写真で表現するのは本当に難しい。
エキジットした僕の様子を伺う木村さんに、「すごいっすね〜!半端ないっすね〜!」と素直に喜べない自分がいた。この玄界灘の群れの凄さを、果たして、取材期間中にほんの少しでも表現することができたのだろうか・・・。
台風の影響で、もう潜りに来れないかもしれない。
だけど、できればもう一度潜りに来たい!
半端ない群れへの感動と、それを上手く表現しきれない葛藤がぶつかり合った、玄界灘初日のダイビングとなった。
■supported by Diver’s Guide SUNS
福岡で唯一、海辺のリゾート糸島にベースを置くダイビングサービス。
2隻のボートを駆使して、糸島エリア、玄界灘を潜る。しかも、そのポイントは全てSUNSのオリジナルポイントという、まさに玄界灘の開拓者。
今回のロケでは、14人乗りのクルーザーSTINGRAYを駆使して、沖ノ島、小呂島、壱岐島などの玄界灘の海を案内してくれた。オーナーガイドの木村尚之さんは、玄界灘の開拓者であり、また、鹿児島のトカラ列島でのチャータークルーズにも力を注いでいる。
Diver’s Guide SUNS
〒819-0201
福岡県福岡市西区宮浦2129-21
TEL:092-809-2378
http://sunslog.blog42.fc2.com//
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この冊子、沢山作ったので、まだ少し余っているそうです。
もし、欲しい方がいましたら、お譲りしますので、Diver’s Guide SUNSのHPよりお問い合わせください。
玄界灘開拓に参加してくれたSUNSのメンバーの写真を多く利用して構成。ポイント紹介など、かなりしっかりと掲載されていて、ダイビングのコラムページも充実しています。
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