無数のヒラマサがイワシの群れを囲い込む、「玄界灘のサーディンラン」を激写!
鹿児島の取材レポートを連載中の越智カメラマン。
あと2本ほど公開予定ですが、玄界灘でスグにお伝えしたいものが“撮れちゃった”ので、先にこの記事をアップします!
(編集部より)
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鹿児島県の錦江湾を潜り終えて、機材を詰め込んだレンタカーで一人、一路九州を北上してたどり着いたのは、福岡県の糸島半島にある、Diver’s Guide SUNS。
目的は、SUNSのオーナーガイドの木村尚之さんが近年、開拓を続けてきた玄界灘。メディアとして、海に入るのは、今回のロケが初めてなのだそうだ。
そういう海を一番乗りで取材できるのは、不安もあるけど、いつも何が見れるのかとワクワクしてくる。
到着した夜、ガイドの木村さんから、「この玄界灘の海をどう切り取って表現してくれるのか、越智さん勝負です!」と言われて、「え〜え〜、それ(勝負)はちょっと・・・嫌です」という会話から始まった玄界灘ロケ。
台風接近中!
まだ見ぬ海の撮影に不安とワクワクの間
木村さんは、沖ノ島、壱岐島、小呂島と、誰も本格的に潜ることのなかった玄界灘を開拓し、ダイバーにその名前を知らしめた開拓者。開拓史の詳細は、別のヘッドラインで書くとして、そう言われてしまうと、いつも、どうしても何か現地のガイドを唸らせるような凄い瞬間や、まだ見たことのない海の表情を切り取らなければというプレッシャーに、少なからず心に動揺が走る。
しかも今回は、滞在期間中、台風7号の影響で潜れなくなる日がかなりありそうな状況。もしかしたら、1日しか潜れない可能性も・・・。
そんな不安要素がありながらも、とにかく限られた状況でベストを尽くし、玄界灘の海を写真で表現していくしかないと心に決めて、臨んだ2日目。
本当はこの日も台風の影響で潜れないだろうと思われていたが、予報よりも足の遅い台風のおかげで、急遽潜りに出ることに。初日になんとか玄界灘のメインのダイビングサイト、沖ノ島を潜ることができたため、この日はまず壱岐島を目指した。
しかし、壱岐島の西に暴風警報が出ていたために、壱岐に向かう途中で進路変更をして、より東にある小呂島でダイビングすることに。ここも、玄界灘のダイビングサイトの3本柱の一つ。
ナブラの先にあったのは
ヒラマサに追い詰められたうごめく黒い物体
この日は、本来、釣りクラブがフィッシング用にチャーターしていたクルーザーに便乗させてもらってのダイビング。潜る前後に釣りをしてもらい、その合間でダイビングさせてもらう感じだった。と言いながらも、自分も便乗してフィッシングを大いに満喫していたんだけど。
なので、通常潜るポイントと少し違う場所で釣りをしたりしていた。その近くで、大きなナブラが走り、かなりの群れの魚が水面直下で、捕食を行なっているシーンに遭遇した。
「こういうときは、釣りはしていたけど、中に入ってみたことはなかった」と言う木村さん。休憩中には、僕のスペシャルトリップの話などもしていて、特にバショウカジキが捕食するときの話をちょうどしていたタイミングでもあった。
「素潜りで潜ってみます?」の木村さんの一言に、「え、いいですか! 潜りたいです!」と持っていた竿を手放して、カメラのセッティングを素潜りモードに換えて、マスクに素潜り用のシュノーケルをセットして、即座にエントリー。
クルーザー上から指示を出してもらい、その方向へと泳いでいくと、向こうから無数の魚の群れが!
最初正面から向かってきたときは、「ツムブリか?」と思ったのだけど、側面を見たところで、ブリかヒラマサだということに気が付いた。(後に釣り上げて、ヒラマサと判明。)
僕を取り囲み、しばらくぐるぐる旋回していた後、また踵を返して、来た方向へと戻って行った。
それにしても、すごい数!
僕も後をついてその方向へと移動していくと、何やら、黒い大きな物体が・・・
「あ! イワシの群れ!」
そこには、ヒラマサの群れに周囲を包囲され、追い詰められて、同じ場所でぐるぐると旋回をするイワシの群れが。大きさは軽自動車1台くらいか。ぐるぐるととぐろを巻く大蛇のような動きで旋回を続けていた。
周囲をチェックした限り、ヒラマサ以外の魚は見当たらない。
「玄界灘のサーディンランだ!!」
透明度が悪かったので、サメなどがいないかを警戒しながらも、さらに接近を試みた。すると、イワシを取り囲んでいたヒラマサが、またこちらに向かってきたりして、イワシ包囲網にスキができた。
その瞬間に、追い詰められていたイワシの塊は、それ自体が意思を持った一つの生き物のように、縦長にのびていったかと思うとそのまま渦を巻きながら海中へと消えていった。ヒラマサたちも、その後を追い、後に残ったのは、大量の鱗。
まるで、満点の星空か、サンゴの産卵直後の海中のようだった。
旋回能力高め
集団の狩人・ヒラマサ
その後も、ナブラが立つ度に、そちらに急行してエントリーし、サーディンランを探したが、ヒラマサの大群には取り囲まれるものの、サーディンランそのものは目撃することはできなかった。それでも、釣りはできたし、他のゲストもヒラマサの群れを堪能できた。
木村さんも、「今までは、ナブラがあったら釣りしかしてなかったけど、これからは、入ってみるようにします」と玄界灘の新たな可能性を引き出せたことを喜んでいた。
ブリとヒラマサはすごく似ているのだそうだ。
クルーザーの船長の松本圭司さんの話では、回遊をするヒラマサが日本海にたどり着き、その餌の豊富さで、それ以上回遊しなくても、餌が食べられることから、この海に住み着くようになり、ヒレが退化したのがブリなのだそう。その違いは釣りあげたときに、よくわかるのだとか。
「ブリは、釣り上げたあとは、すぐに観念したように、あっさり釣り上げられて面白くないのだけど、ヒラマサは暴れまわるから、釣りごたえがあるんです」とのこと。
また、ヒラマサが群れでイワシの群れを取り囲んで捕食をすることが今回の海中の様子でわかった。バショウカジキも群れでイワシを追い込み、ボール状にして、最後は食い尽くす。
カツオやマグロは、おそらく、旋回能力が弱く、バショウカジキの捕食時に一緒に捕食しているシーンをメキシコの海で何度か見たことがあるが、イワシの群れにまっすぐ突っ込んでいく感じで、取り囲みは多分できないのではと思う。だから、ナブラが立っても餌のイワシがばらけて、こういう現象にはならないのではないかと推測していた。
一方、ヒラマサという魚は、旋回能力があり、集団で狩りをするエキスパートな魚なんだろうなと勝手に推測した。
台風で潜れなくなる前に、玄界灘の新たな海の表情を切り取ることができて、少しほっとした。
■supported by Diver’s Guide SUNS
福岡で唯一、海辺のリゾート糸島にベースを置くダイビングサービス。
2隻のボートを駆使して、糸島エリア、玄界灘を潜る。しかも、そのポイントは全てSUNSのオリジナルポイントという、まさに、玄界灘の開拓者。
今回のロケでは、14人乗りのクルーザーSTINGRAYを駆使して、沖ノ島、小呂島、壱岐島などの玄界灘の海を案内してくれた。オーナーガイドの木村尚之さんは、玄界灘の開拓者であり、また、鹿児島のトカラ列島でのチャータークルーズにも力を注いでいる。
Diver’s Guide SUNS
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