奄美大島・龍郷の海中にミステリーサークル?かわいい“宇宙人”の正体は、がんばってメスに尽くすあの生物だった!

この記事は約6分で読めます。

自然豊かな奄美大島に
昔、隕石が落ちていた?

浜を白く照らす太陽の光、終わりなく広がる生命の森、星空が一面に広がる夜空……視線を移すごとに驚かされる場所。
そんな自然豊かな奄美大島の北部にある龍郷町(たつごうちょう)に、私、水中カメラマンの堀口和重は取材に訪れました。

DSC_1720

ここで大自然の撮影を!と意気込んでいたところ、現地のガイドさんから不思議なことを聞かされたのです。
それは、「奄美大島北部の湾には昔、隕石が落ちたかもしれない」という、都市伝説のような壮大な話。

赤尾木湾というその湾は、通称「奄美クレーター」とも呼ばれ、まるで隕石が作り出したクレーターのような形をしているのだとか!

ここで、さらに奇妙な話を聞き、鳥肌が立ちます。
「奄美大島の海中には、ミステリーサークルがある!?」とのこと。

隕石? さらにはミステリーサークルまでも??

自然が有名な奄美大島に来て、「宇宙空間」がリンクするような話を聞くとは。

驚いた私は焦りながらも、そのサークルのある奄美大島北部の「バベル」というダイビングポイントへと撮影に向かったのです……

う、う、宇宙人?!
未確認生物が向かってくる!!

「バベル」にエントリー。岩礁域が広がるそのポイントは、急斜面を下り目的地に到着すると、ガラッと雰囲気が変わり、一面に砂地が広がっていました。

そこはまるで月面のようで、宇宙空間にいるような錯覚にとらわれます。
泳ぎながら移動していくと、目を疑うような信じられない光景が広がっていました。

そう、本当にミステリーサークルが現れたーー!!

th_DSC_3764

じゃじゃーん!本当にミステリーサークルみたいだ(撮影/堀口和重)

(こんなものをいったい誰が作るのだろう……)

と、神秘的な気分に飲み込まれていた次の瞬間。

(ん?サークルの中心部で何かが動いている……? なんか頭がツルツルしているし……………はっ! まさか、噂の宇宙人か!?

恐る恐る寄っていくと、その未確認生物はこちらに気がつき、急にこっちに向かってきたのです。しかも突撃するかのようなものすごいスピード!!

(なんだなんだ、怖い!!)

もうダメかと思った次の瞬間!

(なんかこの宇宙人、すごく小さいぞ……というか魚??)

よく見てみると、この生き物は地球外生命体ではなく、フグの姿をしていたのです!

しかも、なんともかわいらしい。

宇宙人の正体はかわいいフグだった(撮影/堀口和重)

宇宙人の正体はかわいいフグだった(撮影/堀口和重)

そう、このミステリーサークルのように見えるものは、実は産卵礁であり、今回のお話の主役、「アマミホシゾラフグ」が作ったものでした。
(前置き長っっ!わかってたよ!!というツッコミが聞こえてきそうですが、みなさん、お付き合いありがとうございました笑)

尽くす男を転がす女たち……
どこの世界も悲しき男の人生!?

このアマミホシゾラフグは、2012年に発見されたシッポウフグ属の仲間で、ダイビングポイントでは現在、高確率で見られているのは奄美大島ぐらいという、とても貴重なフグなのです。

おもしろいのはその生態行動。
ミステリーサークルのような不思議な円形デザインの産卵床をオスが作り、メスを呼んで産卵行動を行うのです。

オスはそれぞれ繁殖期に産卵床を作るので、3~7月のシーズンに入るとあちこちに産卵床が見られます。

産卵床を必死に作るアマミホシゾラフグのオス(撮影/堀口和重)

産卵床を必死に作るアマミホシゾラフグのオス(撮影/堀口和重)

「俺の彼女はキャバ嬢なんだぜ、でもなぜかお店でしか会ってくれないんだよなぁ」

と言っている人の話を聞いたことがあります。
(けっして自分のことではないですよ? けっして……) 

人がいても逃げずにがんばるオスのアマミホシゾラフグを見ていると、もしかしたら「俺の女のために尽くしているんだぜ!」と切磋琢磨してお店に通う……じゃなかった、産卵床を作っているようにも見えてきます。

ちなみに基準はわからないのですが、メスはより良いサークルを選んで産卵をするため、オスは選ばれるために毎日必死でこのサークルの作成に取り掛かります。

そして、うまくメスが来てくれたとしても、産卵が終わるとすぐどこかへ行ってしまうメス……。
オスはハッチアウトするまで一人懸命に卵を見守り、ハッチアウト後はまた新しい産卵床の作成に取り掛かるようです。
(うぅ、どこの世界も悲しき男の人生……?)

動画も撮影してきたので、ぜひご覧ください。

奄美・龍郷でミステリーサークルを作るアマミホシゾラフグの様子を撮影!

サークル内に大きな障害が!
イレギュラーにも対応するフグ

恋や仕事をしていると、イレギュラーなことが起こること、ありますよね?
たとえば、仲良くしていた女の子に尽くして尽くして頑張っていたら、ある日その子に

女「いつもありがとう、あなたが良くしてくれたこと彼氏にも言っておくからね」
男「…………。彼氏いたんかーーーーい!」

ということなど、人生には予想もしていないことが起こるものです。
(けっして自分のことではないですよ? けっしてね!!)

実は今回、私が観察したサークルのアマミホシゾラフグにも、「こんなはずではなかった」と想定外のことが起きており、世知辛い現実に向き合って対処をしようとしているところでした。

【悲報】ミステリーサークルの中に大きな貝殻が埋まっていた

せっかくキレイに作っていたのに、悲しすぎます。
小さい体でその貝殻は動かすのは至難の業でしょう。
それでも今ある現状を受け止めて、困難に立ち向かっているところでした。

大きな貝殻を動かそうと必死になるアマミホシゾラフグ(撮影/堀口和重)

大きな貝殻を動かそうと必死になるアマミホシゾラフグ(撮影/堀口和重)

しかし、なかなか貝殻が動かない!(撮影/堀口和重)

しかし、なかなか貝殻が動かない!(撮影/堀口和重)

がんばって動かそうと必死に対応するものの、ビクともしない大きな貝殻。
見ているこちらも「がんばれ!」と応援するしかできません……。

残念ながら、私もここまでしか撮影ができず、後ろ髪を引かれたまま奄美大島を後にしました。

ですが、このアマミホシゾラフグのことがどうしても気になり、後日、その産卵床とオスのフグがどうなったかをガイドさんに聞いてみました。

すると、貝殻は残っていたものの無事にメスが来てくれたようで、産卵も終わり、ハッチアウトも終了したとのこと!
そして、このオスはがんばって次の産卵床を作っているそうです。

尽くして尽くして尽くした結果。
メスもオスのがんばりを遠くから見ていたのかもですね。
ほんとによかった……!!(男の努力は報われるんですね!)

奄美の秘宝
アマミホシゾラフグ

アマミホシゾラフグは、先ほどもお話したように、高確率で見られているのは奄美大島だけ。
あのかわいい仕草や動き、産卵床を作る姿はかけがえのない奄美大島の秘宝であることがわかります。

ミステリーサークルのような産卵床は、7月くらいまで見られるとか。
うまくいけば、オスが産卵床を作る姿も見られるかも!

ぜひ、この健気でかわいらしい姿を、一目見に行ってあげてくださいね。

(撮影/堀口和重)

(撮影/堀口和重)

Sponsored by 龍郷ダイビング組合

奄美大島の龍郷町に住んでるオーナーが集まった「龍郷ダイビング組合」。
奄美北部の海のガイドはもちろん、サンゴの育成事業やモニタリング、オニヒトデの駆除など、奄美の海の環境保全活動などにも力を入れている。
宿泊施設が併設されているショップや水中写真に力を入れるショップ、ホエールウオッチングの開催を行うショップなどがあるので、自分に合ったお店を選んで利用しよう。

tatugo

<龍郷ダイビング組合 加盟店>
奄美ダイビングセンター とめ
ダイビングサービス ティーダ
ダイビングショップ ネイティブシー奄美
ダイビングショップ ルプラ
ダイブスピーシーズ奄美
DiveService BLUE GATE
DIVING SERVICE Y.P DIVERS
RELAX ダイビングサービス

■奄美・龍郷の取材記事をもっと読む

■ウェブマガジンはこちら

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

writer
PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。
  • facebook
FOLLOW