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海の森「藻場」を育てて守ろう~ダイバーとしてできること~Vol.5 米カリフォルニアの藻場保全プロジェクトに学ぶ閲覧無制限

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BLUE ECONOMY
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突然ですが、皆さんはラッコが海で寝ている所を見たことがありますか?
残念ながらラッコは絶滅危惧種であり現在の日本では水族館以外ではほとんど見る事ができませんが、寝ている時に流されないように、海藻を体に巻き付けて眠ります。
見た目だけではなく、食べ方も寝方もかわいいですね…!

(海藻に囲まれるラッコ、カナダ 画像:Unsplash)

かわいいだけでなく、ラッコと海藻にはとても密接な関係性があります。
ラッコは実は海の生態系のバランスを保つうえで重要な「キーストーン種」と言われています。その1種がいなくなると、生態系全体が崩壊する事もあります。

北米西海岸では、元々豊かな藻場が広がっていて、そこにラッコたちも生息していました。ラッコはウニを食べ、ウニは海藻を食べます。この絶妙なバランスの上に生態系が成り立っていたのです。
18~19世紀に毛皮を目的にラッコが乱獲され絶滅寸前にまで減ると、その結果ウニが大発生し、そのウニが海藻を食べつくし、一帯の海が砂漠化してしまいました。このエピソードから、ラッコは世界で最も有名なキーストーン種と言われています。

私たちモバイルラッコ隊は、この藻場を含む生態系におけるラッコたちの役割のように、藻場を守りながら共存する存在となれるよう願い名付けられました。
(ちなみに「モバイル」というのはどこへでも行く機動力があるという意味の「mobile」と、「藻場要る」のダジャレを掛け合わせたものです…。)

元々、アメリカ西海岸などで行われているボランティアダイバーが積極的に関わる藻場保全の取り組みからインスピレーションを受け設立されました。今回は、日本ではほとんど知られていないアメリカ西海岸カリフォルニア州での取り組みをご紹介します。

カリフォルニア州での取り組み

カリフォルニア北部では、ラッコの激減によるウニの大量発生をきっかけに、元々あった藻場の90%以上が2014年から2016年のたった2年で失われたと言われています。
開発や汚染物質の流出、暴風雨などが海藻類の成長に悪影響を及ぼすと同時に、この時期はエルニーニョの影響などもあり特別海水温が上がりました。さらに病気の流行でウニの捕食者であるヒトデが激減、他にも競合種などが失われ、ウニ類が大量繁殖し藻場を壊滅させることになりました。

サンタモニカでの取り組みーThe Bay Foundation

しかし、ロサンゼルス近郊のサンタモニカ湾では世界有数の藻場保全の活動が実施されており、The Bay Foundationという非政府組織が主体となり、ボランティアダイバーや漁業者、科学者と協力し、これまでに22ヘクタールものエリアで海藻を食べつくすウニの駆除を行ってきました。
その水中でのウニ駆除活動はこれまでで合計10,000時間を超え、1㎡あたり30個体もの密度があった場所も、今では2個体ほどの健全な密度に保てており、活動エリア内では藻場の再生に成功している場所もあります。

((左)ウニ駆除活動開始前(右)ウニ駆除の結果復活した藻場 画像:The Bay Foundation)

下の写真でダイバーが泳ぐジャイアントケルプの藻場は、まさに「森」という表現がぴったりの様子ですね。
ジャイアントケルプは一日に50cmも成長することもある、藻類の中での最大種です。その藻場は生物多様性に富み、甲殻類、魚類、ウニやヒトデなどの棘皮動物、そしてラッコやアザラシなどの海獣類のコロニーとなります。冒頭でも書いたラッコが体を巻き付けて寝るというのが、まさにこのジャイアントケルプですね。日本にはここまで大型の海藻はないので、少し羨ましくも感じます。

(ジャイアントケルプの森 画像:The Bay Foundation)

この実績の効果もあり、サンタモニカ市でも自治体として2050年までにカーボン・ニュートラルを目指す目標を発表しました。藻場保全に協力する他の非営利団体Sustainable Surfでも藻場再生プロジェクトに投資し、カーボン・オフセットできるプログラムを開始する等、藻場再生の取り組みは多くの組織、町全体までも巻き込むほどになっています。

サンタバーバラでの取り組みー地元漁業者たち

また、サンタモニカから100kmほど離れたサンタバーバラでは、地元の漁業者主導の藻場保全プロジェクトも行われています。その一人Jeff Maassenが彼らの取り組みについて教えてくれました。

(ウニに追いつめられるアワビ 画像:Jeff Maassen)

このエリアでは、漁業者たちが協力してウニ駆除等による藻場保全に取り組んできました。また、アメリカでは元々ウニを食べる文化があまりなく、寿司ブームに合わせてウニのおいしさをアピールし消費を促進しています。
そして、California Sea Urchin Divers Networkというカリフォルニアのウニの漁師ダイバーネットワークというグループを作り、Facebookでも海の様子や日常風景、イベント等を発信しています。
最近では日本の藻場再生の取り組みからインスピレーションを得て、スポアバッグ(母藻)設置等の新たな施策も積極的に始めているようです。

(海藻に群がる大量のウニ 画像:Jeff Maassen)

カリフォルニアのサンタモニカとサンタバーバラでの取り組みは、限られた環境活動家や漁業者だけでなく、多くの熱心なボランティアダイバーを中心に、様々なグループや市民を巻き込み、藻場保全活動、環境保全活動が目指していくモデルを示してくれていると思います。
藻場保全は地球全体の環境に関わり、今日本でよくイメージされがちな「一部の意識高い系」の人たちが関わるものではなく、地球に生きる私たち全てが関心を持ち、関わるべき取り組みだと信じています。

北米での取り組みははるか遠くのことではありますが、やはり世界中の海は一つにつながっているので、私たちにも関係があると言えるでしょう。特に、日本にいる私たちダイバーも、海の環境を守るためにできることがもっとたくさんあるのではないでしょうか。
ダイバーやダイビングショップの皆さん、まずは自分たちの近くの海を守るために、是非一緒に活動していきましょう。

モバイルラッコ隊では、活動パートナー・協力者を募集しています!

ウェブサイト:https://www.rakkotai.org/
Facebook:https://www.facebook.com/rakkotai.org

【参考文献】
・Cleantech Concepts (2020) Can Kelp Forests Mitigate the Climate Crisis?
http://www.cleantechconcepts.com/2020/08/can-kelp-forests-mitigate-the-climate-crisis/
・National Geographic (2020) California’s critical kelp forests are disappearing in a warming world. Can they be saved?
https://www.nationalgeographic.com/science/article/california-critical-kelp-forests-disappearing-warming-world-can-they-be-saved

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