ミクロじゃないの? “マクロ”生物の謎
ダイバーの間では、小さい生物のことを
“マクロ生物”と呼ぶことは割と一般的になっているようです。
しかし、ダイビングを始めたばかりの方からたまに質問されるのです。
「ミクロじゃないんですか?」
確かに、“マクロ”を辞書で引くと「巨大であること」と出てきます。
マクロ生物=巨大な生物で、一方、“ミクロ”は「ごく小さいこと」とありますから、
ミクロ生物の方がしっくりくるような気もしてきます。
では、なぜマクロなのか?
「撮られる側ではなく、撮る側の視点に立っているから」なのでしょう。
つまり、マクロ生物ではなくマクロ撮影、あるいはマクロレンズを使用した撮影
から来た言葉で、マクロ撮影する生物、つまりマクロ生物というわけです。
マクロ撮影とは、接写して、小さい生物を“画面いっぱいに大きく撮る”
ということですから、これで一件落着……と、思いきや。
“微小なものを撮る”という意味では、
マイクロ(ミクロ ※microの英語読み)撮影と呼ぶようで、
そう考えると、被写体によってはミクロ撮影の方が正しいのかもしれません。
メーカーによってもマクロレンズだったりマイクロレンズだったり、
線引きが難しいですし、さらにマイクロがマクロに訛った説まであって、
だんだん頭が混乱してきました。
いずれにせよ、撮られる側の生物に立って呼ぼうとすれば、
マクロ生物よりミクロ生物の方が近い気がしますが、
英語のニュアンスだとミクロは顕微鏡を使うようなサイズを連想させますから、
スモールとかミニくらいがサイズとしては適切ということになるのでしょうか。
そんなこんなで、「ミクロじゃないの?」という質問をいただくようになってからは、
以前は当たり前のようにキャプションで書いていた
「マクロ系生物が充実」なんてことも書かないようになりました。
代わりに“小物”という表現を使ったりしてはみたものの、
ネガティブな意味も含まれている言葉なのでしっくりこず、
結局、生物をサイズでくくって総称することはなるべくやめ、
具体的にサイズを書いたり、サイズを連想させるように名前を書いたりした後、
“アイドル系”とか“人気者”なんてまとめたりするようになりました。
それでも、小さいサイズの生物たちを総称する必要がある時は、
小さい生物と言えばいいのかもしれませんね……。