フォト派の3大ヒヤリハット 後編
フォト派であるがゆえにヒヤリとしたり、ハッとしたり。
そんな、いわゆるヒヤリハット体験談、前編ではその内訳と3大ヒヤリハットのうちのひとつ、減圧症関連についてご紹介しましたが、今回は、残りの2つ、離反と残圧に関してご紹介します。
離反(ロスト)
さまざまな離反の原因
○写真撮影に夢中になっていると仲間とはぐれたり、違うグループについて行きそうになったりします。他のグループも同じショップのタンクを使っていると間違えやすいです。
(静岡県・男性)
○100本を超えたあたりから、むしろ、ガイドとはぐれることが増えたような気がします。何度も潜っているホームグラウンドだと思って油断しているのかも。
(兵庫県・男性)
○ケーブダイビングをしていたときに、夢中でワイドで写真を撮っていたら、いつの間に仲間がケーブの中からいなくなり、ひとりぼっち……。ケーブ内は真っ暗で、私はライトを用意していなかったので、ストロボで発光しながら進みました。幸い、仲間と出会えたけど、あの時のドキドキ感は、もう少し会うのが遅かったらと思うと怖いですね。
(静岡県・女性)
離反すると……
○共生ハゼを夢中で撮影していたら、ガイドさんとはぐれてしまい、水中で探しまくりました。仕方なく浮上しようと思ったその時、ガイドさんに見つけてもらいましたが、ガイドさんの残圧がなくなってしまい、急浮上しました。自分のせいで……。
(大阪府・男性)
○じっくり集中して撮っていて、ハッと思って顔を上げたらやはり周りに誰もいなくなっていて……。堀江さんの「太平洋ひとりぼっち」と「ダイバー漂流・極限230km」がふと頭をよぎりました。なんて大げさで、5分を待たずにガイドさんが迎えにきてくれたのでよいのですが、ちょっとの時間でも一人っていうのは焦りますね。
(新潟県・男性)
離反を防ぐには……
○ガイドとはぐれたときの安全停止中、頭上に移動中のボートの回転したスクリューが……。ビックリしました。フロートはやはり何時も必要だと痛感しました。
(鹿児島県・女性)
○まだ経験が浅いくせにカメラを持つので、毎回、一度はヒヤッ!としています。私のスキルが低いので、イントラにくっついていくのでいっぱいなのに、やっぱり撮りたくて。バディがいない!とキョロキョロしてもなかなか見つからないのですが、落ち着いて辺りを見渡すと、大抵、すぐ上とかすぐ後ろにいてくれるのに気がつきます。ですが、一瞬でも見失うとドキッとします。
(愛知県・女性)
○夢中になって写真を撮っていて、ふと周りを見ると誰もいないことがたまにあります。ブリーフィングのコースを思い出し、方向を定めてグループに合流できています。今のところ。ブリーフィングをよく聞くのは大事ですね。
(東京都・男性)
○ビーチで透明度の悪い中、ハゼの撮影に夢中になっていて、ガイドやバディとはぐれてしまいました。「はぐれたら動かないように」と言われていたので、じっと待っていたら探してもらい会うことができました。周りを見ながら撮影しなければいけないと思いました。
(大阪府・男性)
傾向と対策
陸上ではブリーフィングをよく聞いて、水中でチラ見
離反の原因と予防策。
さらに、離反したことによる別のトラブルまで、すべて読者のヒヤリハット体験談に答えが書いてあったようです。
中でも離反防止の最も重要なポイントは、ブリーフィングにあります。
水中ではぐれる可能性は常にあります。被写体に集中しがちなフォト派ならなおさらです。
はぐれたときの手順を確認し合うことはダイバーの基本中の基本ですね。
残圧
エア、切れました……
○写真を撮るのに夢中になっていたら息苦しくなって、残圧計を見ると残圧が5でした。急いでインストラクターを探すが、インストラクターははるか向こうに……。20代なのに、海で死ぬんだと本気で思いました。初めて「エアがない」のハンドシグナルを使いました。今でもこうして海に潜れているので幸せです。
(東京都・男性)
○残圧が“0”に近かったが、安全停止をしていたらエアがSTOP!「来たなっ」と思い、ゆっくり水面に出てスノーケルをくわえた。誰にも気づかれなかった。
(新潟県・男性)
傾向と対策
節目節目で残圧チェック
基本的には、“こまめにチェック”するしか予防策はありません。
自分のエア消費量がわかっていれば、水深と時間から、残圧はだいたい予想できますが、撮影に集中し過ぎると、ふっとんでしまいがちです。
ですから、フォト派の場合は、撮影前にチラ、数カット撮ってチラ、撮影後にチラと、撮影動作の分だけ、残圧チェックをする癖をつけるしかないようです。
思いがけずヒヤッ!
○写真に熱中している間に、バディがエア切れ寸前というのがありました。自分のエアチェックはしていたんですが、ヒヤッとした瞬間でした。
(大阪府・男性)
○エア消費の早いお客さんを連れて、たっての希望でディープポイントへ。残圧がみる間に減っていき、もはやタイムアップ!と浮上。5mで安全停止して僕のオクトを彼に。と、ここまでは僕の計画通り。でも、待っている間に、僕の100はあったエアがみるみる0に! このときほど3分が長かったことはなかった。
(大阪府・男性)
○中圧ホースが裂けて、水深25mで残圧が20だった。
(埼玉県・男性)
○沖縄でまだ本数も少ないときですが、残圧10以下になったことがあります。もちろん、バディ潜水ですので、バディからエアをもらいながら浮上しました。50を切った時点でガイドには連絡したのですが、浮上の気配がなかったのは? バディのエアが少なかったら危なかったです。
(東京都・男性)
傾向と対策
最悪の事態を想定しておく
自分のエアは気をつけていればいいだけですが、バディのエアがなくなったり、器材トラブルによってエアが急激に減ることもあります。
排気によって呼吸の状況に注目したり、聞いたりして、少なくともバディの残圧には注目しておきましょう。
また、常に最悪の事態を想定しておくことは大事です。
エア切れの状態で一人で浮上する“緊急スイミングアセント”はぜひ理解しておきたいエマージェンシースキルです。
その他のヒヤリハット
ウッカリしてヒヤッ
○カメラをBCにつけていたと思い、手を離したらどんどん落ちていきました。後をついてきていたアシスタントの人が拾ってくれましたが、拾ってもらえなければどこまで沈んでいったかわかりません。
(三重県・女性)
○マンタを撮影していて、ついていったら一緒に急浮上!水深25mから一気に水深10mまで浮上してしまって、慌てたことがありました。気づいて良かった……。
(愛知県・男性)
自然のパワーにドキッ
○パラオの「ブルーコーナー」でエントリー直後に大激流!棚をスルーして今度はダウンカレント!気がつけば水深30m。みんなで円陣を組んで、必死のフィンキックで浮上。ダイブタイム17分の歴史に残る1本でした。
(三重県・男性)
酔っ払ってゾッ
○水深28mで、急に頭の中にもやが垂れ込め、カメラの操作が不能になった。次のダイビングのとき、水深30mにいたニシキフウライウオを見にいくことになったので、水深26mくらいから、それはもう恐る恐るゆっくり降下しましたとも。今後は何でもなく、あっさり正気でした。良かった~。
(長野県・男性)
振り向けば危険生物
○沖縄の海でダイビングをしたとき、写真を撮ることに集中してカメラをのぞいていたら、バディに急に腕をグッとつかまれました。指差す先を見ると、すぐ目の前にオニダルマオコゼ!動かなかったらよかったものの、かなりビックリでした。一緒にいた人たちはヒヤッ!としていたと思います。ファインダーの中に集中すると怖いですね。
(神奈川県・女性)
○撮影(マクロ)に熱中しているとき、ふと気配を感じて振り向くと、顔のすぐ横でミノカサゴが背ビレを向けて威嚇していました。
(大阪府・男性)
備えあれば憂いなし
○念願のヤシャハゼを初めて見て興奮しながら撮影……と思いきや、なんとカメラの電池切れ。以降、前日のフル充電、当日は予備バッテリーを持っていきます。
(静岡県・男性)
○カメラのアームに釣り糸が絡んでとれなくて慌てた。ナイフは持って入るもんだと思った。
(東京都・男性)
とどのつまり、ヒヤリハットのほとんどすべては撮影に没頭してしまうことが原因。
自己管理や周囲の環境への気配りなど、冷静な視点を持って撮影に臨む、あるいは、撮る際のルーティンを決めて守ることが大事なのでしょう。