決定版!バブルリングの作り方~3つのコツから応用編までを名人が伝授~
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初心者ダイバーのころ、ガイドがおもむろにレギュレーターを口からはずし、プップップッとエアを吐き出すと、水面にむかって太陽に煌めく美しいリングが次々と!
とても感動したのと同時に、「ガイドってすごい!」と思ったものです。
ダイバーなら一度はやってみたいバブルリングですが、簡単そうで意外と難しく、コツがいります。
これまでたくさんのガイドと潜ってきて、皆それぞれ技術の完成度はもちろん、方法論やコツまで違うのが興味深いのですが、今まで出会ったガイドの中で、間違いなくナンバー1だと思うのは、南紀シーマンズクラブの岩崎俊哉名人。(2016年には世界記録も達成しました!)
名人が自在に発するバブルリングは芸術の域。
名人が素晴らしいのは、技術はもちろん、コツや練習法を言語化して伝えられること。
ということで、バブルリングの達人にコツや練習法をお聞きしました。
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バブルリングを吹き出す時の3つのコツ
1.吹き出す「強さ」のコツ
息を吐き続けるのではなく、一瞬で、強く、出すのがコツ。
「少し離れたろうそくの火を、瞬時に吹き消す」ような強さ&イメージです(開閉は一回)。
2.吹き出す「方向」のコツ
“正確な”垂直方向に出すことが大事。
そのつもりでやっている人が多いのですが、仰向けになって水面を見上げる時、目線を基準にすると、意外と口の角度が垂直でない場合が多い。
ですので、“思った以上に反り返る”“のけ反るくらいの目線”の体勢から吹き出すのがコツ。
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アゴをあげて、水面に向かって口を垂直に向ける
3.吹き出す際の理想の「場所」選び
名人は、この場所選びが特に大事だと言っています。
理想の場所は「水が静止している場所」。
その場所を見極めるためには、浮遊物の観察が有効です。
自らが出している排気の泡ですら邪魔な動きを生みますので、水が静止している場所を見つけられるようになれば、泳ぎながらでもバブルリングが容易になります。
バブルリングのための理想的な口の形は…?
これまで、「唇から舌を出し、頬を膨らませたら、唇を引く」「唇を折りたたむ」などなど、いろいろなコツを聞いてきましたが、名人の場合は“普通の口の形”。
ただ、吹き出し方が重要で、これまでバブルリングを音にすると“ぷっ”とか“ぽっ”でしたが、名人がバブルリングを表現する活字で行きついた答えは……
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「遠くのロウソクを吹き消す強さで、ぷっふ(“ふ”は小文字)!」が名人の出した答えです。
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まずは体を固定しよう!
バブルリングの練習法
1.着底してヒザ立ち姿勢になる
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捕まるものがあれば岩などをつかんで、体勢が崩れないようにします。
2.呼吸を整えてセカンドステージをはずす
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あるいは、写真のように寝てしまうのもあり
のけ反るように体を倒して、正確な垂直方向を意識しながら、浮遊物を見て水の動きが静止、あるいはそれに近い状態になるタイミングを待つ。
注意!:外したセカンドステージは手放さずに、すぐにくわえられるように、必ず保持しておきましょう。
3.正しい吹き方で垂直方向に吹き出す
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あるいは、写真のように寝てしまうのもあり
バブルリング 応用編
リングの追いかけっこ
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先に出したリングを、後のリングが追い越して、くぐったと思ったら、今度は、先に出したリングが追いかけて……と、リングの追いかけっこができるとプロの域。
まずは基本的なバブルリングを出せることが前提で、先に出すバブルリングと後のバブルリングを発射する座標と軌道をそろえることがコツ。
その上で、後から出すバブルリングを強めに発射します。
後のバブルリングが追い越したらそのまま行ってしまいそうですが、先のバブルリングを引っ張り上げる力が働き、追いかけっこ、くぐり合いになるというわけです。
バブルリングのランデブー芸
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中層を浮きつつ自分が泳ぎながら、次々にバブルリングを発射する芸。
これができれば名人の域です。
何より、まずは、仰向けで中性浮力を取れることが前提で、この時も浮遊物が目安として役立ちます。
「流れがあるとできないのでは?」と思われるかもしれませんが、電車の中で煙草の煙を吐いてもそのまま上に行くように(!?)、浮遊物を目安に、自分自身を流れに同化させることができれば、自分の口の周りには水が静止した環境ができて、きれいなバブルリングを発射できるとのことです(打ちあがったバルリングは斜めに連なりますが)。
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たかがバブルリングと思うかもしれませんが、水の中でひとつのスキルを追求することから得られる発見や技はダイビングの幅を広げてくれるでしょう。
バブルリングが上手な人は、ほぼダイビングも上手ですしね。
また、写真や動画の被写体としても面白く、単純に人気者になれるのも嬉しいかも(笑)。
ただ、筆者も、息を吐き過ぎて水を飲みそうになったり、中層で浮かびながらやったら、知らずに水深を落として耳を傷めたりしたことがありますので、しつこいようですが、安全の確保を第一に、楽しんでくださいね。
(撮影:来住尚登)