ダンゴウオ、海の中で見続けたその生態

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ダンゴウオ(撮影:佐藤長明)

ダイバーならご存知の方も多いはずですが、ダンゴウオ科の魚達は腹びれが変形し吸盤状になっています。

これを使い、省エネ?生活を営んでいるのですが、吸盤が実際どのような形になっているのか、見た事のある方は少ないと思います。

ダンゴウオと吸盤(撮影:佐藤長明)

ダンゴウオを下から見た写真。吸盤が見える

何か別の生き物が寄生しているようにも見える吸盤。
実は吸盤のサイズには秘密があります。

オスとメスの吸盤のサイズが違うのです。

オスの方が大きい吸盤をもちます。
理由は繁殖にあり、オスは長い間、卵塊を守り続けなければいけません。
外敵やうねりが来てもガッチリくっ付き、守り通すために大きくなったと考えられています。

この日しか見た事がありませんがクロヘリアメフラシの殻に乗っている事も!

ダンゴウオ(撮影:佐藤長明)

さらに、メンコガニの甲羅に乗り捕食を繰り返している、なんて事も!

ダンゴウオ(撮影:佐藤長明)

昔、ダンゴウオが素手に乗った事がありますが、くっ付いた状態になると軽く皮膚をつかまれる感覚があります。
泳ぎだす一瞬前に解放されます。

面白い事に、その瞬間には必ず両目を揃えて泳ぎだす方向を確認するのです。

泳ぎだす時に関わらず、捕食しようとする時や繁殖期など、次のアクションを起こそうとする時に、生き物はしっかりその目標を両目でとらえているのですね。

そんな様子を感じ取れるようになるには、一種を長く観察し見慣れる事がポイントです。

目の前の小型甲殻類を捕食しようと狙いを定めているダンゴウオ。

ダンゴウオ(撮影:佐藤長明)

このような場合、普段左右別々に動いている目の焦点がバッチリあいます。

この写真は、ダンゴウオではなくその仲間のホテイウオygです。

ホテイウオの幼魚(撮影:佐藤長明)

次の瞬間には泳ぎ上がりカメラのポートに張り付きました。
こうした瞬間にダンゴウオ科の魅力的な表情を撮影出来るチャンスです。

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PROFILE
グラントスカルピン代表・水中写真家
佐藤 長明 (さとうながあき)

1969年、宮城県南三陸町(旧志津川町)生まれ。
1992年、23歳でスキューバダイビングと出会い翌年から水中写真を始める。
南三陸沿岸に生息する稀少種の発見をきっかけに生物層調査に取組む。
8年間の修業の後、2000年にダイビングサービスグラントスカルピンを設立。

現地型ダイビングサービスとして、それまでダイビングポイントとして無名だった宮城の海を国内に広く紹介。
2005年には志津川漁協、南三陸町(旧志津川町)と協力して新ダイビングスポットのオープンを実現。

東日本大震災により北海道函館市に拠点を移し、親潮繋がりの海で再度現地サービスを始める。
自ら撮影する写真により、生態観察と撮影の楽しさを広めている北の海の伝道師。

「海で生物たちは一年を通じ命の営みを繰り返している。ガイドとして心掛けることは季節を感じて海を読むこと。
生物同士の連鎖を知る事で海は何倍も楽しいものになるはずです。」

ショップ名にもなっているグラントスカルピンとは、クチバシカジカと言う和名を持つ小さな魚の英名です。
直訳すると「Grunt=小言を言う・文句を言う」「Sculpin=カジカ」で、世界でもほんの一部の水域でのみ観察されている稀少種。

この体長わずか7cmほどの小さな魚との出会いが人と出会いに繋がりサービスを始めるきっかけにもなりました。
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