ダンゴウオの繁殖活動と巣穴探し

ダンゴウオ(撮影:佐藤長明)

ダンゴウオのオスは繁殖期に入るとある変化が見られます。
それは背びれが王冠型に大きく伸長する事です。

また、吸盤は前回(ダンゴウオ、海の中で見続けたその生態)のお話で書いた通り、オスが大きくメスが小さい(この特徴は繁殖期前でも確認できます)。

写真で比較してみると一目瞭然です。

ダンゴウオ(撮影:佐藤長明) ダンゴウオ(撮影:佐藤長明)

それでは、なぜオスの背びれがこれほど大きくなるのでしょうか?

以前にダンゴウオ観察をしていると、繁殖場所を決めたオスの所にメスが近づいてきました。
すると、オスは巣穴から出て、メスに対してディスプレイをはじめたのです。

その様子は、自分の背びれを誇示するようにメスに対して体側を向けて背びれを目一杯広げるのです。
見ている限りでは、背びれの大きなオスほどよくもてるように見受けられます。

オスはこの時季になると、巣穴探しに奔走します。
繁殖場所となる空き家となったフジツボやカモメ貝などが開けた小さな岩穴を利用する事が知られています。
候補となる巣穴を見つけるとオスは自分の頭を突っ込み穴のサイズを確認します。

ダンゴウオ(撮影:佐藤長明)

気に入った穴を見つけると、すっぽり穴の中に入り込み何やらもぞもぞはじめます。
観察していると、次の瞬間には穴の中からオスが顔をのぞかせ煙とともに何かを吐き出す。

オスは穴の中に堆積した貝殻や砂利のようなものを自分の口をスコップ代わりに使いクリーニングするのです。
その様子は見ていて非常に楽しい!

余談ではありますが、巣穴探しはいつも順調にいくわけではありません。
時には先客がある場合も多くあります。

コケギンポやアキギンポ、スナエビが住処に使っている他、甲殻類が他者から身を守りながら脱皮する場所として利用されるなど小型の生き物達にとっては競争率の高い場所となっています。

ダンゴウオ(撮影:佐藤長明)

巣穴探し中、コケギンポに威嚇され驚いている様子

巣穴も決まり、いよいよ繁殖の準備が整いました!
それでもメスが来るまでは気が抜けません。

オスはフェロモンを利用しメスと出会うようです。
中にはもてオスとそうではない個体がいます。

自分の遺伝子を切らさぬ為には手段を選びません。
もてオスの巣穴の側に居を構えおこぼれを狙うパターンも多く見受けられます。

ダンゴウオの世界でもオスにとってはつらい事情があるようです……。

ダンゴウオ(撮影:佐藤長明)

穴から正面画顔のぞかせるのはまだ卵保護をはじめていない個体

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PROFILE
グラントスカルピン代表・水中写真家
佐藤 長明 (さとうながあき)

1969年、宮城県南三陸町(旧志津川町)生まれ。
1992年、23歳でスキューバダイビングと出会い翌年から水中写真を始める。
南三陸沿岸に生息する稀少種の発見をきっかけに生物層調査に取組む。
8年間の修業の後、2000年にダイビングサービスグラントスカルピンを設立。

現地型ダイビングサービスとして、それまでダイビングポイントとして無名だった宮城の海を国内に広く紹介。
2005年には志津川漁協、南三陸町(旧志津川町)と協力して新ダイビングスポットのオープンを実現。

東日本大震災により北海道函館市に拠点を移し、親潮繋がりの海で再度現地サービスを始める。
自ら撮影する写真により、生態観察と撮影の楽しさを広めている北の海の伝道師。

「海で生物たちは一年を通じ命の営みを繰り返している。ガイドとして心掛けることは季節を感じて海を読むこと。
生物同士の連鎖を知る事で海は何倍も楽しいものになるはずです。」

ショップ名にもなっているグラントスカルピンとは、クチバシカジカと言う和名を持つ小さな魚の英名です。
直訳すると「Grunt=小言を言う・文句を言う」「Sculpin=カジカ」で、世界でもほんの一部の水域でのみ観察されている稀少種。

この体長わずか7cmほどの小さな魚との出会いが人と出会いに繋がりサービスを始めるきっかけにもなりました。