イルカだけじゃない!御蔵島で始まるウミガメ調査

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御蔵島のイルカとカメ(提供:小木万布)

学生時代にお世話になった佐藤克文さんからメールをいただきました。

佐藤さんは、加速度や温度、湿度、光量などのデータを計測・記録するための小さな機械「データロガー」を様々な動物にとりつけて調べている、気鋭の研究者です。

『ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ(光文社新書)』など、かなり面白い一般向けの著書もだされています。

メールには、こう書かれていました。

「ご無沙汰しています。現在、岩手県三陸で、定置網に捕獲されるアオウミガメ亜成体に人工衛星対応型発信器を取り付けて調査しています。例年10頭以上捕れるアオウミガメが今年はなぜか少なく、5台購入した発信器がまだ3台余っている状況です。現在私の研究室のD1の学生がアオウミガメの生態をテーマに研究を進めており、これまで放流したアオウミガメが伊豆諸島周辺で越冬するといったパターンが次第に明らかになってきました。ただし、伊豆諸島で越冬した亜成体が北上するというパターンはこれまでまだ無いため、伊豆諸島でアオウミガメ亜成体に装着できればおもしろいのではないかと思い、連絡した次第です」

これはチャンス!!

御蔵島にいると、すごくたくさんのウミガメを見ます。
ある場所でエントリーしたとき、視界に6頭入ったこともあります。
桟橋周辺で釣りをしていて見ない日は無いくらい、本当に普通に見られる動物です。

昔、友人が「御蔵を泳いで一周する!」という計画を実行した際、ただ泳ぐだけではヒマなのでウミガメをカウントした結果、数十頭を超えたと言っていました。

御蔵島のイルカとカメ(提供:小木万布)

イルカとカメ:島周りにウミガメは沢山います。ウォッチング中イルカにばかり夢中だと見逃します

御蔵の周りで見られるウミガメは、ほとんどがアオウミガメですが、小笠原で見たものと較べると体サイズが小さい個体が多いのも印象に残っています。

どこかの砂浜で産まれたカメが伊豆諸島周辺で青年期を過ごして、成長してどこかに……?

ウミガメは一般的にかなりの長距離を回遊することもあって、回遊ルートは不明な点が多いようです。

「きっと御蔵島はイルカだけでなくカメ研究のメッカにもなれるなぁ、、、」と常々思っていました。

あとは、カメが捕まえられるかどうか?です。
島のおじさん数名に聞くと「寝ているカメならば素手でも捕まえられる」とのこと。

御蔵島のイルカとカメ(提供:小木万布)

後ろから:やや上方後ろからそっと近付くと気づかれにくいです

それは、やってみたい!

早速、「昔よく捕まえた」というおじさんの協力のもとイルカガイド数名で予備調査に行ってみました。
前日の急な呼びかけにも関わらず、4名の協力者が名乗りを上げてくれました。

ガイドT君の話によると、東側の海で良くウミガメを見るということです。

しかし、東の海はパチャパチャしていましたので、仕方なく西へ。
島の南側から西側にかけて、皆で泳いでカメを探します。
探すこと1時間くらい、ついにT君が一頭を捕まえることに成功しました。

ただし今回は、予備調査なのでここまで!
つかまえられることが分かれば、すぐに逃がします。

純然と調査目的での捕獲ですが、「あおうみがめ」の捕獲は漁業調整法で禁止されており、然るべき申請を出してからでなければ認められないからです。

現在、東京都の水産係に連絡を取って、諸処の手続きを行っているところです。

衛星発信器は3台あるそうなので、3頭捕獲しなければなりません。
御蔵の海は、冬に近づくにつれてどんどん悪くなってくるので、時間との勝負!です。

無事、許可がおりれば、冬の海の凪ぎを見てトライしたいと思っています。

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PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..
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