春夏秋冬の天気と海 ~春濁りの原因は?冬に透明度がよい理由は?~

セブ島の台風ハイエン直後の様子

みなさん、明けましておめでとうございます。

みなさんはこの年末年始でどこかにいらっしゃいましたか?

私は、串本や白浜、熊野といった南紀の海や伊豆の海を見てきました。
南紀は、やはり真っ青な海でしたし、伊豆はちょっと緑がかった海の色をしていて、とってもきれいでした。

この季節、太平洋側は天気が良くて海中にもよく光が届くのですが、海がきれいな理由はそれだけではありません。

季節風にも大きく関係があるのです。

そこで、今日は典型的な季節の天気と海について、日本の季節の暦である「二十四節季(にじゅうしせっき)」にも照らしつつ、見ていきましょう。

冬 太平洋の海がきれいで、日本海が荒れる理由

天気図(提供:大間哲)

図1.冬型の天気図(2013年12月28日)(気象庁|日々の天気図より)

一年の初めというと、何を思われますか?

天文学的にも気象学的にもさして意味のない1月1日(注1)ですけれども、年が改まるとすぐに「小寒」、つまり「寒の入り」となり、寒さが厳しくなる季節になります。

※注1:実は今の暦の原型であるユリウス暦を始めたカエサルが、最初の年である紀元前45年の1月1日を新月に合わせたためと言われている。

このころは、いわゆる西高東低の気圧配置、北西の季節風が吹きます。
この季節風のおかげで、太平洋側では晴れが続くと同時に、表層のにごりの多い水が沖に流され、深層の澄んだ水が岸近くまで上がってきます。
これが冬の太平洋側の水がきれいな理由です。

一方、日本海側では、暖流の対馬海流が流れていて、高い海水温の上をシベリアからの冷たい風が吹き過ぎます。

その温度差は、海水温が20℃近くに対して、上空は-50℃近くと、60~70度にも至ります。

これは、夏の太平洋側の地面が50℃になっても上空が20℃近くあれば、30度しか差がないことを考えるとはるかに大きいわけで、日本海側の天気が荒れて、海も荒海になることがよくわかります。

春 “春濁り”の原因は黄砂!?

天気図(提供:大間哲)

図2.春の天気図(気象庁|日々の天気図より)

春になると、天気図もがらっと様相が変わってきます。

日本付近を覆う高気圧の中心が徐々に南になり、太平洋を中心としたものが優勢になります。

また、低気圧も高気圧も冬や夏のものほど強くなく、軽いものが次々と日本付近を交互に通り過ぎます。

「穀雨」のころ。
田畑の準備も整い、春の雨が降るころです。

ただ、気温の上下が激しく、この図の2日前に、北海道では、朝が氷点下で日中には25℃を超えるという、同一日で冬日と夏日を記録しました。

このころ、海の中では「春にごり」になります。

よく、「海が暖かくなってくるから、プランクトンが増える」という説明がなされますが、本当はそれだけではないのです。

むしろ、春は海水温が最も低い季節です。でも、そのころ空気中は春霞。
別の言葉で言うなら黄砂の到来です。

その黄砂は、実は沙漠の豊かなミネラルを運んできているのです。
これが海に落ちることで、海の栄養分が増え、プランクトンが増加して春にごりになるのです。

黄砂は、時には、太平洋を越えることもあり(図3)、太平洋全体を豊かにすることに貢献しています。

天気図(提供:大間哲)

図3.太平洋を越える黄砂(University Corporation for Atmospheric Research@UCARより)

梅雨 大雨になりやすい季節

天気図(提供:大間哲)

図4.梅雨の天気図(2014年6月27日)(気象庁|日々の天気図より)

さて、6月に入ると梅雨になります。

梅雨時は、ようやく海水温が少しずつ上がり始めますね。
しかし、一方で天気が良くないことが多く、日差しが少なくて、ダイビングはなんだか寒い印象があります。

暦では芒種、すなわち種を巻くころ。
そして夏至。
晴れてさえいれば、もっとも太陽高度が高く、水中も美しく見えるはずです。

梅雨も、走りと末期では少し様相が異なります。

天気図(提供:大間哲)

図5.梅雨の走りの天気図(2014年6月8日)(気象庁|日々の天気図より)

まだ、前線が日本の南岸全体には伸びてきていません。
しかし、温帯低気圧が次々と日本を通り過ぎるようになり、雨がちの天気になってきています。
この日は低気圧の影響で東日本と長野で大雨になりました。

天気図(提供:大間哲)

図6.梅雨末期の天気図(2014年7月24日)(気象庁|日々の天気図より)

こちらは、図5と比べると、梅雨前線の位置がだいぶ北上していて、太平洋高気圧が優勢になってきていることがわかります。

同時に、太平洋高気圧の西の縁が北に盛り上がっていて、まるで鯨の尾のように見えることから、「鯨の尾型」とも呼ばれる気圧配置です。

この尾の先ところには、高気圧の縁を回って入る暖かく湿った空気があるために、その先の梅雨前線とぶつかる場所は、大雨になりやすいものです。
梅雨末期で西日本や九州が大雨になるのは、この形のことが多いです。

夏 梅雨前線が消え、大暑の季節

天気図(提供:大間哲)

図7.夏の天気図(2014年8月3日)(気象庁|日々の天気図より)

夏になると、基本的に梅雨前線は消え、太平洋高気圧に覆われます。
いわゆる大暑のころです。
去年の7月末は本当に猛暑になりました。

しかし、8月に入るとすぐに、立秋となります。
不思議なもので、立秋になるとすぐに関東では朝晩にまずツクツクボウシが鳴き始めます。

秋といっても残暑の季節、海の暖かさはこれからです。
秋は台風の季節です(この天気図にも台風があります)から、うねりや土用波にも気をつけつつ、海を楽しみたいものです。

秋 水温が高くダイビングに最適

天気図(提供:大間哲)

図8.秋の天気図(2014年9月14日)(気象庁|日々の天気図より)

秋です。
白露のころ、大気が冷えてきて露を結ぶになる時期です。

が、海は水温も最高に上がり、秋晴れの日にはダイビングに最適です。
この天気図の日も、全国的に秋晴れになりました。

ただ、一方でこの天気図にもあるように秋雨前線や、次々と通り過ぎる温帯低気圧があります。
また、この図の左下には台風も解析されていて、土用波にも注意が必要です。

初冬 陸は寒くても海は最高!?

天気図(提供:大間哲)

図9.初冬の天気図(2013年12月14日)(気象庁|日々の天気図より)

秋には移動性高気圧と低気圧が交互に通り過ぎますが、晩秋になると段々と低気圧が日本から東の海上で発達するようになってきます。

また、高気圧の中心も徐々にシベリア方面に移動し、結果として、西高東低の形が見えるようになってきます。

小雪・大雪とも言われ、陸上では雪もちらつきはじめます。
特に、最初は東・北日本に等圧線が縦に並ぶ状況が現れます。

ただ、このころはまだ、海水温が下がりきらないので、太平洋側は、厳寒期のダイビングにはなりませんから、陸上の防寒さえしっかりすれば、結構透明度の良い海を楽しめますね。

この天気図の日も、弱い冬型になり、日本海には筋状の雲が広がり、東・北日本の日本海側は雪になりました。

この後、高気圧が東進して冬型は緩んだのですが、また、次の低気圧が通り過ぎて冬型となり、それを繰り返すうちに、本格的な冬を迎えます。

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PROFILE
日本気象予報士会会員。
国際基督教大学(ICU) 理学科物理卒。
1995 年 よりダイビングを始める。
外見が「熊」なダイバーなので、魚の名前に因んで「くま呑み」を名乗る。

中学の理科の授業で、先生が教卓で雲を作る実験をしてくれたのを見て以来、気象学、天文学、地学に興味を持つ。
ダイビングを始めてからも海と空を眺めるのが好きで、2002年、気象予報士を取得。

ダイビングのスタイルは、「地形派」。
ドロップオフやカバーン、アーチや地層の割れ目などを眺めるのが好き。
特に、頭上のアーチなどをくぐった先で、水面からの光が見える瞬間に萌えてしまう。

ダイビング以外の趣味は、オーガナイズド(組織)・キャンプ、合唱、キャリア
・カウンセリング。
現在は、国際基督教大学にて学生や子ども向けの組織キャンプのディレクターも
努める。
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