魚を研究すると戦争が無くなる!?
一時世間を騒がせ、一躍有名になった理化学研究所、通称“理研”。
いろいろなことはありましたが、今でも日本を代表する研究機関であることは間違いありません。
そんな理研から、魚に関する面白い研究が発表されました。
動物の争いでいつ降参するかを決める神経回路(理化学研究所)
多くの動物が餌やパートナーを求めて同種同士で争う際、どちらかが死ぬまで戦うのではなく、どちらかが降参して争いを終了させることで、種の存続を保持しています。
この行動に、何かしらの脳内メカニズムが関与していると考え、そのメカニズムを解明したというのです。
研究に使用されたのはインド原産のコイ仲間、ゼブラフィッシュです。
この魚には一対のとある神経回路があります。
その神経回路の一方を抑制すると魚は喧嘩に負けにくくなり、もう一方を抑制すると負けやすくなるのだそうです。
これは、一方の神経回路は闘争を持続させる様に働き、もう一方の神経回路は闘争を終了させる様に働いていることを意味します。
やるか、逃げるか、ということですね。
■典型的なオスのゼブラフィッシュによる闘い
戦争の無い世界へ!?
争いの結果は、受けたダメージなどで決まっていきそうなものですが、今回の研究によって神経回路が判断に大きく関わっていることがわかってきました。
便宜的に争いを持続させようとする回路を戦闘回路、争いを終わらせようとする回路を終戦回路と呼ぶとすれば、脳内で様々な情報が戦闘回路と終戦回路を刺激し、この2つの回路が競合した結果で判断されている可能性があるということです。
今後は脳のどの領域で、どの様な時にそれぞれの回路に情報が伝達され闘争が終わっていくのか、という研究が進むことが期待されています。
そして、今回発見された争いに関するメカニズム、これを司る神経回路は魚からヒトまで共通のものだそうです。
つまり、人間社会で様々な優劣が決定される場面にもこの神経回路が関与している可能性があります。
ということは、この研究が進むことで、戦争の無い世界も…いつかは訪れるのかもしれませんね!
(文/細谷拓)