レジャーダイビング・サイドマウントは、リスクへの対応なしにビジネスを優先したコースでしかない
前回、日本のレクリエーショナル・サイドマウントダイビングの矛盾についてご指摘しましたが、もうひとつ、絶対に無視できない非常に重要なポイントがあります。
■前回
オーシャンでのレクリエーショナル・サイドマウントダイビングが、ケイブダイビングをベースとしたサイドマウントの想定外のダイビングである以上、オーシャンダイビングならではサイドマウントのデメリットやリスクへの対応は、それをオーシャンで使わせようとする側が新たに構築しなければならないはず、という部分です。
以前の原稿と重複しますが、例えば、ケイブダイビングではまずあり得ない、水面での長時間待機や漂流、荒れた海況でのENやEX、あるいは陸や船からある程度距離の離れたエリアでのダイバーレスキューといった要素への対応は、現状、十分に考えられているでしょうか?
一例として、水面でのサイドマウントのパニックダイバーを考えてみてください。
タンクが体の両脇にぶら下がっている状態は、パニックダイバー自体の水面での安定の確保や、サポートに対しての障害にしかなりません。
したがって、素早くダイバーとタンクを切り離す必要があり、その手順やそのための事前の器材の構成などに関するガイドラインがレクリエーショナル・サイドマウントのカリキュラムには必須のはずです。
同様に、水面でのパニックダイバーや意識不明ダイバーの浮力確保を考えた時、下半身側の浮力確保を重視したサイドマウントBCは、安易に浮力を加えると、浮き上がるのは腰部、頭側はむしろ沈んで、水中に没する可能性を秘めています。
したがって、こうした場合の注意ポイント、サイドマントダイバーへの浮力確保のガイドラインなどは、バックマウントのシングルタンクを使う一般的なレクリエーショナルダイビング用のそれとは同じではないはずです。
同じ対応を行えば、状況を悪化させる可能性さえ考えられます。
レクリエーショナル・サイドマウントをコースとして構築した指導団体は、当然、こうした部分も熟知しているべきですし、であれば、当然そうした状況への対応もカリキュラムに盛り込んであるはずです。
しかし、実際はどうですか?
「サイドマウント導入ありき」への危惧
前回の文節を引用します。
レクリエーショナル・サイドマウントというダイビングスタイルは、ベースになっているケイブでのサイドマウントダイビングを熟知した上で、オーシャンのレクリエーショナルダイビングに使える部分、メリットとして生かせる部分、そのままでは使えない部分、リスクとなる部分、付加的な要素が必要となる部分等を詳細に検討し、必要な修正や必要となる新規の内容を盛り込むことで、初めて新しいダイビングスタイルとしての提案が可能になる、と考えるのがまともな考え方であるはずです。
現状のレクリエーショナル・サイドダイビングのカリキュラムはまともな考え方がベースとなっているでしょか?
サイドマウントの特殊性を考えれば、一般のシングルタンクでレスキューダイバートレーニングを終了しているダイバーであっても、同等の活動をサイドマウントで可能とするためには、別途の再トレーニングが必要。
特にサイドマウントの講習やサイドマウントダイバーを引率するリーダーシップは、緊急時も一般装備と同じレベルでサイドマウントダイバーのケアができなければなりませんから、一般装備との対応の違いや実践的な対応の把握は、マストのはずです。
海況の悪い時のEN・EXに対する対策、水面での長期待機や漂流に対する対策も同様。
シングルタンクの一般的な装備とは異なる手順、スキルが必要となる可能性があるすべての状況とその対応に関しては、サイドマウント装備のダイバーのための、知識やスキル、アイディアや器材が新たに必要になるはずです。
それらを用意しないままにレクリエーショナル・サイドマウントというジャンルのダイビングを商品化することは、まともな教育機関ではあり得ないことだと私は考えます。
そうした諸々を考えた上で、今のレクリエーショナル・サイドマウントというコースを見てみると、それはビジネスを優先したコースでしかないように僕には思えてしまいます。
見方によっては、業界がビジネスのためにレジャーダイビングのリスクマネージメントの有形無実化に励んでいるとも思えてしまうのですが、さて、みなさんはどう感じているのでしょう?
いずれにしろ、サイドマウントに対する十分な理解なしに、レクリエーショナル・サイドマウントが秘めたリスクへの対応もなしに、サイドマウントを安易に勧めているように思えてしまう指導団体やショップ、インストラクターに対して、それを応援する事は私には不可能です。
応援すること=悪の手先になる、という気すらしてしまいます。
そんなこんなが、私に対する非難GoGoに対する私の答えです。
それが私の脳みその容量不足による愚かな誤解であるなら、ぜひともバカにも理解できる筋の通った説明でそれを解いていただきたいと、わたくし、切に思います。
オーシャンのレクリエーショナル・ダイビングでサイドマウントを使う、使わせる、ということは、ある部分では、ケイブでサイドマウントを使うより、考えるべき部分、トレーニングするべき部分の要素がより多く、ある状況下においては難易度も高いダイビングとなる可能性があります。
サイドマウントの経験とオーシャンダイビングの経験が共に豊富で、クレーバーなダイバーは、その事に気づいているはずです。
結果、そうしたダイバーは、オーシャンにおけるレクリエーショナルダイビングでサイドマウントを安易に使ったり、勧めたりすることはしなでしょう。
次回へ続く
レクリエーショナル・サイドマウントの正体(連載トップページへ)
- 日本のレクリエーショナル・サイドマウントダイビングは矛盾の上に成り立っている
- レジャーダイビング・サイドマウントは、リスクへの対応なしにビジネスを優先したコースでしかない
- サイドマウント天国のガイドは語る「オーシャンのレジャーダイビングではサイドマウントは使いません」