沼口麻子(シャークジャーナリスト)×増子均(サムイダイビングサービス)のサメ対談 ジンベエザメの謎に迫る!(第1回)

2017年、なぜこんなに出没しているの? タイでジンベエザメが大当たりしている謎

この記事は約5分で読めます。

サメ対談 増子さん 沼口さん

向かって左が増子均さん、右が沼口麻子さん

先日、今年に入ってタイでジンベエザメが大爆発しているという記事をお届けしました。

情報を提供していただいたのは、タイのタオ島・サムイ島を潜っている、サムイダイビングサービスの増子均さんでした。
お話をお聞きしたのは3月末でしたが、その後も高い頻度で出ているそう。

今回、シャークジャーナリストの沼口麻子さんもお招きし、なぜこんなに出ているのか、その他疑問や気になっていることについてじっくりお話ししてただきました。
こちらを数回に分けてお届けしていきます。

■対談ゲスト/増子均さん(サムイダイビングサービス)、沼口麻子さん(シャークジャーナリスト)
■聞き手/寺山英樹(オーシャナ編集長)
■構成・写真/菊地聡美(オーシャナ編集部)

2017年はジンベエザメが大当たり!
どれくらい出ているの?

ーー

例年よりも出ているとのことですが、どれくらいの頻度で確認できているんですか?

増子

今年入って少ししてから情報を全部集めてるんですが、3〜4月は波があるけどだいたい2、3日に1回くらい。
4/21から5/22までは1日だけ情報がなくて分からないですが、毎日出てますね。
6月は10日に一回ぐらいの出現率だったのですが、6月末からはまた平均2日に1回ぐらいの割合です。
7月〜8月も少し減ったものの、平年以上は見れてますね。

タオ島ジンベイ 増子さん

撮影:増子さん

ーー

5月は毎日!? それはすごい。
同じポイントに出るんですか?

増子

基本的に、居ついているポイントが3ヶ所があって、でもそれ以外に出ることもあります。
それぞれのポイントで同時に出ることもありますし、1ヶ所に2、3個体出ることも。
個体数が多いですね。

沼口

毎年数匹見れるんですか?

増子

通年は1匹ですね。

ーー

それが今年は同じポイントで明らかに増えてるんですよね。
全部で何個体いるか、なんとなくわかりますか?

増子

はっきりした数は分からないですが、例えば「セーロック」に行ったときは2個体いて、片方は尾びれにロープが付いてました。
その数日後に行った時には、間違いなくその2個体とは別の2個体がいたんです。
また「セーロック」に3個体いるときに、「サウスウェスト」に2個体いる日もありました。
数が増えれば当たる確率も高くなるので、目撃情報が非常に多いですね。

サメ対談 増子さん 沼口さん

ーー

どちらの海でも見れるんですか?
アンダマン海のほうでも、タイ湾(タイランド湾)のほうでも?

アンダマン海とタイ湾の位置関係はこちら

アンダマン海とタイ湾の位置関係はこちら

増子

どちらも見れますよ。

ーー

今年大当たりしているのは?

増子

タイ湾のほうですね。
ここ2〜3年はあんまり出が良くなかったんです。
むしろシミランのほうが2、3シーズンずっと出てて。

シミランの位置はここ

シミランの位置はここ

増子

1クルーズいくと結構当たるっていう状態だったんですよね。
だからタイ湾のほうは来なくなっちゃったのかなっていう感じだったんですけど……。

なんで今年はこんなに多いの?
理由を探ってみた

ーー

増子さんはタイで潜られて何年ですか?

増子

22年です。

ーー

22年見たなかで、今年はだいぶ多いわけですよね?

増子

だいぶというかダントツ。
過去にないくらいですね。

寺山

なんでだと思いますか?

増子

なんでだか分かったら毎年やりたいですね(笑)
気象としては、今年の1月にタイの南部で大雨が降ってサムイのほうも洪水になりました。
1月には雨季は明けてるのでズレてはいるんですけど、洪水は雨季ではよくあることなんです。
3月ぐらいからは乾季で安定した時期になって、本来は雨が降らないんですよ。
それなのに4月上旬とかにまとまった雨が降ったりして、異常気象ではあります。

沼口

洪水により、川から栄養が流れてきてるっていう可能性は?

増子

可能性はありますね。
ただ普段から浮遊物は多く、潮によって増えたり、減って抜けたりします。
洪水によって増えたとか、目で見て実感するほどの違いはないです。
微妙に味が違うとかもあるんですかね?

ーー

好みはあるんですか?

沼口

どうなんですかね……。
普段よりも栄養価が高い可能性はありますね。
エサのあるところには匂いなどで回遊してきてるはずなので、何かしら感じているのかも。
年間で水温の変化はどのくらいあるんですか?

サメ対談 増子さん 沼口さん

増子

さほど大きくは変わらないです。
低い時期で26〜27℃で、高くて31℃。
高い時期は本当に短期間で、29〜30℃くらいが普通です。

沼口

日本みたいに水温の温度変化の差が大きいわけではないんですね。
適水温があるとするなら、ある程度の期間は居ついてもいいような気がしますけどね。

増子

年間を通して雨季は潜らないので分からないですが、普通の年でも時々出ていなくなって、また出てっていう出方をします。
ずっとではないが、通年いつでも出てる。
年間通してのコンディションという条件で見るといつもとあまり変わらないです。

ーー

一般的に言うと好む場所というのはエサの影響が大きいと思いますが、水温などの条件みたいなものはあるんですか?

沼口

比較的、暖かいところで観察されることが多いです。
日本近海にくるのも、水温26〜27℃ぐらいの夏場が多いようです。
でもコンディションが他の年とあまり変わらないとなると、栄養豊富なエサとなるプランクトンがより集まっていることが原因のひとつかもしれないですね。

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PROFILE
1989年生まれ。
専門学校を卒業後、歯科衛生士として歯科医院に務める。
多忙な日々を送る中で、ハマったダイビングとカメラと旅行。
オーシャナとの出会いで一念発起し、歯科医院を辞めカメラマンを目指すために東京から伊豆へ移住。
昼はダイビングサービスを手伝い、夜はアルバイトをしながら1年間で450本潜っていたが、耳の問題でドクターストップがかかり東京に戻ることに。
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