沼口麻子(シャークジャーナリスト)×増子均(サムイダイビングサービス)のサメ対談 ジンベエザメの謎に迫る!(第3回)

妊娠する数は300以上! ジンベエザメがどこで生まれているのか考えてみた

タオ島ジンベイ 増子さん

撮影:増子さん

前回の記事では、ジンベエザメは水深1000mまで泳いでいるということが分かりました。
エサのためなのか、はたまた違う理由があるのでしょうか?

ーー

水深1000mにまで潜るとのことですが、エサとなるオキアミなどは基本的に上にいますよね。
口開けて泳いでれば勝手に入るから常に動いてれば食べられる気もしますけどね。

沼口

ジンベエザメに関してはそうですね。
ただ、彼らのエサとなるプランクトン(オキアミだけでなく)がいる場所があるのかもしれないですが、よく分かりません。
あと実は、子どもがどこで生まれているのか、まだ誰も見たことがないため分かっていないんです。
私はそれが関係しているのかなと思うのですが……。

ーー

どういう場所で産卵、繁殖してるかというのは誰も分かってないんですか?

沼口

そうなんです。
ただ、最近フィリピンあたりで、小さいジンベエザメを撮影してる映像がたまにSNSで流れてきます。
それが海で泳いでいたものなのか、もしくは親のお腹を裂いた時に出てきた赤ちゃんなのかは定かではないんですが……。
でもどちらにせよ、こんな小さい個体は珍しいし、1m前後の個体は日本だと絶対に見られない。
日本もやっぱり定置網に入るのは3mぐらいですから、それより小さいのはなかなかレアだと思います。

サメ対談 増子さん 沼口さん

まだまだ謎に包まれている
ジンベエザメの出産

ーー

ジンベエザメって研究してる人がいそうですが、あまりいないんですか?

沼口

自然界ではサンプリングが難しいというか、多様な成長サイズのサメに確実に出会うことも難しいので、まだまだ分からないことだらけ。
ただ、大型のサメのなかでは唯一飼育できる個体なんです。
ホホジロザメやウバザメなど大型のサメの長期飼育例はほとんどありません。
日本だと沖縄の美ら海水族館や、沖縄美ら海財団がジンベエザメの飼育や繁殖に関する研究に力を入れています。
最近、飼育しているメスの個体が8mを超えたらしいんです。
今は交尾する環境を整えるために、大水槽の中にメスとオスを1匹ずつにしているのだとか。
水槽の中で繁殖が成功すればそれこそ世界初なので、目が離せません。

ーー

なるほど。
沼口さん的には、どういうところで生まれてるんだろうなとかはありますか?

沼口

過去に台湾で妊娠してる1個体が見つかってますが、307匹妊娠してたんですよ。
サメって例えばシロワニだったら、1回に2匹しか生まないし、ホホジロザメにしても多くて10匹前後。
だから300匹って、サメの中ですごく数が多いんです。
それだけ産んでたら世界中の海がジンベエの赤ちゃんだらけになる気がしますよね。
にも関わらずほぼ見たことないってことは、もしかして出産は水深1000mとかで行われているのかなって、勝手に想像しています。
例えば砂地などにいて、トラフザメみたいにバフバフして摂餌している時期があるのかもしれない。

ーー

じゃあそういう意味でも、ガイドさんのこういった情報は結構貴重なんですね。

タオ島ジンベイ 増子さん

撮影:増子さん

沼口

そうですね。
こういった意味でも、タイで1mの個体を見たというのは(こちらの記事より)とても貴重な情報だと思います。

過去の話ですが、大分の水族館でジンベエザメの興味深い飼育例があるんですよ。
あくまで水族館のデータなので自然界は違うかもしれないですが、70cmの子どもを飼育して、3年後に3.7mになりました。
単純計算でも1年で約1m成長していることになります。
だからタイで目撃された1mの個体だったら生まれて3〜4ヶ月くらいか、あるいは初期成長率が大きいとするとそれ未満かもしれない。
タイの近くで生まれてるのかもしれないので、また見られる可能性はあるかもしれないですね!

増子

そうですね。
しかしながら、これだけダイバーがいる中で赤ちゃんが見れないっていうのは、やっぱり生息水深が深いんでしょうか。

沼口

深いところ……私たちが知らない未知の世界といえば、もうそこしかないんじゃないかなと思うんですよね。

何に使っている?
約3000本もの歯が生えている理由

沼口

もう1つ、不思議に思っていることがあって。
ジンベエザメってプランクトン食べますよね。
エラにフィルターのようなものがついて濾しとって食べるんですけど、歯もしっかりとあるんです。
約3000本ぐらい。
その歯も何に使っているか、まだ分かっていません。
もしかしたら、小さい時はエサの種類が違っていて、歯を使って食べているのかなと。

ーー

大人になったら使ってないんですか?

沼口

使ってないですね。
使うとしたら、交尾の時にオスがメスに噛みつく時くらいですかね。
でもそうするとメスはいらなくない? という話になって……。
でもメスもオスも、米粒ぐらいの歯がそれだけびっしりと生えています。
ウバザメもメガマウスも一緒なんですけど、まだ謎なんです。

サメ対談 増子さん 沼口さん

増子

確かに、1年に1mほど大きくなるみたいですが、あれだけの大きさになるのにプランクトンだけ食べててそこまで成長するのかな? という疑問があります。
今の話を聞いてると、小さい時には雑食じゃないけど、やはりいろんなものを食べてるんですかね。

沼口

もしかしたら深海でカニとか食べてるんじゃないかと、勝手に想像してます。
あ、これは勝手なわたしの妄想なのであしからず。

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PROFILE
1989年生まれ。
専門学校を卒業後、歯科衛生士として歯科医院に務める。
多忙な日々を送る中で、ハマったダイビングとカメラと旅行。
オーシャナとの出会いで一念発起し、歯科医院を辞めカメラマンを目指すために東京から伊豆へ移住。
昼はダイビングサービスを手伝い、夜はアルバイトをしながら1年間で450本潜っていたが、耳の問題でドクターストップがかかり東京に戻ることに。
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