沼口麻子(シャークジャーナリスト)×増子均(サムイダイビングサービス)のサメ対談 ジンベエザメの謎に迫る!(第2回)

水深1000mまで行くことも!? エサを求めるジンベエザメの行動範囲

この記事は約4分で読めます。

タオ島ジンベイ 増子さん
ジンベエザメが大当たりだというタイのタオ島。

前回の記事ではジンベエザメは数匹いて、主に3カ所くらいのポイントを行ったり来たりしているということをお聞きしました。
そもそも同じ場所に居つくものなのでしょうか?

ーー

ジンベエザメは回遊しているのではなく、特定の場所に居つくものなんですか?

沼口

回遊していると思います。
過去、7月ぐらいに千葉県で定置網に入った個体を追跡した研究によれば、確か9月ぐらいから南下してグアムあたりに行きました。
おそらく水温変化の影響もあると思いますが、エサを目的として回遊してるのかもしれません。

ーー

行動範囲という意味だと、限定地域を回遊しているのか、それともわりと広範囲なのか。
データはあるんですか?

沼口

ずっとは追跡しているわけではないですが、おそらく広範囲を回遊していると思います。
特にガラパゴス諸島周辺海域で大型の個体が見られていて、各国のサメの研究者からも注目されています。

子どもが多い
タイのジンベエザメ

ーー

ちなみに増子さんがよく見るサイズはどれくらいですか?

増子

だいたい見られるのは小さいと3mくらい。
過去には1mぐらいのとてもレアな個体もいましたが。

沼口

1mは非常に珍しい! かなりレアですね。

増子

そうですよね。
生まれたときは50cmくらいですが、なかなかそのサイズは見れないですね。
基本的に見れるのはだいたい3m、大きくても5mくらい。

沼口

じゃあまだ子どもですね。

ーー

ジンベエザメの種類はいくつかあるんですか?

沼口

1種類のみですね。

ーー

じゃあやはり子どもなんですね。

DSC_6121

沼口

そうですね。
メスだと成熟サイズが8mなので、それより小さいのは未成熟個体なんですね。
8mを超えると、妊娠するようになるので。

ーー

成熟したものはタイではあまり見ないですか?

増子

見たことないですね。
過去にいた中で一番大きいものでも7mくらいだったと思います。

沼口

ということは、大きく成熟したらタイ周辺海域にはいなくなるのですね。

増子

なので勝手な考えですが、エサが豊富なタイの海で成長するのに必要な量のエサを確保して、ある程度成長したらまたどこかに行くとか……。
だから小さめのサイズしかいないのかなと想像しています。

沼口

なるほど、興味深いですね。

エサを求めて
水深1000mまで泳いでいる!?

沼口

エサを非常にたくさん食べるジンベエザメ。
エサを求めて世界中を回遊しながら摂餌し、魚類最大の巨体を手に入れたものの、結果的にその体を維持するために食べ続けないと生きていけないというような運命になったサメでしょう。

増子

いいのか悪いのか分からないですね(笑)

沼口

水族館でもエサはオキアミなどを与えていますが、確か1匹につき1日何十kgですからね。
回遊範囲が水族館の水槽よりも広い自然界では、おそらくそれ以上に食べないといけないから。
プランクトンを求めてアグレッシブに世界中を泳いでるんでしょうね。

サメ対談 増子さん 沼口さん

沼口

広範囲を泳ぎ回っているのとは別に、表層だけでなく水深1000mぐらいまで泳いでいるのがデータロギングの結果から分かってます。
エサなのか繁殖目的なのかは分かっていませんが、何かしらあるんでしょうね。

他のサメ、例えばホホジロザメやイタチザメなども、だいたい水深1000mくらいまでは回遊しているんです。
ホホジロザメなどの大型のサメみると、空胃(くうい)が多いんですよね。
1ヶ月に1回食べれればいい方という研究者も多い。
エサが目的なことが多いのかもしれません。
自然界でエサを見つけるのは結構大変なようで、常にいろんな水深、いろんな場所に行って探してるのでしょう……。

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

writer
PROFILE
1989年生まれ。
専門学校を卒業後、歯科衛生士として歯科医院に務める。
多忙な日々を送る中で、ハマったダイビングとカメラと旅行。
オーシャナとの出会いで一念発起し、歯科医院を辞めカメラマンを目指すために東京から伊豆へ移住。
昼はダイビングサービスを手伝い、夜はアルバイトをしながら1年間で450本潜っていたが、耳の問題でドクターストップがかかり東京に戻ることに。
  • facebook
FOLLOW