真夏の怪談バトン テラ編
本当にあった恐怖体験談。
紀伊半島のとある海に取材に行った時のこと。
コテージタイプのログハウスに小川カメラマンと僕の2人で泊まることとなり、
1階の寝室にカメラマン、ハシゴを上った屋根裏風の2階に僕が寝ることに。
真夜中。
一度は眠りに落ちたはずが、寝苦しさから急に目が覚める。
すると、遠くから何だか不快な視線を感じる。
もちろん、誰もいるはずはないのだが、
明らかに部屋の隅から気配を感じるのだ。
誰かに見られている……。
時間と脂汗がダラダラと流れていく。
心の中で「消えろ、消えろ」と祈ってはみたものの、
その気配がなくなる様子はない。
それどころか、あろうことか、その気配は徐々にこちらに近づいてくる!
やがて、その気配は僕の近くまでやって来ると、
僕の周りを回り始め、やがて枕もとで止まった。
そして、明らかに
僕の顔をのぞきこんでいる気配。
恐怖で体が動かない。
目を開けようと思えば開けられそうだったが、そんな気になるはずもない。
精神がギリギリのところまできてしまったので、
これはマズイと、逃げることを決意。
階段までは3㍍ほど。
「いっせーの、せっ!」で起き上がり、
気配を感じる方には決して目を向けず、階段のみを見つめダッシュ!
一心不乱にハシゴを駆け降り、カメラマンの寝室に駆け込んだ。
当然、驚いた小川カメラマンは目を覚まし、「ど、どうしたのテラちゃん?」 。
僕は言った。
一緒に寝てもいいですか?
2階からハアハア言いながらやって来た大の男の発した
「一緒に寝てもいいですか?」の一言。
経緯を知らない小川カメラマンはきっとお尻の括約筋をキュッと締めたことだろう。
その後、隣のベットへ潜りこんだ僕は恐怖でなかなか寝付けなかったが、
おそらく、隣の小川カメラマンも違う恐怖でなかなか寝付けなかったに違いない。
次の日、ガイドさんに遠まわしに
「あのログハウスって何か噂があります?」と聞くと、
「出ましたか……。内緒ですが、
あのログハウスのすぐ裏は火葬場だったんですよ」とのこと。
あの時、目を開けていたら、何が見えたのだろうか……。
思わずオチをつけてしまったが、
冗談抜きに取材でぶっちりの恐怖体験でした。