半年間挑戦的な撮影を続けたむらいさち氏 5月に写真展「EARTH COLORS」を開催【インタビュー】

開催が間近に迫った水中写真家・むらいさち氏(以下、むらい氏)の写真展「EARTH COLORS」。2023年5月18日(木)~5月29日(月)に東京新宿のOM SYSTEM GALLERY(旧 オリンパスギャラリー東京)にて開催される本写真展に先立ち、むらい氏にどんな写真展なのかや開催に向けての想いをインタビュー。

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本写真展のために撮りおろし
むらい氏にとって無謀な挑戦となった半年間

スイカ

この写真展を開催しようと思ったきっかけはなんだったんでしょうか。

むらい氏

OM SYSTEM(旧オリンパス)の方からの「企画展をやりませんか」という依頼が始まりでした。僕はOM SYSTEMがオリンパスのころから、ずっと一緒に仕事をさせていただいていたので、いつかOM SYSTEMのカメラを使った個展をやりたいという想いはありました。しかし、もう少し作品を撮りためてからかなと思っていました。ですが、お世話になっている方々から声をかけていただき、新しい会社になったOM SYSTEMを応援したい、恩返しをしたいという想いもあり企画展の開催をすることにしました。

スイカ

今回の写真展には、ほぼすべてこの半年間でOM SYSTEMのカメラで撮りおろしたものを展示されるとお聞きしましたが、どういった背景があるのでしょうか。

むらい氏

過去に撮影した写真ももちろんあったんですけど、今の自分との温度差を感じたんですね。それから、使用したカメラも最新のものではなかったんです。今回の写真展の作品はOM-1というカメラで撮ったのですが、過去に使用した機種と比較しても別次元レベルに性能が良くなってるんですよ。なので、今の一番いいカメラの性能を100%生かして撮りたいと思ったんです。自分自身も昔は撮れなかったようなシーンも、だいぶ撮れるようになりました。それを表現したいと思ったときに、やはり過去の写真との温度差を感じて、撮りおろそうって思っちゃったんです。

スイカ

半年というと結構短い期間な気もしますが、ご苦労されたことはありますか。

むらい氏

自分の中では結構無謀な挑戦でもありました。半年の撮影期間が冬のシーズン、大体12月から4月ぐらいまでだったんです。たとえばこれが逆のシーズンだったら海も撮れるし、花もたくさんあるので、自分の得意分野である色彩をとらえることができたんですが、冬の時期はどうしても自然の中に色が少ないんですね。なので実は結構苦しかったというか。4月までずっとモヤモヤしながら撮影していました。

スイカ

具体的にはどういったところで撮影をされていたんですか?

むらい氏

冬からスタートしたので、最初は雪山でしたね。長野県の標高2000mくらいのマイナス20度とかになるような場所に行って撮影したり、北海道に2週間以上滞在して、流氷ダイビングや陸を回って撮影したり。春は桜を求めて関東近郊をあちこち周りました。日本の冬から春が中心の、今までのむらいさちとは違った雰囲気の作品が楽しめるのではないでしょうか。一点だけサイパンの写真もあるので、探してみてくださいね。

スイカ

水中での撮影はいかがでしたか?

むらい氏

水中は沖縄から伊豆や佐渡など、その時に行けた日本各地で撮影していました。今回使用しているカメラはOM-1で、ハウジングはAOIというメーカーのものなんですが、コンパクトで軽くて、これがすごく助かりました。たとえば流氷での撮影の時、ドライスーツですごく寒くてストレスがかかる中で、ビーチエントリーしなきゃいけないときは体力を温存できましたし、ボートから何度もエントリーとエキジットを繰り返すようなクジラの撮影では機動力を活かせました。

スイカ

ふんわりした作品とは裏腹に、割とハードな撮影をされたんですね。最終的に展示する写真はどのように決められたんですか?

むらい氏

普通は展示したい好きな写真が100点ぐらいあって、そこから泣きながら削って点数を絞っていくんですが、今回はもう35点しか出せる写真が撮れなかったというか。1点を除いて、この半年で撮影した写真だけという結果になったんですよね。なんでしょう、一球入魂というか。普段の写真展はテーマが元々あって、ある程度写真が揃っているところから展示を考えるのですが、今回はゼロからスタートしてこの写真展に向けて撮影をしていたので、本当に一枚一枚にすごい想い入れがあるんです。今の自分が一番進化していて、最強だと思っているので、そういう思いも表れたのかもしれません。

むらい氏こだわりのレイアウト
いつもと一味違った雰囲気を楽しんで

スイカ

展示のレイアウトもご自身で決められたそうですね。

むらい氏

そうですね。しっかり見てほしいという気持ちがすごく強いので、展示もそのようにしています。あんまりわちゃわちゃせずに一枚一枚じっくり見られるようにスペースも広めに空けたり、いつもよりも落ち着いた雰囲気を心がけました。ギャラリーも結構落ち着いた雰囲気なので、ぜひゆっくり作品を見てもらいたいです。

スイカ

特にここが見どころというのはありますか?

むらい氏

やはり、大きくプリントされて展示された写真とネットで見る写真とは全然違うので、そこを本当に楽しんでほしいですね。ディティールや立体感などを知ってもらいたいです。色もとても綺麗に出ていますので。

展示のプリントチェック

展示のプリントチェック

むらい氏

それから、カメラの特性として、すごくふんわりではなく、少し締まった感じの作品になっています。黒い色や夜の写真もあるので、少しいつもと違った雰囲気が味わえるのではないかと思います。また、むらいさち=マクロみたいなイメージを持っている人も多いと思うんですけど、今回は大きくプリントすることをイメージして初めから撮影しているので、魚や花のアップの写真はなく、視点の広い気持ちのいいワイドの写真がほとんどです。そういった意味でも気持ちのいい時間を過ごせる写真展になると思います。

むらいさち作品

むらい氏

タイトルに「EARTH COLORS」とあるように、自然という括りで水中陸上関係なく自分が本当に心惹かれるものを追いかけているので、そんな世界観とか、いろんなところへ旅に出ているような感じで楽しんでもらえたらと思います。

写真展と写真集でストーリーが深まる

スイカ

先行発売された写真集『EARTH COLORS』には、写真展で展示されている作品も入れて全部で73点収録されているとのことですが、これらもこの半年で撮り溜めたものが中心なんでしょうか?

むらい氏

そうですね。写真展の作品はもちろん、プラスアルファでいろんな写真を入れています。たとえば一つの桜を撮るにしても、角度や時間を変えて撮影しているので、同じ状況で撮影している別のカットなども入っています。なので、展示を見てもらってから写真集を見るとその隙間のストーリーが埋まっていくというか、併せて見ていただくとおもしろいと思います。

スイカ

でももう売り切れですよね(笑)。増刷してください。

むらい氏

そうなんですよね(笑)。でも結構問い合わせをいただいているので、もしかしたら違った形で販売するかもしれません。写真展に間に合わせるのに、図録とかにしようかなとも思ったんだけど、ペラペラで印刷もあまり良くないので、そういったものを作るのは違うなと思ったんですよね。海の中とか、マイナス27度の山の上とか、結構危ない環境で一枚一枚命をかけて撮影しているので、それを雑には見せたくないし、見ていただく方にもいい状態でお見せしたいんです。今回の写真集は、何回もお世話になっているMY BOOKさんという一冊から写真集を作れるというのが強みの会社で作っています。印刷や装丁も本当にきれいなので、多少費用がかかっても、ほしいと思ってくれる人にきちんとした形で渡したいなという思いで作りました。

スイカ

増刷してください(笑)。

むらい氏

そうですね(笑)。写真展には間に合わなさそうなので、会場で注文していただいて、後日郵送みたいなのもいいかなと考えています。

スイカ

会場で注文して、また届いて思い出しながら見られるって素敵ですね。個人的には、写真集の表紙がすごく好きで。水中と陸上の両方が写っているのが、さちさんらしいというか。

写真集『EARTH COLORS』

写真集『EARTH COLORS』

むらい氏

ありがとうございます。出版社から写真集を出す場合は、ああいう作品集だと勘違いされちゃうんで、多分あの表紙は使えないんですけど、今回は遊べたというか、デザイナーさんがコラージュしてくれたんですよね。自分の写真に対しての姿勢とかスタイルをすごい表現できたので、僕のことを知っている人は合っていると思ってくれるでしょうし、初めて見る方もどんな世界なんだろうって興味を持ってくれるんじゃないかと。素敵だと自分でも思います。

トークショーにはゲスト出演も

スイカ

ギャラリートークとトークショーはどんな内容でしょうか?

むらい氏

ギャラリートークは、基本的にギャラリーを回りながら写真の説明や、撮影時のエピソードをお話ししていきます。トークショーは広いスペースにモニターを置いて、カットを見せながら撮影の裏話をするみたいな、そんな感じです。

スイカ

ゲストもいらっしゃるんですよね。

むらい氏

はい。1日のうち一回はソロでやって、一回はゲストを呼んでお話しをすると決めています。21日は写真家の川野恭子さんがゲストです。僕のことをよく知っている方なんで、楽しんでいただけるのかなと。そのほかはOM SYSTEMのスタッフさんを呼んで、カメラの話も含めてできたらなあと。この日は水中、この日は陸上とかもちょっと分けようかなと思っています。

スイカ

楽しみですね。最後にocean+αの読者に向けてメッセージをいただけると嬉しいです。

むらい氏

自分の興味のある海はもちろん大切なフィールドの一つですが、僕の中では水中陸上のボーダーがなく、自分が心赴くままに撮影しているので、その世界観をぜひ見ていただけたら嬉しいです。会場で展示している写真は、SNSにもオンラインサロンにもアップしていないものばかりです。本当に一歩足を踏み込んだところから楽しんでもらいたいというのが僕の強い思いなので、会場にぜひ足を運んでみてください。

スイカ

ありがとうございました。

1点を除いてすべて今回のために撮りおろされた作品が並ぶ「EARTH COLORS」。むらい氏の世界観を存分に感じに、会場を訪れてみてはいかがだろうか。

【告知】写真展直前! YouTube LIVE&インスタライブ

本写真展開催直前にむらい氏へライブ配信でインタビューを5月15日(月)にYouTube、5月17日(水)にインスタライブで実施!

ギリギリまで準備を行うむらい氏に心境などをお話しいただいちゃうので、ぜひご覧ください。

YouTube LIVE

日時:5月15日(月)21:00〜
配信場所:うみさちTV
インスタライブ

日時:5月17日(水)21:00〜
配信場所:@insta_oceana@murai_sachi
※コラボ配信のためどちらのアカウントからもご覧になれます

むらいさち写真展 「EARTH COLORS」概要

■期間
2023年 5月18日(木) ~ 5月29日(月)
※10:00〜18:00(最終日 15:00 まで)
※休館日5月23日(火)・24日(水)
※入場無料

■イベント
むらいさち写真展ギャラリートーク&トークショー 
会場:ギャラリートークはギャラリー内、トークショーはイベントスペースにて開催  
※予約不要・参加無料

5月20日(土)
11:00~12:00ギャラリートーク
13:00~14:00トークショー

5月21日(日)、5月27日(土)、5月28日(日)
14:00~15:00トークショー
16:00~17:00ギャラリートーク

■会場
OM SYSTEM GALLERY(旧 オリンパスギャラリー東京)
営業時間:10:00~18:00(最終日は15:00まで)
火曜・水曜定休

東京都新宿区西新宿 1-24-1 エステック情報ビル B1F
新宿駅西口から徒歩5分
都営地下鉄大江戸線都庁前駅から徒歩4分

お問い合わせ:ギャラリー事務局 
TEL:03-5909-0190(火・水定休)

写真集『EARTH COLORS』再販決定!

すでに売り切れとなっていた写真集『EARTH COLORS』の再販が決まった。会場やネットから申し込めるので、むらい氏のSNSを要チェック!

むらいさち
むらいさち
沖縄県座間味村でのダイビングガイドを経て、写真の世界へ。雑誌や広告での撮影をメインに、エッセイの執筆、トークショー、メディアへの出演や、旅を楽しみながら撮り方を教えるワークショップ、町おこしを応援するフォトツアーの企画開催など、その活動は多岐に渡る。水中からオーロラまで地球全体をフィールドに、一年の多くを取材先で過ごし、「しあわせな瞬間」を追い求め撮影を続けている。描くように撮る独自の手法で、他にはない、やわらかく優しい色の世界を表現した作品は、癒やしを求める女性から、人気を博す。
著書:写真集「Life is Beautiful」(LiBbooks)、「ALOHEART」「LinoLi」(LifeDesignBooks)、「きせきのしま」(小学館)、FantaSea(BUNKADO)、「しあわせのとき」(LibroArte)写真絵本「よるのこどものあかるいゆめ」詩:谷川俊太郎(マイクロマガジン)
むらいさちオンラインサロンでは撮影の裏話なども発信中!

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PROFILE
IT企業でSaaS営業、導入コンサル、マーケティングのキャリアを積む。その一方、趣味だったダイビングの楽しみ方を広げる仕組みが作れないかと、オーシャナに自己PR文を送り付けたところ、現社長と当時の編集長からお声がけいただき、2018年に異業種から華麗に転職。
営業として全国を飛び回り、現在は自身で執筆も行う。2020年6月より地域おこし企業人として沖縄県・恩納村役場へ駐在。環境に優しいダイビングの国際基準「Green Fins」の導入推進を担当している。休みの日もスキューバダイビングやスキンダイビングに時間を費やす海狂い。
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