三浦半島の葉山でダンゴウオの産卵シーンに遭遇!これで産卵~ハッチアウト~稚魚~成魚までの全繁殖ステージを制覇
ダンゴウオの産卵を激写
葉山のビーチはダンゴフィーバー
神奈川県三浦半島のダイビングサイト、葉山からとてもステキなニュースが飛び込みました!
情報を提供してくださったのは、ダイビングショップNANAの佐藤輝さん。
テルさんによると、1/15のビーチダイビングで、ダンゴウオの産卵シーンに遭遇したそうです。
それだけでもすごいのに……、なんとこの“立ち合い出産”で、ダンゴウオの全繁殖行動の観察を制覇したのだとか!
産卵、卵を守りハッチアウト、稚魚、幼魚、そして成魚へ……
かわいいダンゴウオの人生のステージをすべて見守っているテルさんに、今回の産卵と繁殖行動についてのお話を伺いました。
ーーー
今回ダンゴウオの産卵を目撃されたそうですが、その時の状況を教えてください。
テルさん
数日前からずっと、ビーチの浅場にいるダンゴウオの観察をしていたんです。前日、穴に入って掃除をしているオスがいたので、「そろそろ産卵かな?」と思っていました。
その日はビーチダイビングで、チャガラの求愛行動を見に行きました。で、一通り潜ってから、浅場のダンゴウオを見に行ってみたところ、これからまさに産卵という場面に遭遇!
まん丸に膨れ上がったメスが穴に入り、卵を産み付け始めたのです。オスと僕はその間、近くで待機。まさに“立ち合い出産”です!笑
ーーー
それはすごいですね! “立ち合い”にはどれくらい時間がかかったんですか?
テルさん
トータルで1時間半くらいでしょうか……水深1~3mの場所なので、エアは大丈夫でしたが寒かったです。最後は悟りが開けそうでした笑
メスの産卵が終わると、オスが穴に入って放精し、卵を守るんです。メスとオスが仲良く並んで穴に入っているシーンを撮影したくて、ここは僕もねばろうと。
でも結果、産卵後はオスが穴に顔を突っ込んでモゴモゴ。その後、メスはぴょんと穴から出て行ってしまいました。
ーーー
狙っていたシーンは撮れなかったとはいえ、かなり貴重なお写真ですね! この後、ハッチアウトまではどれくらい時間がかかるんですか?
テルさん
約1ヵ月です。その間、オスが卵を守り、穴の中にきれいな水を送ったりしているんだと思います。
僕が見てきた葉山のダンゴウオのハッチアウトは、おもしろいことに、稚魚がすべて赤色なんです。そして、卵を守るオスは緑色。
ハッチアウトは、穴から赤い稚魚がバーーーッと飛び出してきます。それで少し沖に流されていくんですが、みんな岩や海藻の赤い部分にピタッと着地するんですよ! これはすごいなと。
ーーー
ええ! だとすると赤ちゃんたちは、自分が赤い色だとわかっているんですか!?
テルさん
そうなんじゃないかなと思っています。自分は赤いから、赤いところにくっつくぞと。
以前、東北でダンゴウオのハッチアウトに遭遇した佐藤長明さんに話を伺ったところ、稚魚は赤や緑や黄色……と、カラフルだったそうです。そのほうが、外敵から身を守れる可能性も高くなりますし、より多くの個体が生き延びることができるという、生物の知恵ですよね。
でも、葉山の場合はすべて赤。親の色とも異なっています。環境によって変化するんでしょうか? 不思議ですよね。
今回情報を提供してくださったテルさんから最後に一言。「ダンゴウオに触ったり、無理やり撮影をしようとしないで、優しく見守ってください」とのことでした。
人生の新たなステージに立っているダンゴウオ。卵や赤ちゃんを、ダイバーみんなで守っていきましょう!
<情報提供>
佐藤輝さん(ダイビングショップNANAオーナー)
ガイド会所属。葉山で生まれ育ち、学生時代は葉山の海で毎日ヨットの練習に明け暮れる。
サイパンで4年働いた後、自分が育ち、毎日ヨットの練習に励んだ葉山でダイビングショップを始めることを決意。ダイビングショップNANAのオーナーとなる。
今はとにかく葉山の海を深く知ることが人生の目標。相模湾の素晴らしさを多くの方に知ってもらうために日々奮闘中。
▼その他のダンゴウオに関する記事もチェック