ダイバーなら知っておきたい、ダイビング中にはぐれた時のお作法

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先日行ったアンケート「ダイビング中に気づいたら他のグループに混ざっていた状況、どうしたらいいと思いますか?」の結果が出ました。

他のグループに混ざってたAさんはどうしたらよかったと思いますか?

  • その他 (4%, 7 Votes)
  • 他ショップのガイドにお願いして一緒にすぐにエグジットしてもらう (16%, 29 Votes)
  • 遠巻きにさりげなくついていく (3%, 6 Votes)
  • ガイドさんに根の方角を聞いて、根に戻って待つ (7%, 13 Votes)
  • 他ショップのガイドさんと行動 (25%, 46 Votes)
  • 一人で緊急手順に従って行動 (45%, 82 Votes)

Total Voters: 183

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緊急手順に従って一人で浮上が45%、ガイドさんと一緒に行動、あるいは浮上と、ガイドさんの力を借りるパターンが合わせて41%と、意見が真っぷたつに割れるというおもしろい(?)結果になりました。
水中で一人で行動しない方がよいというのは、共通の意見のようですね。

台風直後のパラオの群れ(撮影:越智隆治)

他のグループに混ざってしまった時のジレンマ

まず、気が付いたらはぐれダイバーが自分のグループにいたガイドとしては、はぐれダイバーが勝手に緊急手順に従ってくれればそれに越したことはないかもしれません。
しかし、もし、はぐれダイバーに浮上する指示をした後、何かあったら……。
責任うんぬんの前に寝覚めが悪いですし、潜っている最中も気が気ではないでしょう。

しかし、一緒に行動させてしまうと、はぐれダイバーが元々いたグループは大騒ぎになってしまう可能性がありますし、すぐに一緒にエグジットするとなると、途中でダイビングを切り上げさせてしまうことになる自分のお店のゲストが気になるところです。

一方、はぐれダイバーとしても、一人で浮上できるスキルがあれば問題ないですが、「こんなところで一人にされたら死ぬ!」というほどストレスがかかっていたら、捨て猫のように潤んだ瞳でガイドさんを見つめるしかありません。

さらに、今回のケースのような、ビーチと違って初めてのボートダイビングだった場合、ましてやドリフトダイビングだった場合など、海の環境やダイバー状況によって対応はケースバイケースです。

そんなジレンマがアンケートにも表れているのでしょう。
正解はその場にしかないのですが、皆さん、それぞれの立場や思いに立ってお答えいただいた結果なのだと思います。

つまり、はぐれるといろいろややこしいんです!
ましてや、なんか、グループに1人増えちゃったりするとなおさら(笑)。

今回のアンケートから得る教訓としては、まずははぐれるとどういうことが起きるのかという実際にケースを知っていただき、はぐれないようにすること、はぐれたときにどう行動すべきかのシミュレーションに思いを馳せていただければと思います。

北海道の海ロケ(撮影:越智隆治)

ガイド側からできること

予防とシミュレーションの大切さを思い出したら、少し具体的に、起きてしまったときの対処を考えてみます。
多分に私見が入っていますが、参考までに。

他のグループのダイバーが自分のグループにやってきたとき、ポイントとなるのは、“確認”ではないでしょうか。

大原則として、バディやグループとはぐれた場合、一人で行なう緊急手順に従わなければいけません。
本人が問題なければ、そうしてもらえばいいのだと思います。

なので、ガイドとしては、はぐれダイバーにしっかり状況を確認することが大事。
緊急手順ができるのかできないのか、しっかり聞いて確認するという作業がポイントではないでしょうか。
大丈夫じゃなくても大丈夫と言うことも考えられますので、客観的評価を加えつつ判断するしかありません。
はぐれダイバーとしてはしっかりと本音を伝えることが大事でしょう。

ここで「大丈夫じゃない」となれば、そこは一番大事なのは命。
何かを犠牲にしても、一緒に行動するなり、浮上するなりするしかありません。

ただし、これは伊豆のビーチでの話で、ドリフトがきついところであれば、例えば「一緒に行動させて、自分の船に上げてから他の船に無線で連絡」など、各フィールドでガイドラインがあってもよいケースかもしれませんね。

そして、万全を期すのであれば、やっぱり、ひとつのショップにガイドのほか、アシスタントがいると安心です。

大学時代、グループの後方上からついていくアシスタントのバイトを伊豆でしていましたが、一番緊張するのが、透明度が悪いときにグループが交差する瞬間。
ゲストの特徴を思い出しつつ、人数を数えて他のグループについていくのを防ぐわけですが、希に知らない人が混ざっていることもあります。

実際、はぐれダイバーを連れて二人でエグジットをしたこともありますが、はぐれたことにショックを受けたのかストレス全開のオジサマに、若かったこともあり、内心「迷惑なおっさんだなー」と思っていました(笑)。

グループを管理する上でアシスタントがいると安心なのは当たり前ですが、こうした外部からのやむを得ないケースにも対応できるのは、アシスタントのいる潜り方のメリットですね。

セブ島の魚の群れ(撮影:越智隆治)

ダイバー側からできること

アシスタントをしていた若かりしころの自分が思ったように、はぐれた上に、ついてこられると、ちょっと迷惑です(笑)。

そうならないためにも、まずは、少なくとも、ブリーフィング時にはぐれたときの決まりごとを確認し、それを実際に行なう覚悟と手順のイメージを持ってダイビングをして欲しいと思います。

そして、たまたま他のグループについていってしまったことに気が付いたら、基本的には離反の手順に従います。
しかし、海況、残圧、そして何より心のストレスと相談し、「独りは無理!」だと思ったら、そこにいるガイドさんに助けを求めるのもあり。

ガイドさんとしては、「あっちへ行け」とは言わず、きっと対処してくれるので、エグジット後は誠心誠意、謝りつつお礼を言いましょう。

ちなみに、何度もはぐれた経験のある自分ですが(面目ない…)、緊急手順を確認していれば、意外と落ち着いて対処できます。
逆に緊急手順を確認せずに潜ってはぐれた時の心細さといったらもう…。

ちなみに、結局、Aさんは、迷惑をかけたくないとの一心で、まずは一人で根に戻ったそうです。
根に戻るまではひとりぼっちで心臓がバクバクだったそうですが、根で待っている間は、他にも人がいたのである程度落ち着けたそうです。
しかし、グループとは合流することはできず、コンパスもなかったので、その場で浮上し、岸を確認しつつ、水面を泳いで帰ったそうです。

焦っていたので、浮上速度も速く、水面を泳いで帰る時は一人の上に、水底が見えずにストレスで心臓バクバク、エグジットしたときには疲労困憊だったそうです。

そんな話を聞いてしまうと、やっぱり一人にするべきじゃない気も……。う~ん。

おまけ

“その他”にメールをいただいたお答えいただいた方の中から、いくつか抜粋してご紹介します。

一番多かったご意見が集約されたコメント
離れてしまったイントラさんチームは、はぐれたことに気付いた時点で元の場所に戻るか緊急時の体制をとると思うので、同じように1分間待機してイントラさんが戻ってこなければ緊急時の対応をとるべきだと思います。

ですが、経験本数20本で不安であれば、最低限の安全が確保できるまでは、担当でないイントラさんでも一緒についてもらうのはアリだと思います。
緊急時の体制がどういうものかにもよると思いますが、水面に浮上してフロートを出すという手順であれば、必ず水面で落ち合うことができるはずですから、そこまでは他店のイントラさんに付き合ってもらうのがよいかと思います。

水面で落ち合うことができなく、エキジットが一人でできない状態であれば他店のイントラさんチームにお願いして一緒にエキジットしてもらうしかないと思います。
迷惑をかけることにはなりますが、命にはかえられないと思います。

例え他チームについていって安全に潜れたとしても、離れてしまったガイドさんはゲストと落ち合うことが出来なければ「遭難」として捜索に入る手順に入るはずです。
それこそたくさんの人たち(一般ダイバーを含め)に迷惑がかかります。

しつこいくらい「離れたら1分間待機、浮上。水中より水面、水面より船や陸、より安全なところにまず避難」たたきこまれています(笑)

ガイドの立場から
他のチームについてエクジットか、一人で浮上か迷いました。

私もガイドをしている時、ふと気づくと人数が一人多く、他のショップのお客さんが混じっていたという経験があります。
スレートで確認したら、やはり自分のチームとはぐれたとの事でした。

でも、もうエクジット口が近かったので、そのまま一緒にエクジットすることにしました。
自分のチームが、まだエクジットする時間でなければ、その方には浮上するように促したと思います。

エクジットした後は、一人でセッティング場所に戻らず、見通しが良い所で水面を見て、自分のチームのガイドさんを探すように伝えました。
以前に、自分のチームのお客さんが、迷子になって一人でセッティング場所に戻って待っていた事があったからです。
迷子になったら1分探して浮上が基本ですが、ケースバイケースかなぁと思いました。

ついて来られた立場から
神子元で付いてこられた経験があります。
ドリフトでそれどころではないし、突き放すわけにもいかず…。
幸いにもはぐれた事への動揺もなかったため、一緒に行動してもらいました。
素性もわからないレベルも判らない方です(汗)
問題はそんなことではありません。

ボートに上がると、自分とは違う船であることが判明。
戻りつつ無線かなにかでやりとりをしていたので、はぐれてしまったバディはさぞかし心配しており、もしかすると、あちらの船は捜索態勢か?! なんて心配していました。
ところが、迷子さんのバディは何事もなかったように上陸しておりケロッと…。

なんじゃコレ~と騒いでも、あまり相手にされず(現地サービス同士で大事にしたくない感じ?)私も、当時は30代前半。
なんか、適当にされたまま帰途につきました。

オーシャナさんのような存在が、問題定義、情報発信をしてくれると、イロイロな方にも様々なことが届きますね。
いい時代になったなぁ~と思う次第です。

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writer
PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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