リブリーザーはダイビング初心者も使える!?リブリーザーっていくらするの?
※この記事は2012年12月12日の記事を加筆・訂正しています。
最新のダイビング用リブリーザーについては現在調査中です。
世界最大のダイビング指導団体であるPADIは、エキスパートの特権と思われていたリブリーザーダイビングから、大きく踏み出すレクリエーション専用のリブリーザーという考え方を推し進めていました。
リブリーザーの操作を、エレクトロニクスを使って徹底的に自動化し、ヒューマンエラーをなくして、平均的なダイバーにも使えるようにしようという考え方です。
これがタイプRというリブリーザーです。
レクリエーション専用のタイプRというコンセプトをあえて打ち出すということは、言い換えれば、従来のリブリーザーは使用前のセッティングから操作まで、かなりの面倒な手順と熟練が要求されたということです。熟達したダイバーの手練によって、器材面、運用面のヒューマンエラーをなくすというのが従来の考え方です。
「熟練によってエラーを減らす」この考え方はとても重要です。
しかしその一方で、リブリーザーのガスをリサイクルして、深度にあわせて酸素と空気をミックスしてナイトロックスを作りながらダイビングすれば、減圧症のリスクを大きく軽減できるという可能性があります。ナイトロックス固有の酸素中毒の問題もコントロールできます。
これらの特長は、レクリエーションダイビングの活動範囲の深度40m以浅の無減圧ダイビングではより大きな将来性を秘めています。ひと言で言えば、スクーバダイバーの宿命である、重いタンクでの短時間のダイビング、そして減圧症のリスクの大幅な軽減にもつながるのは間違いありません。リブリーザーのポピュラー化路線です。
こういえばいいこと尽くめにきこえますが、そのためには、先ほどの徹底したエレクトロニクスにお任せという問題を解決しなければなりません。
このタイプRというコンセプトを実現するために、PADIはリブリーザーメーカーに24項目もの、仕様規準を要求しました。コンピューターのすばらしさは、間違ったセッティングや操作をすると、それを警告し、改善方法を指示できることにあります。
例えば、タンクのガスが規定量までない、あるいはバッテリーの使用可能レベルが不足している、あるいは酸素センサーのチェック、ダイビングがスタートできない、さらにはエレクトロニクス系のスイッチがオンになっていないのにエントリーしてしまったときには自動的にスイッチオンするなど、すべての情報をiPadのような画面に表示し、必要なときには無視のできない警告をするなど、要するに人間はうっかりミスをすることを前提に、リブリーザーシステムを全自動化することを要求したのです。
エレクトロニクス化するもう1つの大きな利点が考えられます。
せっかくのエレクトロニクスで作動するのですから、ダイブコンピューターも組み込んでしまえば、わざわざ腕にくくりつけたダイブコンピューターを気にせずとも、ダイブコンピューターのほうが、そろそろ空気がないよとか、無減圧リミットに近づいている、あるいは水面に戻るだけのガスがない、浮上スピードが早すぎる、さらには、緊急減圧ストップの指示や警告も出してくれます。ほとんど減圧症の心配をせずにあきれるほど長時間のナイトロックスダイビングもできるのです。
ダイビングのトレーニング団体の方から、器材の仕様条件を出す。
これは大変な発想転換であり、常識打破です。私たちはこれまではメーカーが設計製造したダイビング器材に合わせて、ダイビングのトレーニングを組み立ててきました。ここでは、レクリエーションダイビングに合わせたリブリーザーを作ってくれというというのです。
いわば「素人向けのリブリーザーなんて」というメーカーもあったでしょうし、またタイプRのような考え方を異端視するグループも現実にはいるのです。リブリーザーをエキスパートダイバーの特権にしておきたいダイバーグループも少なくありません。
しかしタイプRの考え方に共鳴するメーカーも多いようなのです。従来のリブリーザーを作っていたメーカーも次々に開発に着手していることが伝えられています。ソフトウェアの開発は技術の問題だけでなく、またかなりの開発費が必要なので、一時に多くのタイプRが市場に登場はできないかもしれませんが、今後少しずつ、確実に市場にニューモデルが登場することになるでしょう。
そのタイプRのPADIの要求条件を最初にクリアーしたリブリーザーが、POSEIDONのMK6であります。
すでに日本にもトレーニングセンターができました。
しかし、いくら大きな将来性を秘めているといっても、すぐには普及するというわけには行きません。
日本はナイトロックスダイビングすらまだまだの、新テクノロジーには保守的な環境風土です。
その中で最先端のタイプRリブリーザーを根付かせるのは、かなりの挑戦的な仕事です。
筆者も実は理屈の上での素晴らしさは認識しながらも、どれだけのマーケットがあるのかと危惧していました。
一般的なダイバーがどれだけリブリーザーの将来性を理解するだろうかという危惧もあります。
また、実際面での普及のネックが存在します。
従来のエキスパート向けのリブリーザーはほとんどが個人輸入に近い状態で、ユーザーガイドも英文のまま。
メンテナンスも多くは生産国のメーカーに送り返さねばなりません。
レクリエーションという大きなマーケットを想定した場合は、日本語版のユーザーガイドもトレーニングマニュアルも、さらに常時部品を用意したサービスセンターも必要です。
その結果、どうしても初期の器材は高額になってしまいます。
いずれそのコストは普及するにつれて、購入しやすい価格になるでしょう。
筆者が始めて買ったレギュレーターは大学卒の初任給ぐらいしましたし、タンク1本が2ヶ月分でした。
クレジットカードなんてない時代ですから、器材を買うのは決死の覚悟でありました。
それはともかく、レクリエーションダイビング用のタイプRのPOSEIDON MK6の価格はトレーニング込みで78万円。
かなりの高額です。また、一定期間で二酸化炭素の化学吸収剤を交換するというランニングコストの問題もあります。
画像元ページ:http://www.loco.jp/2012/03/post-481.html
そんな背景の日本で、2012年の5月にPOSEIDON MK6が発表されてから11月までの6ヶ月間の販売台数は12台。
たった12台といわれる人もいるかもしれません。
が、なにもない畑に種を播いて6ヶ月で12台というのは、たいした台数なのです。
さらに購入したダイバーは必ずしもテクニカルダイビング志向のダイバーでなく、30歳代の年齢層が多いなど、いわば平均的なダイブマスターレベルのダイバーが多いようです。
購入の動機も、重いタンクから開放されたい、長く潜りたい、減圧症の心配をしたくないなど、ごく当たり前というか軽いノリのようです。レクリエーションダイバーが普段から抱いている素朴な願望の解決を素直にリブリーザーに求めているようです。
実際にタイプRのリブリーザートレーニングは、ダイブマスターレベルで初めて受講できるのではなく、オープンウォーターダイバーでナイトロックスダイバーであれば受講できます。つまりオープンサーキットのコース体系と並行して、リブリーザーのコース体系があるということです。
この12台が、日本のレクリエーションのリブリーザーダイビングのスターターになるかどうかは、すぐには分りませんが、いずれダイビングはリブリーザーでも普通のオープンサーキットでも、ダイブコンピューターがコントロールするようになり、いつかはリブリーザーがダイビングの主流になるだろうと想像しています。
リブリーザーについて興味がある方は、以下の記事も参考にしてほしい。