サイドマウント・ダイビングの講習で求められることとは
ワールドカップが始まりましたね。
また寝不足の日が続くと思います。ダイビング前日には注意が必要ですね。
ちなみに開幕日の6月12日はブラジルでは「恋人の日」といい、バレンタインデーがないブラジルにとっては大事な愛の告白日!
ブラジル人の異性に好意を寄せている方は今からでも遅くありません!
さて、前回から講習についてお話しさせていただいています。
サイドマウント・ダイビングを始めるのに必要な器材と講習とは | オーシャナ
今回からは実際のスキルについて幾つかお話ししたいと思います。
今回もPADIのサイドマウントSPを例に説明させていただきますね。
サイドマウント特有のスキルはいくつかあります。
レギュレーターのリカバリ&クリアやホバーリングのようにオープンウォーター講習でお馴染みのものから、タンクの脱着など、さまざまです。
もちろん、バディとのスキル実施も大事です。
空気切れなどのタンクの共有はちょっと特殊な対応が必要にもなります。
ここでは、その中から幾つかご紹介したいと思います。
水面でのタンク脱着
習得スキルの中に「タンク脱着」がいくつか含まれています。
足が立つ所での装着や取り外し、足が届かない所や水中での脱着など、さまざま。
このタンク脱着が受講生のみなさんが最初にぶつかる「壁」だと思います。
テクニカルダイビング経験者であればステージタンク(減圧用タンク)の脱着は日常茶飯時ですが、レクリエーションダイバーの方ですと、腰のDリングにクリップ(スナップ)を装着する事すら困難になります。
これは「まだ自分の器材の位置を理解できていない」ためでしょう。
腰のDリングが自分が思っている位置と違う、またはDリングが倒れて身体に密着してしまい探せられないなど、いろんな原因があると思います。
そして、ようやくDリングにクリップを装着できても、今度は脇のバンジー(タンク上部を固定するゴム)にうまくタンクを固定できなかったり…。
バンジーが固かったり、あるいはタンクバルブ付近のレギュレーター・ファーストステージ付近が複雑なため、バンジーが絡まったり。
この最初のタンク装着だけで10分以上かかる事もあります。
前回も少し言いましたが、「しなければいけない事をストレス無く実行」する。
サイドマウントダイビングはこれがとても大事になります。
タンク装着は「絶対にしなければならない事」ですよね。
それをストレス無く実行するために、自分の器材を理解する事はとても重要になります。
フリーマウント(タンクを固定しないで手で持つ)というスタイルもありますが…。(笑)
まず、腰のDリングの位置。
もし、手が届かなかったら、届く位置に変えちゃいましょう。
腰のハーネス(バンド)の位置が合わなかったら、ハーネスを調節して上下に移動させちゃいましょう。
タンクのクリップの位置も上下にずらしてみましょう。
クリップをとめているロープの長さも変えてみましょう。
クリップそのものの大きさも変えちゃいましょう。
もし、Dリングがいつも倒れて探せないのなら、固定式のDリングに変えちゃいましょう。
Dリングのアーチ部(輪っか)が小さかったら大きいのに変えちゃいましょう…etc。
どうですか?
腰のDリングの位置だけでも、これだけ変更できる要素があります。
これらを自分の都合の良い部分だけ選択して器材を組み立てましょう。
そうすればストレスは軽減するはずです。
バンジーも同じ事。
バンジーには着脱式と固定式があります。
初心者向けBCには着脱式が多いですが、中級者向けBCのほとんどは固定式です。
私は経験上、固定式の方がタンクの着脱が簡単に思えます。
この辺も自分の好みで変えちゃいましょう。
バンジーの強さ、太さ、長さもさまざまです。
これも自分の好みに合わせて変えちゃいましょう。
(人によっては自転車の荷台に使うゴム紐を100均で買ってきて使っている人もいます)
これで、またストレスが軽減するはず。
あとはもっとストレスが無くなるまで練習しましょう。
自分好みの器材を作る事、そうコンフィグレーション(器材構成)の作成ですね。
サイドマウントダイビングではコンフィグレーションがとても大事になります。
ダイビングの快適さを左右する需要な要素ですよね。
水中でのフィンキック
サイドマウントダイビングはトリム(水平姿勢)がとても大事になります。
なぜなら、トリムこそサイドマウントのメリットの一つだからです。
サイドマウント用BCもトリムが取り易いようにデザインされています。
そして、トリムが十分とれている事により、様々な動きが可能になります。
まずはヘリコプターターン。
これは位置をそのままに180°、あるいは360°旋回するスキルです。
微妙なフィンキックを要求されますが、慣れれば楽しいです(笑)
さてこのスキル。
一体なぜ実施するのでしょう?
たくさん密集するダイバーの中で向きを変えるため?
岩の隙間で向きを変えるため?
ぐるぐる回ってチームのみんなを驚かすため?
なぜでしょう?
実はこのスキルはテクニカルダイビングでのレックダイビングで使用します。
テクニカルのレックダイビングはペネトレーション(内部侵入)を実行します。
その際、例えば船の中の廊下。船の中の廊下ってとても狭いですよね。
そこで向きを変えようとすると、その狭い空間で変えなければなりません。
下はヘドロなどが蓄積しており、着底は絶対にできません。
つまりホバーリングした状態でその場で旋回するのです。
そのためのスキルなのです。
(ケーブダイビングでも、同様のシチュエーションがあります)
でも、オープンウォーター環境では必要ないですよね?
なぜするのでしょうか?
これは私の推測ですが、おそらくホバーリングスキルの向上のためだと思っています。
綺麗に旋回するためにはホバーリングは絶対条件ですから。
次にバックキック。
こちらは煽り足の変形。
フィンの角度を変えるタイミング操作して後ろ向きに進みます。
広いオープンウォーター環境でバック???
身体をひねって向きを変えて前に進んだ方が早くね?
はい、もうお分かりですね。
こちらもレックダイビングやケーブダイビングではとても重要なスキル。
例えば、先に進んで行ったら行き止まり、戻らなければならない。向きも変える事ができない。
そうなったら、そのまま後ろに戻らなければなりません。もちろん、着底や周囲の物に触れてもいけません。
バックしかないですよね(笑)
ただ、サイドマウントSPのバックとレックダイビングのバックはちょっと内容が違います。
SPの方はただ後ろに下がればいいのでキックの範囲に制限はありません。
大きくフィンキックをすると意外と進みますし(笑)
ですが、レックの場合空間が限られています。
そのため、必要最小限のフィンキックで下がらなければなりません。
これ、結構難しいです…。
こちらも、このスキルをサイドマウントSPで実施するのはホバーリングの向上だと思っています。
ただ、もしホバーリングスキル向上のため「だけ」でしたら、このスキルの評価レベルはどうでしょうか?
例えば講習でバックキックが出来ない受講生がいたとします。
でもホバーリングは完璧!
ただ、足の使い方がちょっと慣れていなくてフィンキックしても進まないだけ。
どうでしょうか?
この受講生の方は落第でしょうか?
PADI規準では「キックのみを使用して後ろ向きに泳ぐ」とあります。
規準は満たしていません。
不可でしょう。
しかし、ではバックキックを完璧にマスターした場合のメリットはそこまで重要でしょうか?
例えばこの受講生が「私は世界に通用するサイドマウントダイバーになりたい!」や「私は将来ケーブダイバーになりたい!」というなら話は別です。
でも、オープンウォーター環境でサイドマウントダイビングを楽しみたい、というだけであれば厳密なバックキックは必要ないと思うし、もし本気でうまくなりたいのであれば、その後のダイビングで練習すれば良いと思います。
つまり、以前も少し触れましたが、インストラクターの判断がとても重要な事だと思います。
なぜオープンウォーター環境でバックキックで泳ぐのか?
それに対して明確な指導方針を持っていないと、単に難しい事だけをやらせる講習になってしまいます。
まだまだ講習内容についてお話したい事がありますが、今回はここまでにさせていただきます。
あ、ちなみにヘリコプターターンやバックキックは水中で動画をやられる方には非常に有効なスキルです(笑)
私は水中で動画を撮りますが(もちろん、サイドマウントで!)、結構使いますから(笑)
結局、今回も原稿を書いていて一番時間を取られたのは冒頭ネタでした。
苦痛になってきました。
でも、やめちゃいけない、という強い強迫観念にも追われています。
なぜでしょう?
あ、今一つの言葉が浮かびました。
…自業自得….。
では、また次回!!