サイドマウント講習のオープンウォーター環境での必要性
今週末は沖縄に来ています。
梅雨明けしましたね。
今回沖縄に来たのは、古宇利島の沖に沈んでるUSSエモンズにサイドマウントで潜るためです。
そうそう、古宇利島といえば最近、嵐のCM等でハートロックが有名ですね。
是非、来年のバレンタインデーはハートロックの前で愛の告白なんていかがでしょうか?
さて、今回も講習の実技についてお話させていただきます。
前回はフィンキックスキルがオープンウォーター環境で何処まで必要か?についてお話させていただきました。
サイドマウント・ダイビングの講習で求められることとは | オーシャナ
今回もPADIサイドマウントSPを例にオープンウォーター環境での必要性について迫ってみたいと思います。
バックアップ空気源の共有
オープンウォーター講習でお馴染みのスキルですね。
もらい手「空気を下さい」
与え手 「OK」
オクトパスを取り出し、肩越しに2ndステージにの向きに気をつけて相手に渡します。
そして、与え手はもらい手が離れないようにしっかりホールドして、なんちゃらかんちゃらのあれです。
サイドマウントSPでも同様のスキルがあります。
ただ、サイドマウントは2つのレギュを使用する為、オクトパスの様な予備レギュレーターの意味はありません。
サイドマウントSPではレギュレーターホースは一つは70cm以上のショートホース、もう一つは1.5~2mのロングホースを使います。
レクリエーションでいうオクトパスはロングホースの方のレギュを指します。
つまり、もらい手にレギュを渡す際、もし、ロングホースのレギュを咥えていたら、一度ショートホースのレギュに交換しなければなりません。
(サイドマウントは2つのレギュを特定のルールに基づき交互に使用します)
また、多くの人がレギュレーターホースを首に廻しています。
その為、とっさにロングホースのレギュを渡す際に首の後ろでホースがこんがらがってしまい、最悪の場合、強引に引っ張ると自分が咥えているショートホースのレギュも取れてしまう可能性もあります。
これは危険ですよね。
それに、2mのロングホースは普段使用しない部分はタンクにゴムバンド等で固定します。
これも慣れていないとうまくタンクにまとめられず、水中で造花の針金の枠にような、大きなホースの輪を作ってしまいます。
このホースの輪は周囲に引っかかったり、自分自身の体を拘束してしまう可能性もあります。
レクリエーションの方にとって水中での2つのレギュの使い分け、2mのロングホースの使い方は大きなストレスになると思います。
レギュレーターが2つ使うのはタンクを2本使うので必要とします(ここでは)
では、1.5~2mのロングホースを何故使うのでしょうか?
もし、オクトパスとしてもらい手と距離を保つためや、もらい手の水中での活動範囲を広げるためであれば必要でしょう。
でも、それはなにもサイドマウントだけではありません。
通常のレクリエーションダイバーもロングホースにすべきではないでしょうか?
(実際にロングホースを使用しているレクリエーションダイバーの方も見かけます)
でも、PADIのオープンウォーター講習では2mのロングホースの使用は規準に入っていません。
では、何故サイドマウントSPだけ?
実はここにもテクニカルダイビングの影響があります。
テクニカルダイビングではプライマリー(主)レギュレーターはロングホースを使用します。
そして、ショートホースをバックアップとして首にゴム製のネックレスを使用してぶら下げています。
つまり、緊急時には自分の咥えているレギュレーターを渡し、バックアップを自分で使用するのです。
それと同じ構成になっています。
では、何故テクニカルダイビングではロングホースを使うのでしょう?
先にあげた距離や自由度ももちろん必要です。
でもそれよりも大事な要素が含まれています。
みなさんお解りになりますか?
実はテクニカルダイビングのスキルの多くはレックダイビングやケーブダイビングを主に考えられています。
つまり、2mのロングホースの最大の意義は「狭い空間を進む時に、ダイバー2人が一つの空気源を共有し縦に並んで進む」為なのです。
狭い空間とは、沈船の中や水中洞窟を指しています。
ここで皆さんに一つ確認していただきたいのは、PADIサイドマウントSPはレクリエーションダイビングの一部として扱われています。
つまりオープンウォーター環境限定のサイドマウントです。
閉塞空間や内部侵入の資格としては認められていません。
ちょっと整理してみましょう。
サイドマウントSPはオープンウォーター環境限定。
2mロングホースの最大の意義はペネトレーション(内部侵入)環境での空気の共有。
?
矛盾していませんか?
2mロングホースの最大のメリットを生かせる環境では潜ってはいけない。
では、何の為にロングホースを使うのでしょうか?
レクリエーションダイバーにとって、2mのロングホースを使用する事は大きなストレスを生みます。
取り扱いもちょっと面倒です。
私は2mのロングホースを使うデメリットの方が大きいと思います。
PADIサイドマウントSPでは規準として「1.5m~2mのロングホースを使用」と明記されています。
ですが、インストラクターは明確にその使用する意味と問題点も伝える必要があるでしょう。
例えば、私はオープンウォーター環境でレクリエーションダイバーと潜る時は、通常のオクトパス(90cmホース)を使用します。
これでも、サイドマウントでしたらある程度の距離感も保てるし、もらい手の自由な行動も可能です。
また、ホースも首を廻さず、下から出し、ネックレスで首下にぶら下げます。
これだと、首の後ろでホースが交差しないので、スムーズに空気の共有が可能となります。
テクニカルダイビングの考え方は非常にシンプルです。
やらなければならない目標があり、それに対して自分が一番ストレスなく安全な方法でアプローチする。
バックアップ空気源でいえば、オープンウォーター環境でもらい手に対して、与え手がストレスなく、かつ迅速に空気を共有するには、自分はどうしたらいいか?どのようなコンフィグレーション(器材構成)を考えるべきか?が重要となります。
もし、その中で「2mのロングホース」が大きなストレスになるのであれば、私は使用すべきではない、と思います。
(あくまでもオープンウォーター環境限定での話しです)
さて、今回はここまでにさせていただきます。
次回ももう少し講習等のお話を続けさせていただきますね。
連載を通じて常にお話させていただいているのが、サイドマウントダイビングはテクニカルダイビングである、という事が段々お解りいただけて来たと思います。
テクニカルダイビングを理解するというよりも、テクニカルダイビングの器材や安全に対する考え方を併せて理解するとお考えください。
そして、重ねていいますがレクリエーションサイドマウントはインストラクターの指導力が大きく問われると思います。
インストラクターもそうですが、受講生自身も理解出来ない事や疑問に感じた事を解決していく事が大事だと思います。
いよいよ冒頭ネタが一人歩きしてきた気がします。
「男はつらいよ」の冒頭の寅さんの夢のようなノリになってきました。
あとは転がる石のように流れに任せてみたいと思います!
ドリフトダイビングのような次回の冒頭ネタにご期待ください!!