スキルアップの楽しさを教えてくれるサイドマウントのダイビング
先日、フィリピンはスービック湾に沈む、USSニューヨークをサイドマウントで潜ってきました。
レックダイビングとはいってもペネトレーション(内部侵入)をするダイビングで、最高にエキサイティング!
狭い船内の侵入には、サイドマウントは非常に優れています。
そうそう、ニューヨークといえばニューヨークのバレンタインデー。
海外では男性から女性に会いの告白を、と以前お伝えしましたが、親しい友人や同僚、家族同士でもギフトを交換しあうそうです。
これなら寂しい思いをする男性は少なくて良いですね!
……たぶん……。
さて、今回も前回の続きです。
サイドマウント講習についてもう少しだけ話しさせて頂きますね。
前回までにフィンワークやバックアップ空気源の共有など、レクリエーションサイドマウント講習での必要性についてお話させていただきました。
「テクニカルダイビングベースのトレーニングはオーバースキルでは?」
「何故、実際に潜らない環境のトレーニングをするの?」
「器材がより複雑になってよく分からない」
「何故自分で器材を組み立てなければならないの?」
「新しく器材の購入や講習をさせてお金を使わせたい?」
などなど、様々な矛盾や疑問を感じられた方もいらっしゃれると思います。
まず、スキル一つ一つで捉えると、確かにテクニカルベースである事は否めません。
サイドマウントダイビングの浸透がまだ日が浅いため、レクリエーションとしてのサイドマウントダイビングが確立されていないのでしょう。
その為、テクニカルダイビング対象のトレーニングが中心になっていると思われます。
ロングホースの取り回しやタンクの脱着、2つ以上のレギュレーターの取り扱い等、テクニカルダイバーは普段から使用している為、さほどストレスには感じないでしょう。
ですが、レクリエーションダイバーにとっては大きなストレスとなります。
つまり、このストレスがレクリエーションダイバーが始めてサイドマウントをする上で接する最初の問題となります。
ただ、見方を変えると次のようにも言えると思います。
- 1.今まで殆ど器材の修正(または改造)をしなかったダイバーにとって、自分の器材を理解や調整をする良い機会となる。
- 2.スキルに対する考え方がシビアになる。
- 3.サイドマウントがうまくなりたい人は積極的なトレーニングだけのダイビングを開始する。
まず、1.についてですが、レクリエーションダイバーの殆どの方が器材を購入した後、器材の組み替えや改造をしないと思います。
中にはドライホースの着け外しもショップ等に任せていらっしゃる方もいると思います。
レクリエーション用BCでも、インフレーターホースの交換やレギュレーターの中圧ホースの調整等、コンフィグレーション(器材構成)を自分にあうように改良する事ができます。
そして、普段から器材に触れておく事によりレギュレーターやBCDの初期トラブルを早めに見つける事ができるでしょう。
また、レギュレーター等に触れる事により、レギュレーターの構造やメンテナンス方法等にも意識が働くと思います。
つまり、サイドマウントダイビングを始めると自分の器材に対する意識が変わり始めると思います。
2.はどうでしょうか?
例えばオープンウォーター講習で教わったホバーリングやバックアップ空気源の共有、マスク脱着等完璧に出来た方はどれぐらいいらっしゃるでしょうか?
新しくトリム(水平姿勢)やフロートの打ち上げ等も加わりました。
どれも初めての方には難しいスキルばかりですよね。
始めから完璧にこなすのはとても難しいでしょう。
オープンウォーター講習のスキル実施で完璧にできなくても、インストラクターが「出来ていないけど内容は理解している」と判断した場合、スキルクリアとしている場合が多々あると思います。(講習期間が限られている事も要因の一つとも言えます)
そして、そのうまく出来なかったスキルをその後のツアー等で補完すれば良いと考えているでしょう。
サイドマウントダイビングも同様の事が言えますが、ちょっとスキル評価にたいしてシビアです。
サイドマウントでエントリーやタンクの脱着は最初に接する試練、ダイビングの上級者でも完璧にはいかないでしょう。
タンク脱着や水中での姿勢が自分でコントロールできて、初めてスキル講習を実施する事ができます。
つまり、姿勢のコントロールが出来ていないとスキル評価どころか、スキルそのものが実施できません。
いくらなんでも実施できないスキルを評価できませんよね。
そして3.については、一番大事な部分だと思います。
3.の説明で出来ないスキルをその後のツアー等で補完とお話ししました。
でも、自分から積極的にオープンウォーター講習でうまくできなかったスキルを、その後それだけの為にトレーニングしてらっしゃる方はどれだけいるでしょうか?
私自身も決して良くできた講習生ではありませんでした。
オープンウォーター講習が終わった後は遊んでばかりいましたし、マスク脱着なんて大っ嫌いで、2度とやるもんかと思いましたから(笑)
そして、通常のレクリエーションであればレギュレーターさえ咥えていれば、なんとかなっちゃうし、それなりに海の中を楽しめちゃいます。
それから段々と海の環境に慣れていき、ホバーリング等もなんとなく覚えていきます。(私自身もそうでした)
ところが、サイドマウントはそうはいきません。
例えばコンフィグレーションを改善しないと、エントリー時や水中でのストレスの日々は続きますし、姿勢の維持も難しいでしょう。
つまり、楽しくないんです!(これ一番大事)
そうなるとどうするか、練習するしかありません。
この練習の為だけにダイビングをするという発想は、レクリエーションダイビングで実行されている方は少ないでしょう。
ですが、テクニカルダイバーであれば、トレーニングの為だけのダイビングをする事は日常茶飯事。
「上手くなりたいから練習する」だけのダイビング。ちょっと体育会系のノリに近いですが、中々これも楽しいですよ。
何故かというと、トレーニングの成果が直に実感できるからです。
もちろん、トレーニングだけやれ、と推奨している訳ではありません。
ダイビングの楽しみ方は人それぞれ。サイドマウントだって、自由でいいはず。
ですが、ストレスなく潜れた時のサイドマウントは本当に楽で楽しいです。
流れに逆らって、足を延ばし優雅に泳ぐ姿は海の中を飛ぶツバメのよう!(笑)
さて、何をお伝えしたいかというと、レクリエーションサイドマウントはテクニカルダイビングの考え方を学ぶ良い機会だと思います。
器材に対する意識、スキルに対する行動、そして継続するトレーニング。
PADIサイドマウントSPもそのような考え方がベースになっているのでしょう。
ですので、全ての方が受け入れられるとは思いません。
今のレクリエーションダイビングでも十分楽しいはずです。
でも、サイドマウントダイビングを始めて得る楽しみも、私は十分魅力的な世界だと思います。
ちょっとだけテックの話しもしますね。
私はプロフィールにも書きましたが、サイドマウントが上手くなりためにケーブダイビングのトレーニングを受けました。
そして、そのトレーニングの課程でレックペネトレーション(内部侵入)ダイビングを学びました。
これが、本当に楽しかった!
今まで学んできた事が全て理解できた気がしたからです。
「こんなダイビングをしたかった!」と心の中の私が歓喜のサンバを踊りました!
私にとってレックペネトレーションダイビングは今一番ハマっているダイビングです。
船の中はあまり人が入らないのと水が動かないため大量のシルト(ヘドロ?)が堆積し、天井には大量の錆が付着しダイバーの吐く泡でボロボロと落ちてきます。そして落ちてきた錆や巻き上げたシルトは重力に引き戻されるまで水中を漂います。
透明度は1m前後、人がやっと通れる空間を進んで行きます。
シルトが巻き上がる為、着底はできません。
天井も錆の落下や突起物が多いので触れる事はできません。
空間が狭い為、身体の自由もきかず、それでも中層を維持しゆっくり進んで行きます。
まるで罰ゲームのようなダイビング(笑)
でも、それが楽しくてしかたないのです。
いつも満足のいくダイビングはできていません。もっと上手くなりたいと思います。
だから、暇があれば海に行きトレーニングをします。
陸上でも、暇があればイメージトレーニングしたり器材をいじったり、会社の駐車場にロープを張り巡らせ、ロープを手に目をつぶって進む練習もします。
こんなダイビングとの付き合い方も良いと思いませんか?
何度も言いますが、全ての方に推奨しているわけではありません。
ダイビングの楽しみ方は人それぞれですから。
でも、もし少しでも私の行動に共感できる方がいらっしゃれば、どうかサイドマウントを試してみて欲しいです。
サイドマウントやテクニカルダイビングはダイビングに対する意識を変えてくれます。
そして、その可能性は無限に広がっています。
今回のお話しはいかがだったでしょうか?
ちょっと脱線しちゃいましたが、トレーニングダイビングの重要性をお伝えしたかったのです。
次回は、ではどのようなトレーニングダイビングを実施しているのか?
私が所属するTDCJ(テクニカルダイビングセンタージャパン)のトレーニングプログラムを例にお話したいと思います。
最近、ダイビングであちこち出かけるのはもとより、普段の街中を歩いているときでもバレンタインデーネタを探すようになりました。
そのうち「バレンタインデーの専門家になるのでは?」などと、つまらなくもちょっぴり魅力的な考えが頭をよぎります。
バレンタインデーダイバーという分けの解らない響きにも、なんとなくまんざらでない気がしてきました。
……どこに行くんだろう、俺?
では、また次回!!