普通のダイビングと何が違う?サイドマウントダイビングの具体的な注意点

前回もお話しましたが、メキシコのセノーテに行ってきました。もちろん、ダイビングをするためです!ちょっと肌寒かったですが、毎日エキサイティングなダイビングを満喫しました。

泊まった町はトゥルムという、こちらも素敵な町。メキシコらしい素朴な感じの中、とても華やいでいて居心地の良い所でした。

そうそう、メキシコは銀が有名らしく、お土産屋さんにはハートのアクセサリーがたくさんありました。まさにバレンタインプレゼントにピッタリですね!!

サイドマウントダイビング(提供:石井隆)

さて、今回はサイドマウントダイビングで注意しなければいけない点についてお話したいと思います。

エントリー・エキジットが楽だったり、水中で楽に泳げたり、狭い所に入ったりと楽しいことがいっぱいのサイドマウントダイビングですが、通常の装備(バックマウント)とは異なる注意点がいくつかあります。

特にコンフィグレーション(器材構成)の中にはダイビングの快適性は元より、安全に潜るために重要な部分もあります。注意点とその対処法についてお話しさせていただきますね。

タンクの取り付け

サイドマウントはタンクの付け方にさまざまな方法があります。
また、オープンウォーター環境であれば、テクニカル等のペネトレーション(内部侵入)ダイビングに比べて、そんなにシビアでなくても良いでしょう。

ただ、それでも安全とサイドマウントのメリットを生かすために注意しなければならない事があります。

海で時々、タンク上部をバンジーでなくクリップだけで止めているサイドマウントダイバーを見かけます。
バンジーの中には堅い物もあり、装着が非常に困難で、それよりもクリップで止めちゃえば簡単ですよね。

でも、その方法でタンクを装着するといくつかの問題があります。まず、クリップだけでタンクを止めるとタンクが固定できません。水中でぶら下がる状態になります。タンクが固定できないと体から離れているため、通常のサイドマウントよりも水中の抵抗が増します。これでは、サイドマウントのメリットが減ってしまいますよね。

またタンクが体から離れてしまうと、当然レギュレーターの1stステージも離れてしまい、その結果2ndステージも離れます。そうすると、うまくくわえることができず、またタンクが動く度に2ndステージが引っ張られる、なんてことに繋がります。最悪、2ndステージが口から外れてしまい、プチパニックになったり、溺れる可能性もあります。そのためにもレギュレーターの位置が動かない事は重要になります。

サイドマウントダイビング(提供:石井隆)

バルブがこのように下がると、海底や岩等にヒットして危険です

そして何より気をつけなければならないこと。

タンクをクリップだけで止めると、タンクを水平状態で維持するのが難しいでしょう。タンクを止める位置が前後で異なるのと、アルミタンクの場合、残圧が減るとタンクのお尻が上がります。タンクのお尻が上がると、タンクのバルブが下がりますよね。
そうなるとどうなるのか。

水中での抵抗が増えるのもそうですが、なにより危険なのはタンクバルブが岩や海底にヒットしやすくなります。特にサイドマウントは狭い所に入ったりするでしょう。その時に、真っ先にヒットするのはバルブ部分です。
これはあまりよろしくありません。

バルブの損傷もそうですが、ヨークバルブで潜ることが多いと思います。岩等にヒットするとバルブと1stの接合部がズレてエア漏れをしたり、最悪外れてしまうかもしれません。

サイドマウントでタンクの水平を意識して維持するのは、水中での抵抗を減らすと同時に、バルブ部を保護する意味もあります。

対策としては、多少面倒でもタンク上部をバンジーで止めましょう。もし、バンジー以外で止める場合も、タンクが常に体と並行になるようなコンフィグにするのが望ましいです。

ホース類の取り回し

サイドマウントは2つのレギュレーターを使用するため、ホースが通常のダイビングよりも多いです。また、ロングホースを使用する場合、ますますごちゃごちゃしちゃいますよね。

そこで、ホースはなるべく身体にフィットさせ、また余分なホースはしっかりバンジーを使い、タンクに留めます。この時、バンジーは丸い物ではなく、平たい物が良いでしょう。
(よく、新聞屋さんのカブ等で荷物をとめているゴムです。)

なぜなら、丸いとホースのホールド性が悪く、ホースが動きやすくなってしまいます。平たいゴムだと、しっかりホールドされ、また水中で使用中にゴムがズレにくいので、ホースは常にまとまっています。

私は古いタイヤのチューブを輪切りにして使っています。そして、タンクにホースを装着する際はなるべく広がらないようにコンパクトにまとめます。

通常の装備でもそうだと思いますが、ホースが広がったり、または残圧計がブラブラすると水中の障害物に引っかかったりしますし、何より見た目が格好よくありません(笑)。

また、2ndステージにはスイベル(ホースの取り付けに角度をつけるアダプターです)を使うのが効果的です。
レギュレーターホースがしっかり首にフィットし、ホースに引っ張られるような余分なストレスや、障害物に引っかかったり、他のダイバーに引っかかることもありません。

サイドマウントダイビング(提供:石井隆)

そして、何より大事なのが、エアの共有方法の確認。
いざバディにエアを供給しなければならない時にスムーズに2ndステージを渡せるか?
ホース同士が絡んでいないか?
相手に2ndステージを渡した時に、自分のエアはしっかり確保できるか?
などなど、とても重要です。

サイドマウントはダイビング中に何度か2ndステージを交換します。そのため、気をつけないと首の後ろでホースが気づかぬうちにこんがらがっている、なんてこともよくあります。

そして、こんがらがっている時に、もしエアの供給を求められたら……。

スムーズにエア共有をできないどころか、自分の2ndも引っ張られて外れてしまう可能性もあります。
そのためにも、2ndを交換する際は、しっかりと自分がどちらの2ndを吸っているかの意識と、首の後ろのホースがどのようになっているか常に考える必要があります。必要であれば常に触って確認するのも良いでしょう。

または、レギュレーターホース同士が絡まないようにコンフィグを組み立てるのも一つの手です。

私は左のタンクのレギュレーターは首から廻し、右のレギュレーターは下から咥えるようにしています。右の2ndステージはゴムのネックレスであご下にぶら下げています。もちろん、ホースの余分な部分はしっかりタンクにホールドしています。
これだと、首の後ろでは絡みません。

BCの操作

以前もお話させていただきましたが、サイドマウントでの浮力のコントロールは水平姿勢が理想的です。サイドマウント用のBCの多くは、水平姿勢での使用を前提とされている物が多く、特に空気の排気にはダンプバルブを用いる事が多いからです。

このダンプバルブでの排気。ちょっと慣れないとうまく空気が抜けない事があります。ダンプバルブの位置にうまく空気が集まるように姿勢をコントロールしなければなりません。

また、ダンプバルブのスイッチ(ひも)がバンジーやハーネス、ポーチやリール等の装着物に引っかかり、うまく捜すことができずに空気が抜けない、そのまま吹き上がり……なんてこともあります。

給気も気をつけなければなりません。

通常のダイビングと異なり、タンクを後から着けます。その際にインフレーターホースに中圧ホースを忘れることがあります。もし、エントリーしてそのまま急潜降、その時にBCに給気ができずにそのまま落下、なんてことがあるとちょっと怖いですよね。

サイドマウントダイビング(提供:石井隆)

解決策としては、エントリーし、タンクを装着した後に、BCの給気とダンプバルブの排気の確認をする習慣をつけると良いでしょう。これだけで給排気のトラブルを防ぐことができます。

サイドマウント用BCはインフレーターの位置やダンプバルブの位置、給排気方法がさまざまです。

通常のバックマウウントと同じ位置にインフレーターホースがあるタイプは、給排気方法が普段のダイビングをさほど変わらないので、使用方法では違和感がないでしょうが、肩にインフレーターホースがあると、ホースの取り回しに注意しないと、ホース廻りがごちゃごちゃになる場合があります。
どんな器材を使うかは、サイドマウントインストラクターに綿密に相談しましょう。

サイドマウントの泳ぎ方

中性浮力が維持できて水平姿勢が取れるようになると、サイドマウントダイビングは非常に楽になります。

水中での抵抗がバックマウントよりも減るため、移動は非常に楽になります。フィンキック数も少なくなり、空気の消費も抑えられるでしょう。

ただ、すべてのサイドマウントダイバーが完璧な中性浮力をしなければならないわけではありません。先に言った、BCの操作が問題なければ、そこまで神経質になる必要もありません。そこは個人の楽しめる範囲で構わないと思います。

ただ、もし狭い所をくぐりたいとか、ちょっと岩陰や岩穴に入りたいとかの欲求があれば十分注意しましょう。

サイドマウントは50cmほどの隙間であればくぐり抜けることができます。でも、それは前記した注意事項に対処でき、自分自身のスキルを判断するのが望ましいです。もし、少しでも不安な要素があれば絶対に止めましょう。

サイドマウントダイビング(提供:石井隆)

そして本格的な水中洞窟や沈船の中には絶対に入らないでください。

もし、サイドマウントで内部侵入(ペネトレーション)ダイビングをしたいのであれば、しっかりとちゃんとしたトレーニングを受けましょう。

サイドマウントは素晴らしい可能性を秘めています。ですが、しっかりと段階的にステップアップするべきです。

海外では、サイドマウントを始めてから、ちゃんとしたトレーニングを受けないでケーブやレックに侵入し、死亡する事故が起きているそうです。日本ではそうならないようにしたいですね。

さていかがだったでしょうか?
ざっとですがサイドマウントダイビング特有の注意点をお話しさせていただきました。

ダイビングの楽しみ方は人それぞれ、もちろんサイドマウントも同様です。何もそこまでスタイルやスキル、器材にこだわらなくても、と思われるかもしれません。ですが、今回お話させていただいたことはサイドマウントのメリットを生かすのにとても大事なことです。

また、安全にダイビンスするためにもとても重要。より安全により幅広く、サイドマウントダイビングを楽しんでもらいたいと思います。

サイドマウントダイビング(提供:石井隆)

前回書きましたが、本当にメキシコでもバレンタインネタを真剣に考えていました……。そこで気づいたのですが、メキシコの人は日本ほどバレンタインを意識していないこと。
「はあ?何それ?」「あ、そんなのもあったね」てな感じでした。
あ、もしかしたらこれだけバレンタイン、バレンタインと季節関わらず言っているのは私だけ??

ではまた次回!!

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writer
PROFILE
40近くになり、家族で行ったグアム旅行、そこで嫁さんに体験ダイビングを勧められ初ダイビング。
その時の担当インストラクターに「ダイビングうまいねぇ。始めてみれば?」と言われてその気になる。

帰国後、地元のダイビングショップの門を叩き、ダイバーとなる。
この時40歳。

その後、調子に乗ってインストラクターまで一気に取得、

大手ダイビングショップで非常勤インストラクターとして勤務するも、もっとダイビングは自由で良いのでは?と考え始め、そんな中テクニカルダイビングに出会う。

自分の求めていたのはこれかもしれないと勘違いし、IANTDの小さな巨人・豊田聡氏(現PADIテクニカルダイビングアドバイザー)からテクニカルダイビングを教わる。

近年、サイドマウントダイビングを知り、その自由なスタイルに魅了され、ドンドン妄想はエスカレート。

終いにはサイドマウントを極めたいと、これまた大きな勘違いをし、オーシャナ執筆でおなじみの夜の帝王・田原浩一氏に「サイドマウントがうまくなりたいから教えてください!」と無茶な要求でケーブ系のトレーニングを始め、現在に至る。

 そんな訳でダイビング経験年数は6年(2013年11月現在)、経験本数は1500本(2013年12月現在)のお調子者若輩ダイバーです。

私は他のオーシャナ執筆者の方々のような著名人ではありません。
一人のダイバーの目線でサイドマウントの魅力をお伝えできればと思っています。

より安全に、より自由に、より楽しく。
レクリエーションサイドマウントダイビングはその可能性を秘めていると信じています。

是非、皆様の生暖かい目で今後もご支援いただければ幸いです。

主な資格等
■IANTD Normoxic Trimix インストラクター
■IANTD Trimix CCR Diver
■IANTD Trimix Diver
■IANTD Technical Wreck Diver
■PADI OWSIインストラクター MSDT
■PADI テックサイドマウントインストラクター
■PADI テックディープインストラクター
■日本テレビ系「いのちのいろいろ」映像提供多数
■小田原ダイビングスクール非常勤インストラクター
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