岩手の今を潜る。~爽やかな草原と津波の爪痕と~
東日本大震災からおよそ1年半、「ダイビングショップRIAS」のクマちゃんこと佐藤寛志さんのナビゲートで、岩手県大船渡市の海へ。
震災直後、ポイントとなる「浪板海岸」は瓦礫で埋まっていましたが、くまちゃんが理事長を務める「三陸ボランティアダイバーズ」の尽力ですっかりきれいになり、いよいよ本格的に潜れるようになりました。
ビーチからエントリーし、しばらく沖へ泳ぐと、そこに広がるのは海の草原。
前回潜った3月にはところどころに生えている程度だったアマモは、水温の上がる6月ごろから爆発的に増え、今ではすっかり草原のよう。
くまちゃんによれば、震災後の方がむしろ増え、「津波で水中がかき混ぜられ、栄養分豊富な水が入ってきたことや流れ着いたことが原因ではないか」とのことでした。
「アマモが生育するには、水質や底質が清浄で、人工構造物によって海岸線や浅海域がかく乱されていないことが必要なため、海岸の指標生物ともされる」ということですから、瓦礫撤去の成果とも言えるのかもしれません。
アマモの草原は、格好の魚の隠れ家。
アジが取り巻き、東北らしくクダヤガラがアマモに隠れるように群れています。
爽やかな夏の東北の海を楽しんでいると、ここが津波のあった海であることをすっかり忘れてしまいますが、防波堤を挟んで左へ旋回すると、津波の痕跡がそこかしこに。
堤防を挟んで、豊饒の海と津波の痕跡が残る海。
ひとつの海で、東北の2つの顔を見る思いでした。
今でも、瓦礫撤去で潜ることが8割のクマちゃんですが、ファンダイバーも徐々に増えているそうです。
ダイバーにできることは潜ること。
復興作業を続けていくことも大事ですが、楽しみに潜りに行くことも、前に進むためには、とても大事なこと。
夏から秋にかけて、岩手の海は、透明度が上がり、秋はアイナメ、クジメの抱卵シーン、冬にはカジカの抱卵シーンを見ることができるベストシーズン。
さらに、サケの遡上や元気な海藻の草原と、見どころいっぱいの岩手の海に、瓦礫撤去のお手伝いで潜るもあり、ただ楽しむのもあり、ぜひ足を運んでみてください。
※詳細は、むらいさち撮影のWEBマガジンで後ほどご紹介します。