伊豆大島発の新ダイビングスタイル“ジオダイブ”の魅力とは

大島南部のビーチポイント・トウシキの柱状節理の壁
“ジオダイブ”なんて言葉聞いたことないですよね。
それもそのはず、“ジオダイブ”は伊豆大島南部で発祥したはかりのダイビングスタイル。
※“ジオ=geo-”とはギリシア語で地球、地理、土地などを表す言葉です。
ではなぜ“ジオダイブ”というのか、それはどんなダイビングスタイルなのか、ジオダイブの誕生の瞬間をご紹介したいと思います。
海を知るには、陸を知れ、マグマを知れ、山を知れ。
ジオダイブができるのは、東京から120km南下した伊豆大島。
大島の中でも南部こそが、ジオダイブには最適です。
伊豆大島のダイビングポイントは大きく分けて北部と南部に分けられます。
今回潜った南部の「トウシキ」は、ビーチポイントにも関わらず、エントリーから5分以内に巨大なドロップオフが待っています。
ボトムは25mほどあり、秋の浜などが有名な北部のポイントとはだいぶ雰囲気の違ったダイナミックな地形を楽しむダイビングスタイル。
なぜこんな地形になったのか、南部にダイビングショップを構えるシーサウンドの小川修作さんは「陸を見ればわかります」と言います。
陸からはじまるジオダイブ
ブリーフィングは、波打ち際ではなく地層の上で
伊豆大島南部に初めて潜るということもあり、ブリーフィングを詳しくしてほしいとリクエストしたところ、連れてこられたのはエントリーポイントではなく、崖の上。
え……と?
しかも「まずは、あそこを見てください」と指さされたのは大島の象徴でもある三原山。

これは見晴台からの三原山の風景です
「三原山が活火山だというのはご存知ですか? 大島はいまだに噴火活動中です。これから潜るのはトウシキというビーチポイントですが、そこの水中を説明するにはまず山を知らないと始まらないんですよ。」
はい。

日本の活火山の分布図。気象庁ウェブサイトより。2014年11月現在、日本には110の活火山があります
「簡単に言うと、トウシキはエントリーすぐでドロップオフになっているので、ボトムまで降りて壁を見上げるとギザギザになっているのがわかります。
私たち南部のガイドはそれを“柱状節理の壁”と呼んでいます。迫力満点ですよ!」
なんでギザギザなんですか?
「よくぞ聞いてくれました。三原山が噴火する度に飛び出たマグマは海に流れ込むのですが、そのマグマは冷やされると体積が収縮されるので、ギザギザになって固まるんです。今私たちが立っている崖と地層、ギザギザしているじゃないですか。これがそのまま海に沈んでいるような感じです。実際海に入ってみればわかるので、行きましょうか!」
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崖の上で地層と海を見ながらブリーフィングをしてくれました。写真右上がエントリーポイントとタイドプールです
“崖の上のブリーフィング”は柱状節理の説明にとどまらず、海の中に流れたマグマはその後どうなっていくのか、今の大島がどうやってできたのかなど、大島の歴史についても説明してくれ、ブリーフィング終了時点で1本潜り終えたような満足感。
「陸からははじまるジオダイブ」なんてキャッチが浮かんできてしまうほど、お世辞でもなんでもなく、こんなに楽しいブリーフィングを受けたのは初めて。
実は、私たちがよく見ている“水中アーチ”も噴火とマグマが関係しているのだそう。
これについては年始公開予定の伊豆大島ウェブマガジンにて詳しく。
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これは北部・野田浜の大アーチです
陸を知っているだけで海が100倍楽しい。
新ダイビングスタイル“ジオダイブ”を初体感!
トウシキのエントリー口はお世辞にも楽とは言えませんでしたが(底のしっかりとしたブーツは必須です)、それでも「マグマが流れたことでできたポイントです」とブリーフィングを受けていたので、「これもマグマが固まってできた通り道のか、ならば仕方ないっていうか、むしろ感動!」
潜る前から大島のジオを踏みしめて、エントリー口についた頃には早く潜りたくてソワソワ。
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ごつごつした岩の上を歩いて水中へ。エントリー口の後ろにはブリーフィング時に登っていた地層断面が見えます
マグマが固まってできたタイドプール脇からエントリーし、ガイドロープ伝いに水深5mほどまで行くと水路が登場します。
その水路も抜けると、眼下に広がるのはダイナミックにスコンと落ちたドロップオフ。
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THE南部の海!といった雰囲気
ドロップオフをボトムまで降り、小川さんの言うように壁をよく見てみると、本当にギザギザ!
まるでアコーディオンです。
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このギザギザの壁を南部のガイドは柱状節理の壁と言います
魚がいるとかいないとか、透明度が云々とかそんなことどうでもよくなるほどの大迫力(大島はブルーウォーターで、透明度も20m~30mほどあるのでそもそも文句なしだったんですけどね)。
水中で陸、しかも山のことなんて考えたこともなかったので、とても斬新なダイビングでした。
小川さんも「僕を含め、南部のガイドは陸も案内できる大島公認のネーチャーガイドなのですが、やはり陸のことを知るにつれて海の見方も変わってきたし、ひいては、大島の見方が変わりました。今はもっと知りたいって思うし、もっとこの“ジオダイビング”スタイルを知ってもらいたいって思います。本当に楽しいので!」と話していました。
さらに、「大島の火山研究をしている大島先生という方がいるのですが、彼を海の中に連れて行って、柱状節理やほかのものも見てもらい、“なんでこれがこうなっているのか”という僕らの疑問を解決してもらうのが、今一番やりたいことです」と言っていたのですが、私が気になったのは大島先生の名字。
大島に詳しい方だから愛称で大島先生と呼んでいるのかと思ったら本名が大島治先生らしくで、大島先生、大変失礼いたしました。
なお、大島治先生は火山の研究をされている著名な方です。
ぜひとも海の中から火山を見ていただきたいと思います。
*
余談ですが、北部と南部の海の違いは、大島の下を走るプレートに由来しており、噴火を繰り返しながら形成されていった大島の地形・地層によるものがほとんど。
人が多く住んでいる元町エリアを含む北部には、山はなくなだらかなので、人が住みやすいことから町が発展していきました。
従って、北部にある「秋の浜」などの有名ポイントはビーチエントリーで、海の中もドロップオフでなく、なだらかな砂地やゴロタが多いです。
やはり、陸と海は繋がっているんですね。
■撮影:中村卓哉
また、伊豆大島への船代が格安になる「伊豆大島往復きっぷ」が好評につき12月26日まで期間延長。
このお得な機会にぜひ大島へ!