続く水中瓦礫撤去の先に見えてきたもの ~震災から4年の三陸ボランティアダイバーズ~
東日本大震災から4年。東北に来ています。
ダイバーによる復興支援活動の現状や展望などを現地からレポートします。
まずは、岩手県を拠点とする「三陸ボランティアダイバーズ」のくまちゃんこと、佐藤寛志さんにお話を聞きつつ、今日の活動に同行させていただきました。
終わらない瓦礫撤去という現実
震災直後、ダイバーということを活かして、水中の瓦礫撤去を行なってきた三ボラ(“三陸ボランティアダイバーズ”の略)。
大震災から4年が経ち、「まだ瓦礫なんてあるの?」と言う人もいますが、実際のところ、瓦礫撤去作業はまだ行われています。
くまちゃん
まだまだ手つかずの海がたくさんあって、地域によって差があるんです。
さすがに、最近の水温3~5度の海では週末に作業があるかどうかですが、もう少し水温が高い時には、平日を含んでほぼ毎週のように撤去作業を行なっています。
4年の成果は大きく、震災直後から積極的に三ボラと協力体制を築いてきた地域の漁場では、ほぼ瓦礫が取り除かれ、今では養殖や漁が盛んに行なわれるようになってきています。
「震災直後は、海に瓦礫があると船を出すのも怖いし、瓦礫がからまって養殖もできないんだ。くまさんたちと一緒に瓦礫撤去を積極的に行なってきたので、いち早く漁を再開することができた。おかげさまで、去年からは震災前の漁獲高に戻ったんだ」と言うのは、恋しの浜の漁師・細谷さん。
保守的な土地柄、震災前はダイバー=密漁というイメージがあって、なかなかダイバーの活動に理解のない漁師も多かったのですが、ダイバーとの活動で復興した周りの漁場を見て、今になってのリクエストも少なくないとのこと。
復興で得た信頼で、振興のステージへ
カキの養殖を営む漁師の佐川さんの印象的な言葉。
「震災で失ったものは大きいが、新しく生まれたものもある」
そのひとつが三ボラと漁師たちとの絆。
瓦礫撤去を通じて信頼関係を築いたダイバーは、今では漁の協力も行っています。
例えば、養殖のために、ワカメの根元部分の胞子の入ったメカブや種苗となる天然ボヤの採取をしたり、アワビの稚貝を放流したりなど、ダイバーにしかできないサポートを行っています。
さらに、そんな良好な関係を象徴しているのが、相次ぐ、ダイビングポイントの開放。
それこそ以前はダイバー=密漁者だったのが、今では新たにダイビングポイントが開放され、ダイバーにとても協力的です。
くまちゃん
単にダイバーが密漁者に見られなくなって良かったね、で終わるのではなく、せっかく築いた関係を生かして、ダイバーに還元したり、漁師さんと地域を振興できるような活動をしてきたいです。
三ボラの未来とダイバーにできること
率直に、三ボラの活動にゴール、終わりはあるのでしょうか?
くまちゃん
まずは、瓦礫の撤去状況がひとつの目安になると思います。
漁師さんが納得して漁ができる漁場になり、漁業再開にメドが経てば、復興支援という形にひとつの終わりが来るかもしれません。
でも、せっかく築いてきた関係をゼロにするのはもったいない。
いずれは、復興支援から地域振興と役割を変えて、新たなステージで活動をしていければと思っています。
これからダイバーたちにできることはありますか?
くまちゃん
やはり、瓦礫撤去はまだまだ必要です。
少なくともあと3~5年はかかる気がしています。
くまちゃん
ですので、ダイバーの力はまだまだ必要なのですが、しっかり潜れるダイバーが必要とされてきます。
これまでは、とにかくやってしまえ、という勢いも大事でしたが、これからは安全が確保された上で、計画的な作業が求められますし、今後の他の地域の災害への試金石となる視点も大事かなと思います。
そういう意味では、寺山さんたちが立ち上げるNPOでのダイバーによる災害対策というアイデアにも注目しています。
また、実際の作業ができなくても、写真が撮れる人は、どうやって海が復興していくかの過程を記録し、みんなに伝えることも大事だと思っています。
そうすることによって、連携のノウハウなど、他に災害にも活かせることが多くあると思うんです。
ファンダイビングで楽しみながら、“今の三陸”を伝えてもらうことも大事なことです。
三陸ボランティアダイバーズの5年目が始まります。