たったの1日でダンゴウオをどれだけ撮れるのか? ~水中カメラマン・中村卓哉はじめての田後~
(撮影/中村卓哉)
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今回、岩美町・田後(たじり)の取材では、“ジオダイブ”がテーマ。
迫力あるワイドシーンや初公開ポイントの紹介をするはずだったが、あいにくの海況不良……。
初日から潜れるダイビングポイントが近場に限られてしまった。
そこで、田後の海を初めて潜る、中村卓哉カメラマンに、「このダンゴウオの海とも呼ばれる田後で、今日1日でどれだけダンゴウオが撮れるかやってみよう!」と相成った。
1日でこれだけダンゴウオが撮れました
エンジェルリング(天使の輪)のダンゴウオ
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赤ちゃん(幼魚)のダンゴウオの頭部には輪っかのような模様がある。
誰が言ったか、まるで天使の輪のようだと、今やダイバーに大人気。
ペアのダンゴウオ
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1つの海藻に複数個体が当たり前。
ペアのダンゴウオもいろんなアングルから狙える。
フライングダンゴウオ
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撮影しているとプレッシャーを感じるのか、またはライトを嫌がってか、しばしば海藻から離れて泳ぐダンゴウオが見られる。
泳ぐというより流れに漂うといった感じだが、観察していると、結構な確率で元の海藻に戻って来る。
ダンゴ3兄弟
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ダンゴウオといえば、やっぱり狙いたいですよね(笑)。
「ダンゴ3兄弟なんて、若い人は知らないかな」と思いきや、今、再びブレークの兆しがあるんだとか。
ストーリーを感じさせるダンゴウオ
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中村カメラマンの撮る感性と受け取る側の感性が生み出す、物語を感じさせるダンゴウオ入りの写真。
絵が似がちになるダンゴウオの写真では、背景の処理や構図にセンスが出る。
緑のダンゴウオ……ん?
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一見、ダンゴウオに見えるが、スナビクニン。
ダンゴウオと同じように海藻の上で見つかる日本海の人気者。
ダンゴウオより尾が長く、目が怖い……(主観)。
出た! 大人のダンゴウオ
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この時期(3~4月ごろ)はベビーラッシュで、日中、大人(成魚)はほとんど見られない。
夜になると姿を現すことが多いのでナイトダイビングで狙うが、やはりこの時期は珍しいという。
ゴールデンウィークごろからは、赤ちゃんよりバリエーション豊富な大人のダンゴウオがそこかしこで見られるようになるので、究極のダンゴ三昧のナイトダイビングが楽しめる。
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日中、2~3ミリの赤ちゃんダンゴウオばかり見ていたので、ナイトダイビングで見たダンゴウオは指でさされても一瞬わからないほど大きく見えた。
ピンポン玉くらいあるように見えたが、実際は指の第一関節くらいの大きさ。
それでも威風堂々、立派な姿。
いかがでしょうか?
たったの1日、しかも1つの個体に粘りながら、これだけのダンゴウオ三昧。
「こんな数のダンゴウオ、見たことないよ」
「初めて自分でダンゴウオを見つけることができた。自分で見つけた時は嬉しいね」
「じっくり対峙するとそれぞれに性格があることがわかり、撮りやすい個体を選んだりしていたけど、選べるってこと自体が贅沢だよね」
初めてダンゴウオの海を体感した中村カメラマンも驚きの1日になったようだ。
また、ワイド狙いのはずだったが、ダンゴウオの海という魅力を改めて知ることとなった。
「陸上の地形が水中にも続いている」というジオサイトの魅力は伝えられなかったが、前回の記事で「ブルーライン田後」のガイド・ザキさん(山崎英治)が、「特別な地形により、ダンゴウオの生息環境が整っている」という意味でのジオサイトの魅力は伝わったはずだ。
中村カメラマンが辺野古をテーマに10年撮り続けて発表した写真集「わすれたくない海のこと」 をめくると、海の中だけでなく、森の写真も多い。
すべてがつながり、生態系、そして地球ができているというメッセージだろう。
ジオサイトにいるダンゴウオ。
ダンゴウオがいるジオサイト。
陸と海はつながっているから、海だけを見ていては、海が見えてこない。
ジオサイトの地形に注目することにより、ダンゴウオもまた違った見え方がしてくる。
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「地元の海でダイビングショップを開きたい!」との思いから、地元出身の山崎英治さんが日本海に面する鳥取県の田後にオープンした現地ダイビングサービス。オープンから7年目となり、ダウンゴウオをはじめ、生物のデータもそろってきて、多岐なリクエストに応えてくれる。日本海の撮影ガイドも多く引き受け、NHK取材班とはタツノオトシゴの貴重な交接シーンの撮影にも成功。施設、港、ダイビングポイントとコンパクトにまとまっており、ダイバーが過ごしやすい施設も整っているので、一日を快適に過ごすことができるだろう。
ブルーライン田後
〒681-0071鳥取県岩美郡岩美町田後37-1
TEL&FAX 0857-72-8520
http://3seens.com/
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