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“ジオサイト”鳥取・田後の海でダンゴウオ三昧(第4回)

中村卓哉カメラマンに聞く! マクロ撮影のコツと機材 ~田後フォトギャラリー~閲覧無制限

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現地からレポート

ダンゴウオ

先日、たったの1日でバリエーション豊富なダンゴウオの写真を撮影した中村卓哉カメラマン。

ダンゴウオの撮影テクニックや機材などについて中村卓哉カメラマンに聞いた。

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まず、ダンゴウオを撮影するコツというか留意点を教えてください。

中村

ダンゴウオに限らず、やみくもにシャッターを切るのではなく、構図の基本を知っておくだけでも撮影に幅が出ます。

よくお伝えしているのが“ドッグアイ”というアングル。

マクロ写真を撮ろうと思うと、無理のない自然な体勢ということもあり、つい俯瞰で(上から)撮りがちです。

しかし、目線を低く(ドッグアイ)、被写体の位置まで下げると、ダンゴウオの表情が出てきますし、背景も抜けてすっきりさせることができます。

俯瞰で撮るよりピンが合いづらいのですが、撮りやすい個体を探して背景をボカすと柔らかい写真になります。
逆に、俯瞰で撮ると後ろの海藻の質感が出てしまいます。

ダンゴウオの可愛らしさを表現するなら、プリクラのように、ライティングは正面から当て、光を回して飛ばしてしまう“ゆるふわ写真”がオススメ。

ダンゴウオ

口が開く瞬間をとらえて、笑っているように見える“ゆるふわ写真”

ダンゴウオ

逆に、絞って背景をブラックバックにして、光の当たり方、影を活かしたシャープな印象のダンゴウオ。中村カメラマンいわく“バリカタ写真”

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ドッグアイのアングルと、いわゆる“バードアイ”、つまり俯瞰のアングルを目的やアイデアによって使分けるということですね。

中村

そうですね。
例えば、数が多いということを表現するなら、ドッグアイだとピントが合う範囲が狭いので、俯瞰で撮影した方がわかりやすいですよね。

天使の輪つきのダンゴウオ

中村

あとは、マクロ写真は特に、「寄ったところからどう引くかに個性が出る」と思います。

とにかく寄って撮る写真は同じような写真になりがちですが、そこからいかに引いて、写真の空間を使えるかを考えるのかが大事。

少しの引きの工夫で、ただのダンゴウオ写真に物語が生まれてきます。

天使の輪つきのダンゴウオ

天使の輪つきのダンゴウオ

中村

とにかく、ドッグアイ、バードアイ、寄り、引きの4つの基本アングルを意識して撮ってみると、撮影もおもしろくなってくるのではないでしょうか。

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コンデジで撮影する人は、機能的に制限がありますが、どんな点に気をつけるとよいでしょうか?

中村

コンデジだと寄れ過ぎてフラッシュの光がうまく当たらないことがあります。ですので、少し離れたところからピントを合わせることに集中するとよいでしょう。
絞りの調整ができるなら、開放気味にしてゆるふわの写真を撮ってみてはいかがでしょうか。

外付けのストロボがあるだけでも撮影の幅は格段に広がりますし、やっぱりダンゴウオを撮るならクローズアップレンズは付けた方がよいですね。

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今回、ダンゴウオの幼魚という2~3㎜の被写体ということでしたが、どんな機材を使ったのでしょうか?

中村

ダンゴウオの幼魚を撮影するために、今回はNauticam(ノーチカム)製の外付マクロコンバージョンレンズSMC-1をはじめて使用しました。

従来、私が使っていた外付けのマクロレンズはピントが固定になってしまったり、倍率は大きくても周辺が大きく流れてしまうという、悩ましいものばかりでした。

しかしこのSMC-1は倍率が高いのにワーキングディスタンス(編注: カメラのレンズの先端から被写体までの距離)の幅が広く、撮影距離をある程度なら変えることができます。

水中カメラ

中村

水温11度の揺れる海中で、ゆらゆらしている海藻の上で動く2mmのダンゴウオの幼魚に対してアプローチするわけです。
大きなカメラを置きピンで、しかも数ミリ間隔で動かしピントを探るのはとても至難の技。

SMC-1のように倍率が高くてもフォーカス位置をハウジング側のダイヤルで変えることができるだけでかなりのストレス軽減になりました。

画質においても、最短まで寄っても周辺が流れたりすることもなく隅々までキレがよくシャープな印象です。

ダンゴウオ

中村

先ほども言ったように、マクロ撮影は少し引いたところに個性が出ると私は考えているので、倍率固定の写真しか撮影できないレンズは使い物になりません。
その点、このSMC-1は被写体を画面の端に置いたり絵作りの幅もかなり広がる。

天使の輪つきのダンゴウオ

中村

正直、このレンズ無しには今回の撮影の成功は絶対にありませんでした。
中村卓哉カメラマンが使用したレンズ

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田後の海はどうでしたか? 海況はあまりよくなくて外洋にはいけませんでしたけど……。

中村

どんな海でも、まずは俯瞰した視点で海を見つめてから、そこに住む生物を見つめたいのですが、まあ、海況ばっかりは仕方ありません。
気持ちを切り替えて、ワイドは捨ててマクロ撮影に集中しました。

マクロ生物という視点でみると、そもそも日本海自体そんなに潜っていないのですが、寒い海ほど変わった生物がいますよね。

そういう意味では、スナビクニンはなかなか見る機会がなく、奇妙な容姿がおもしろかったですね。

スナビクニン

中村

それと、ナイトダイビングでは、エイリアンのような被写体がおもしろかった。
浮遊系もまたやってみたいです。

エイリアンのようなウミウシ

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名物のダンゴウオはどうでしたか?

中村

海況不良でワイド撮影が困難になった時、「1日でどれだけダンゴウオを撮れるかやろう!」と無茶ぶりされて(笑)、最初はどうなるかと思いましたが、逆に田後の底力を知ることができました。

こんな数のダンゴウオは見たことありませんし、撮影しやすいダンゴウオを選べるなんて贅沢は初めて。
自分で見つけられたのも初めてで率直に嬉しかったです。

それと、ウミウシの多さにびっくりしました。

普段、あまり動かない被写体は撮らないのですが、じっくり撮ってみると本当に美しい。
皮弁がユラユラして、意外と撮影が難しかったです。

ウミウシはゆるふわ写真ではなく、ディテールや質感を出した方がしっくり来たので、バリカタ写真にしました。

キイロウミコチョウ

キイロウミコチョウ

中村

特にミノウミウシはバリエーションがあって美しいですね。

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イナバミノウミウシ

イナバミノウミウシ

ゴシキミノウミウシ

ゴシキミノウミウシ

中村

ギンポも印象的でした。

ゆるふわ写真でも可愛いのでしょうが、陰や質感を出すことによってドラマティックに撮ることを心がけました。

ギンポ

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次は田後の海でどんな写真を撮りたいですか?

中村

今回だけじゃとてもじゃないですが、撮り切れていません。
ナイトダイビングで親ダンゴのカラーバリエーションを撮ってみたいですし、定置網ダイブもしてみたい。

それに、地球を感じるようなダイナミックな地形やサクラダイが群れる根にも行ってみたい。

とにかく、また、ぜひ撮りたい海です。

使用機材

カメラ ニコンD810
レンズ ニコンAF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED
クローズアップレンズ Nauticam NA スーパーマクロコンバージョンレンズ SMC-1
ハウジング SEA&SEA MDX-D810
ストロボ SEA&SEA YS-D2 ×2
ライト フィッシュアイFIX NEO 1500 DX SWR/RGBLUE SYSTEM02 ×2
タツノオトシゴ

タツノオトシゴ

ヒメイカ

ヒメイカ

アオウミウシ

アオウミウシ

アナハゼ(ダンゴウオの天敵)

アナハゼ(ダンゴウオの天敵)

マツカサウオ

マツカサウオ

ヤリイカの卵

ヤリイカの卵

ミドリイソギンチャク

ミドリイソギンチャク

ミノウミウシの仲間

ミノウミウシの仲間

カリヤウミウシ

カリヤウミウシ

アミメハギ

アミメハギ

チャガラ

チャガラ

アミ

アミ

中村

ヨウジウオ

ヨウジウオ

ケヤリ

ケヤリ

スナビクニンとダンゴウオ

スナビクニンとダンゴウオ

ヤドカリ

ヤドカリ

コケギンポ

コケギンポ

(撮影/中村卓哉)

ブルーライン田後

「地元の海でダイビングショップを開きたい!」との思いから、地元出身の山崎英治さんが日本海に面する鳥取県の田後にオープンした現地ダイビングサービス。オープンから7年目となり、ダウンゴウオをはじめ、生物のデータもそろってきて、多岐なリクエストに応えてくれる。日本海の撮影ガイドも多く引き受け、NHK取材班とはタツノオトシゴの貴重な交接シーンの撮影にも成功。施設、港、ダイビングポイントとコンパクトにまとまっており、ダイバーが過ごしやすい施設も整っているので、一日を快適に過ごすことができるだろう。

ブルーライン田後
〒681-0071鳥取県岩美郡岩美町田後37-1
TEL&FAX 0857-72-8520
http://3seens.com/

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