セールフィッシュスイム。2012年元旦から60匹の群れ

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メキシコのバショウカジキスイム(撮影:越智隆治)

昨日食べたマヒマヒのセビーチェのせいなのか、チリを食べ過ぎたのか、それとも、クラブスープがいけなかったのか、夜、吐き気と下痢に見舞われた。

まったく眠ることもできず、トイレに籠りっきり。吐き気だけは我慢してどうにか下痢だけで、身体の中のものを全部出してしまおうとした。

この日も朝6時出発。風は昨日よりも強い。身体に力が入らなくて、正直、海に出たく無いくらい辛い。僕の他に何人かも、下痢になっていたようだが、自分程酷くは無いようだった。

辛い身体で踏ん張りながら、ゲストやクルーに「Happy New Year !」と弱々しく挨拶するも、まったくhappy じゃなかった。

船に乗り込むなり、マットにツップして寝かしてもらった。しかし、出発早々に、高い波を受けて、船は激しく上下した。おかげで、胃の中がかき混ぜられて、我慢していた物を一気に吐き出した。

胸のむかつきは、おかげですっきりした。とは言っても、下痢と嘔吐で身体の水分を出しまくったせいもあり、身体のだるさは、変わらない。

海は荒れているけど、天気だけは良い。初日の出のご来光に、「どうかお願いします」と弱々しく手を合わせた。何を「お願いします」だったのか、自分でもはっきりしなかった。

その後も、まったく鳥山も見つからない悶々とした時間を過ごす。「今日ももしかしたら、ダメなのかな〜」そういう弱気な気持ちが沸き上がるのも、体調の悪さのせいだった。

しかし、お昼になって、状況が一転した。太陽の日差しを浴びながら、ほとんど眠っていた僕に、スキッパーのロヘリオが「タカ!セールフィッシュだ!用意しろ!」と声をかけ、前方を指差した。そこには、1隻のフィッシングボートが。「あの船のところにいるの?」と訪ねると、「そうだ、用意しろ!」と再度答える。「何匹くらいいるの?」との質問に、「アニマルは、数十匹匹だそうだ」との答え。

「やった!」皆にも安堵と緊張の表情が伺えた。自分は何度も入っているからともかく、初めての人には、やっぱり「刺されないのか」という心配が、しばらくの間は、つきまとう。

ボートの縁に、カメラを持って、待機してロヘリオの指示を待つ。グンカンドリの鳥山が、頻繁に水面に接近して、バショウカジキに突き上げられたイワシの群れにアタックをしかける。その下には、バショウカジキの背びれや吻が、時折水面から顔をのぞかせていた。

「今だ!、あの鳥山に向かって泳げ!」ロヘリオの声とともに、皆と一緒に海中に転げ込む。最初は何も見えない。しかし、鳥山めがけて移動していくと、うっすらとバショウカジキたちの姿が見え始める。1匹、2匹、3匹、4匹・・・・・10匹、20匹。30匹、40匹、50匹!!その辺で数えるのを止めてしまった。間違いなく、60匹以上はいる。

皆も一緒について来るが、今回の群れは、その場でほとんど止まることなく、移動を続けた。病み上がり?否、いまだに病んでいる身体でそれに着いて行くのは、相当に辛かった。

バショウカジキたちは、捕食を繰り返し、イワシ玉は徐々に小さくなって行った。しかし、小さくなっていけばいくほど、その場から動かなくなるはず。という僕らの予想に反して、最後まで移動を続けたために、落ち着いて撮影ができなかったことが悔やまれる。それでも、明日を最後に、帰国するゲストも一人いるし、これで、1週目のメンバーは全員が水中でバショウカジキの群れに遭遇することができた。

スイム時間はトータルで1時間半くらい。やっとロヘリオたちと笑顔で握手をすることができた。
海から戻ってきて、自分は完全にダウンした。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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