フリーダイビング大会「Vertical Blue2021(バーチカルブルー2021)」(第3回)

フリーダイバー・岡本美鈴がついに100m達成!多くの思いとともに潜り“夢の深度”へ

世界最高峰のフリーダイビング大会Vertical Blue2021 (バーチカルブルー:以下、VB)」が2021年7月23日(金)に幕を閉じた。世界記録が続出し、日本代表のHANAKO選手も銅メダルを獲得。

▶︎世界最高峰のフリーダイビング大会総括 〜世界記録続出、進化した生中継〜

そして岡本美鈴選手は大会最終日のトップバッターとして登場しモノフィン(※)で潜る競技CWTで100mを達成女性では数少なく、男性でも限られたフリーダイバーのみが到達する「100mクラブ」入りを果たした!長年日本のフリーダイビング界を牽引してきた彼女がいまなお進化し夢を達成する姿は中継をとおして多くの人の心を動かし、そして浮上後に流した彼女の涙の重みに、世界中の多くの人も同時に涙を流したはずだ。

そんな岡本選手に今大会を振り返ってみての感想や、今後の展望などお話を伺った。

※モノフィン:一枚の大きなフィンで、通常のフィンが両足それぞれに装着されるのに対し、モノフィンは両足に一枚装着される。力強いドルフィンキックが可能となり、通常のフィンに比べ高い推進力を得られるのが特徴。

photo by Go Hayakata

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ーー今大会の自分のダイブと100m達成を振り返って、いかがでしたか?

岡本

失敗したダイブも含め、すべてのダイブに「やり切った」実感があります。最後の100mは、たくさんの方々と潜り「夢の深度」へ連れていってもらった自己ベストでした。大会まで不調だったのですが、後半になってスキルが安定してきました。

心身準備ができ、あとは自分を信じるのみ!という段階でなかなか踏み出せない自分がいて、HANAKOとセーフティチーム、トップダイバーの皆さん、日本の皆さんが背中を押してくれたおかげで、勇気をもって自己ベストの申告をすることができました
ギリギリのところで自分を信じ切れていなかったなあと思いますし、そこを通り抜け100mを先に達成した日本女子のHANAKO、木下紗佑里、福田朋夏は、改めてすごいなと尊敬します。

競技歴18年でカナヅチだった私がここまで続けてこれたことを思うと、応援し支えて続けてくださる皆様には感謝しかありません。本当にありがとうございます!

photo by Go Hayakata

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ーー昨年一年間は海外遠征などができない自粛の一年だったと思います。この期間をどのように過ごしてこのVBを目指してきましたか?

岡本

昨年は一言でいうと濃いインプット期間でした。プールやジムが休館だった期間は、VBに向けてというより、体力を落とさないよう1日一回1〜2時間の真鶴半島内の坂道ウォーキング部屋ではストレッチや筋トレなどを行っていました。すきま時間に耳抜き呼吸法の練習フリーダイビングのトレーニング理論やトレーニング方法、栄養の取り方や年間計画の立て方を見直したり、海外のトップフリーダイバーのオンライン講座を受けるなど、良いアップデートができました。

海外でもステイホーム中の選手やインストラクターたちが、オンラインでトレーニング方法や技術の話などを公開していて面白すぎて寝不足の日々も。あらためてフリーダイビングが好きなんだなぁと実感しました(笑)。

また、スクール活動でオンライン座学、呼吸法やリラクゼーションのレッスンも毎日開催していました。ステイホームでありながら皆さんとトレーニングしたり「フリーダイビングはやっぱり面白いねー!」という原点を共有できたことが、トレーニングのモチベーションにつながりました。

昨年末からは熱海市のプロトレーナー八代直也コーチに指導いただき、バハマ直前まで週4〜5日はプールとジムでトレーニングしていました。できないことにぶつかったり、難しいトレーニングは「変わる手がかり」だから嬉しいです(笑)。現地入り後も食事やコンディショニングのアドバイスをもらい、今までの遠征に比べると最高の体調で過ごすことができたと思います。

熱海市のプロトレーナー八代直也コーチ指導のもとでのトレーニング

熱海市のプロトレーナー八代直也コーチ指導のもとでのトレーニング

ーー今回のVB2021、どのような大会でしたか?

岡本

最高の大会でした!競技レベルも、競技の見せ方も最前線だと感じました。
今年はわかりやすい解説とライブ配信や水中映像のシーンの切り替えや潜っている選手の顔がズームされたり見せ方が格段に面白くなったと思います。私たちも潜りながら皆さんの視線と応援を感じて、心強く潜ることができました。以前は水中に入れば孤独の世界だったのですが、こんな応援を感じながら潜る日がくるとは、想像していませんでした。

そして、セーフティチームと大会運営のスタッフに感謝でいっぱいです。コロナ禍で最低限の人数でありながら私たちが全力で潜るサポートをしてくれました。毎年、大会全体の競技レベルが上がり続け、VBでは男性は100mが当たり前になり、女性の世界記録も更新され、一体人間はどこまで潜るのだろう?というフリーダイビング最前線の現場になってきましたが、今年は特に深度関わらず、選手同士がフリーダイビングができる喜びや楽しさを分かち合い、感謝する雰囲気に溢れていました。来年も今から楽しみです。

ーー今後の目標は?

岡本

今回100mまで良い感触で潜れたことで、わたしの競技人生の夢が叶ってしまいました。もう思い残すことはないし、自分へのプレッシャーも減ったので、いま残っているのは好奇心だけです。なので、失敗や不調も含めて、のびのびとチャレンジを楽しもうと思っています。

まずはVBでの体調管理や潜った時の手順を無意識レベルにして、もう一度あのダイブで楽しみたい。その積み重ねで今回のHANAKOやアレンカ、アレッシアのように100mを当たり前の場所にしたいです。

進化を止めない岡本選手、そのチャレンジから今後も目が離せない。

関連サイト&アカウント

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■人魚JAPAN
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PROFILE
Apnea AcademyAsiaフリーダイビングインストラクター。 2015年フリーダイビング日本代表選手。CWT(フィンをつけて潜る競技)では水深-60mの公式記録を有する。オーシャナ主催のスキンダイビング講習会ではメイン・インストラクターをつとめる。また、自ら主催するフリーダイビング&スキンダイビングサークル「リトル・ブルー」や地元葉山での素潜りを通じ、素潜りや水の世界の素晴らしさを伝える活動をしている。
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