堀口和重の「イキイキと生きる!生き物伊豆紀行」(第3回)

まるでカプセル!?コウイカの不思議な卵や、孵化直前の赤ちゃんを観察するなら今がチャンス!@黄金崎

こんにちは。水中カメラマンの堀口和重です。

今回の舞台は西伊豆町にある黄金崎。

黄金崎はユネスコの「ユネスコ世界ジオパーク」にも認定されているジオポイントのひとつで、美しい馬のような形をした岩肌の“馬ロック”が名所となっています。夕陽が当たると黄金色に輝き、とても素晴らしい景観です。

馬のように見える「馬ロック」。パワースポットとしても人気(撮影/堀口和重)

馬のように見える「馬ロック」。パワースポットとしても人気(撮影/堀口和重)

この黄金崎の海で見られる生き物がおもしろい生態行動をとっているので、私は3年前から時期になると撮影を続けています。

カプセルの中身

初めてここに訪れた時に驚かされたのが、コウイカの卵。

たかがイカの卵……と思っている人もいると思うのですが、連なって産みつけられているアオリイカやヤリイカなどの卵とはまったくタイプが異なります。

卵自体、単体で産みつけられていて、さらに成長しても周りの汚れが少ないので、卵の中が透明に澄み観察がとてもしやすいです。

卵の大きさは3センチ前後ぐらい。訪れた当初、中身のイカがはっきりと見えるカプセルのような卵に、目が釘付けになりました。
 

今シーズンのコウイカの卵。1月に産卵も確認されている(撮影/堀口和重)

今シーズンのコウイカの卵。1月に産卵も確認されている(撮影/堀口和重)

産むところは……

どのようなところに卵を産むかというと、細めのロープの塊やトサカなどに産みつけています。

コウイカ自体が中層を浮いて泳ぎ回るイカではない(基本低層にいる)ので、低いところに卵を産みます。

産卵後は砂を卵につけて、捕食者に見つかりにくくしています。時間の経過や、うねりなどの影響を受けると砂が取れる卵もあり、そうなると最初の写真のように観察ができるのです。

毎年卵が産み付けられるロープ(撮影/堀口和重)

毎年卵が産み付けられるロープ(撮影/堀口和重)

ロープに近づいてみると、卵が簡単に見つけられる(撮影/堀口和重)

ロープに近づいてみると、卵が簡単に見つけられる(撮影/堀口和重)

ソフトコーラルのトサカにも産卵する。撮影地:福岡県糸島(撮影/堀口和重)

ソフトコーラルのトサカにも産卵する。撮影地:福岡県糸島(撮影/堀口和重)

トサカをよく観察すると、卵を見つけることができた。撮影地:福岡県糸島(撮影/堀口和重)

トサカをよく観察すると、卵を見つけることができた。撮影地:福岡県糸島(撮影/堀口和重)

生態行動は迫力満点!

コウイカは全長40㎝前後。たまに「コブシメがいた!!」と言って海から上がってくるダイバーもいますが、伊豆では大体コウイカやその仲間のカミナリイカであり、沖縄にいるコブシメとは種類が違うのです。

観察できる時期は冬から春ごろで、産卵や求愛、オス同士の喧嘩などの生態シーンが見られます。

黄金崎の写真ではないのですが、山口県・青海島に撮影に行ったときには、交接や臨戦態勢に入った2匹のオスを捉えることができました。

オス同士の喧嘩は、ドロッと墨を吐いて威嚇したり、頭をぶつけ合ったりと迫力があります。

お互いに威嚇し合い、臨戦態勢のオス。撮影地:山口県青海島(撮影/堀口和重)

お互いに威嚇し合い、臨戦態勢のオス。撮影地:山口県青海島(撮影/堀口和重)

コウイカの交接シーン。撮影地:山口県青海島(撮影/堀口和重)

コウイカの交接シーン。撮影地:山口県青海島(撮影/堀口和重)

ハッチアウトも狙えるかも

下の写真は生まれたばかりのコウイカ、タイミングがわからないので難しいのですが、うまくいけばハッチアウトシーンにも出会えるかもですね。

生まれたてのコウイカの赤ちゃん(撮影/堀口和重)

生まれたてのコウイカの赤ちゃん(撮影/堀口和重)

黄金崎のコウイカのハッチアウトは、時期的にはそろそろピークとなります。

もう少しすると卵も孵化してなくなってしまうので、このイカのカプセルを見るなら今が旬!!となっています。

撮影協力/西伊豆黄金崎:黄金崎ダイブセンター、山口県:シーアゲイン、福岡県:糸島ダイブベース

堀口和重さん
プロフィール

horiguchi_profile

伊豆の大瀬崎にある大瀬館マリンサービスにチーフインストラクターガイドとして勤務後、2018年4月にプロのカメラマンに転向。
現在は伊豆を拠点に水中撮影から漁風景や海産物の加工まで海に関わる物の撮影を行っている。
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PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。
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