堀口和重の「イキイキと生きる!生き物伊豆紀行」(第6回)

ハナダイの数と種類は日本トップクラス!!スペシャルビーチ「先端」の魅力@大瀬崎

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こんにちは。水中カメラマンの堀口和重です。
冬場は佐賀県・呼子での写真展があったことから、九州をメインに潜り続けていました。

3月に入り、季節が春へと移り変わった時期、久々に静岡県・大瀬崎へと訪れました。

半島の手前から大瀬崎と富士山のコラボレーションを臨むと、今年は暖冬だったこともあり、この時期にしてはいつもより富士山の雪が少ないのが気になります。

海の中も例年より少し水温が高く、海藻の伸びはいつもより遅く感じられ、普段見られた生き物が見られないこともあると、大瀬館マリンサービスの現地ガイド・熊谷翔太さんは語っていました。

このような海の変化が今後どう影響するのか気になるところでもあります。ずっと伊豆を撮影している私自身、これからも変化していく海を撮影し続けたいという思いです。

ビャクシンの森を通り向けて

そんな変化がある大瀬崎ですが、今回は環境的な話ではなく、ダイビングポイントのひとつ「先端」という場所を紹介していきたいと思います。

大瀬崎といえば、各ダイビングサービスの目の前の砂地からエントリーすることができる「湾内」が有名ですね。初心者も潜りやすいことから、「大瀬崎で講習をしてCカードを取った」と多くの人から聞いた覚えがあります。

今回ご紹介する「先端」は、そんな「湾内」とはまったくと言っていいほど違ったポイントです。「先端」はいろいろとおもしろい条件が整っているポイントと言えるでしょう。

まずは各ダイビングサービスから、器材を積んだ台車を押して「先端」まで向かいます。

「湾内」の砂地沿いに並ぶ各ダイビングサービスの前を通り過ぎ、大瀬神社方面へと向かうと、国定指定天然記念物のビャクシン樹林があちらこちらに見られます。そのビャクシンの森を移動していくと、エントリー口に到着します。

器材を積んだ台車を押して先端に向かうダイバー。あちこちでビャクシン樹林が見られる(撮影/堀口和重)

器材を積んだ台車を押して先端に向かうダイバー。あちこちでビャクシン樹林が見られる(撮影/堀口和重)

少し不安定な岩場を台車を押して降りていき、準備をしたらいよいよエントリー。

エントリーすると、量は少ないものの、浅場には海藻が一面に生えていました。このあたりは半水面で狙っても、おもしろい写真が撮れる場所でもあります。

エントリー口ではビャクシン樹林、水中では海藻が見られる(撮影/堀口和重)

エントリー口ではビャクシン樹林、水中では海藻が見られる(撮影/堀口和重)

ホンダワラやウミウチワなどの海藻が春を感じさせる(撮影/堀口和重)

ホンダワラやウミウチワなどの海藻が春を感じさせる(撮影/堀口和重)

ハナダイの数は日本トップクラス

また、湾内へと流れ込む潮の入り口でもある岬の先端は、潮通しが良く、狩野川から流れてくる栄養分も多いようです。

その影響もあり、岩場を少し下って行くと、ハナダイ類の宝庫とも言えるような場所が広がります。

一面に群れるキンギョハナダイとミノカサゴ(撮影/堀口和重)

一面に群れるキンギョハナダイとミノカサゴ(撮影/堀口和重)

エントリーして程なく見られるキンギョハナダイの群れは、今まで潜ったどこの海よりも多い気がします。また、水深が下がればナガハナダイの群れも多いです。

深場はナガハナダイワールド(撮影/堀口和重)

深場はナガハナダイワールド(撮影/堀口和重)

以前、伊豆以外をホームとするダイバーと潜ったとき、「こんなにもナガハナダイが多い場所を見たことない!」と、とても驚いていました。

ナガハナダイは単体でも美しい(撮影/堀口和重)

ナガハナダイは単体でも美しい(撮影/堀口和重)

群れも圧巻なのですが、ハナダイの種類も多いのがこのポイントのすごいところです。
最近は大きな群れは深場にしかいないようですが、ミナミハナダイはほかの海でも見かけることは稀です。

大瀬の「先端」に多いミナミハナダイ(撮影/堀口和重)

大瀬の「先端」に多いミナミハナダイ(撮影/堀口和重)

ほかにも年によって流れてくるホカケハナダイやフタイロハナゴイ、ベニハナダイ。深い場所に普段生息するマダラハナダイやシロオビハナダイが浅場に出現することもあります。
紹介しきれないぐらいハナダイ類が豊富なのです。

稀に出現するマダラハナダイ(撮影/堀口和重)

稀に出現するマダラハナダイ(撮影/堀口和重)


ベニハナダイの幼魚(撮影/堀口和重)

ベニハナダイの幼魚(撮影/堀口和重)

ちなみにハナダイ類以外でも、クダゴンベやオオモンカエルアンコウなどの一般ダイバーに人気な生き物もよく登場してくれます。

深海生物との出会いも

沖には日本一深い湾の駿河湾がある大瀬崎。「先端」はどこまでも降りていけそうなくらい急激な地形なので、深海生物との遭遇率も高いです。

3年前には深海性のユウレイイカに出会えたこともあります。キアンコウの情報や、数年前にはホンフサアンコウなど、まずお目にかかることのできない深海生物の登場で、大瀬崎全体を沸かせました。

数年前に撮影したユウレイイカはゆったりと泳いでいた(撮影/堀口和重)

数年前に撮影したユウレイイカはゆったりと泳いでいた(撮影/堀口和重)


こちらも数年前に見かけたキアンコウ(撮影/堀口和重)

こちらも数年前に見かけたキアンコウ(撮影/堀口和重)

実は土日祝限定ポイント

ちなみにこんなにおもしろいポイントなのですが、潜水できるのは土日祝日のみの限定ポイントとなっています。
私の考えでは、毎日入れないからこそ、生き物も居ついてくれているではと思っています。

ぜひとも伊豆を代表するスーパービーチの1つ、大瀬崎「先端」でたくさんのハナダイの群れに癒されてみてはいかがでしょうか?

撮影協力/大瀬館マリンサービス

堀口和重さん
プロフィール

horiguchi_profile

伊豆の大瀬崎にある大瀬館マリンサービスにチーフインストラクターガイドとして勤務後、2018年4月にプロのカメラマンに転向。
現在は伊豆を拠点に水中撮影から漁風景や海産物の加工まで海に関わる物の撮影を行っている。
▶堀口和重写真事務所ホームページはこちら
▶堀口さんのFacebookはこちら

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PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。
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