水中カメラマン・堀口和重さん新連載「イキイキと生きる!生き物伊豆紀行」がスタート!
こんにちは。水中カメラマンの堀口和重です。
今月からオーシャナで「連載」として、記事を書かせていただくことになりました。
連載タイトルは「イキイキと生きる!生き物伊豆紀行」。
今回は、この連載のコンセプトや私の伊豆の海への思い、さらに、伊豆の四季折々の魅力などをお伝えしたいと思います。
連載開始に寄せて
私が初めて海に潜ったのは、東伊豆の赤沢の海。
6月上旬ということもあり、入る前は、寒いし……暗いし……。嫌な思い出のみが残りそうでした。
しかし、その中で目を引いた生き物がいました。伊豆では浅い場所に生息して、そこら中で観察できるクロホシイシモチ。
この魚たちをよく見ていると、不思議にみんな同じ方向を向いています。気になって気になって、他の海で潜ったときもも魚たちをジッと見てみると、やはり群れは同じ方向を向いています。
たったそれだけのことでしたが、ちょっとした不思議や疑問を見つけながら潜ってみたら、もうかれこれ10年以上。
途中で南方の海で仕事もしましたが、戻ってきたのは「伊豆」。この海には何かの縁があるのかもしれない、そんなことを日々考えさせられました。
ダイビングというと、潜ってない人から見ると、最初に思い浮かぶのは南の島などで潜ることでしょう。
南に行けば行くほど、カラフルな南方種が出てくるのが一般の人たちの考えであり、さらに夏の暑い日に海に入りたいと考えるのがおおよそだと思います。
伊豆は、透明度も南に比べると落ちるし、さらには寒い冬場に潜るのは……と思う方もいるかもしれません。
もちろん私も寒いのは苦手ですし、冬場は布団から出るのもやっとのことです。でも、そこでしか見ることのできない生き物たちの表情や、感動がたくさんあります。
伊豆に年中通い続けているダイバーはその魅力はご存じかと思いますが、伊豆にあまり来ないダイバーの方や一般の方々にも、伊豆の海ってこんなに生き物がいるのか!!おもしろいな!!と思ってもらえることを、写真や記事にして書いていけたらなと思っています。
春夏秋冬、伊豆は生き物の宝庫
伊豆という海は、四季折々の顔を持ち、黒潮の影響によって生き物を運び、さらには駿河湾と相模湾という深い海に囲まれたものすごく豊かな海です。
あまり伊豆で潜らない人たちの中には、生き物が少ないと思っている方もいると思いますが、それはとても大きな間違いです。
潮の当たり具合などによって、たくさんの生き物がいたり、外敵に見つからないようにと砂地に潜ったり、体を周りに同化させたり……と、上手く隠れていることが多いのです。
写真は大瀬崎の先端。キンギョハナダイがオレンジの壁のように広がっています。
もう少しで「春」が来る
あと2ヵ月もすれば春がやってきますね。
陸上が暖かくなるから海も暖かいだろうと勘違いする人もいると思いますが、春の海は水温のピークでもあり、3月中だと真冬の水温と変わらないことが多いのです。
さらに月日が経てばだんだんと春濁りもおき、海の色が緑色、透明度もかなり落ちる状態になります。ですが、カメラマンの私にとっては、春濁りは春の海を感じさせる海の色。さらに海藻が生い茂るのはこの時期ならではなので、撮影するには好都合なのです。
写真の、生い茂る海藻は、実は生き物たちの隠れ家になっており、人気のダンゴウオなどもこの季節に見られるのです。春はちょっとな……と思っている人も、よーく楽しみを探すとおもしろいことがたくさん隠れているかもですよ。
「初夏」からはパパラッチ!?
春が終わるにつれて、水温の上昇とともに生き物たちの動きが活発になります。
特に、魚たちの繁殖行動はあちらこちらで見られ、時間帯も朝から夜までと生き物により異なります。
生態の観察は難しく、この日に確実に産卵するなどが決まっていないので、時間帯を見て根気よく張り続けなければいけないのです。そりゃまぁ、水中のパパラッチはなかなか大変でありますね……。
6月になると東伊豆ではクサフグの産卵も見られます。
驚くのは水中で産卵するのではなく、浜へと上陸して産卵を行い、さらには行動が終わると岩などの間に取り残されないように海へと帰っていくのです。
真夏になれば人気のクマノミが卵を抱えているところが見られたりもします。あまりノンダイバーの人たちに知られてないのが、伊豆にクマノミが生息していること。さらには繁殖もしているということに、みなさん驚かれるようです。
深場からの誘惑
実は日本の中でも、伊豆の海の深さはダントツ。駿河湾と相模湾は1位と2位を独占していることは、ご存じでしょうか?
こんなに深いと、深海からいろいろな生き物が浅場までやってくるのです。
アンコウやミズウオは毎年必ずと言っていいほど上がってきます。写真は東伊豆の伊豆海洋公園で、2年前に撮ったオキノスジエビです。深いところに生息するこのエビですが、水深30~40mに大量の群れで出現したのです。
このように、本来いないものが、ダイバーが行けるギリギリの水深に出現するのも伊豆の海の特徴ですね。
また、このような生き物たちが出てしまうと、私は誘惑に負けていつも見に行ってしまいますが、みなさんが深いところを潜るときはくれぐれもご注意を……。
「夏~秋」に、流れてくる
夏の始まりくらいから、潮に乗ってくる生き物が増えてきます。
ダイバーに人気のカエルアンコウの仲間や、カラーバリエーション満載のスズメダイやハゼの幼魚などなど。生き物の色合いが夏~秋にかけてぐっと増え続けます。
流されてくる生き物は南方種だけではなく、時には深海生物の子どもなども来ることがあります。以前のヘッドラインでも登場しているリュウグウノツカイやテンガイハタも、水面や中層を漂い現れるのです。
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寒いだけではない「冬」
冬はたいていの生き物の元気がなくなります。そして水温も落ちていきます……。ただ、悪いことばかりではなく、ウミウシが増えてきたり、透明度が平均的に上がったりします。
さらに一部の生き物は、この時期を狙って繁殖行動を行ったりするのです。
アナハゼの仲間やサビハゼなどは、伊豆での水温が下がった時期に卵が見られたり、運がいいと求愛から産卵、ハッチアウトまで見られたりするのです。写真はサビハゼのハッチアウトの瞬間。今年もそろそろ産卵して、卵を保護する姿が見られるでしょう。
四季や海流、深海からと伊豆の海生き物たちは豊富です。
これからはその生き物にスポットライトを当て、読者のみなさんに生き物たちの美しい色合いや、おもしろい行動などをお伝えできればと思っていますので、よろしくお願いします!
堀口和重さん
プロフィール
伊豆の大瀬崎にある大瀬館マリンサービスにチーフインストラクターガイドとして勤務後、2018年4月にプロのカメラマンに転向。
現在は伊豆を拠点に水中撮影から漁風景や海産物の加工まで海に関わる物の撮影を行っている。
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