水中撮影に革命を起こすか!? 斬新なライトシステム“RGBlueシステム03 “撮影レビュー

撮影中の中村卓哉 撮影:山崎英治

ストロボを超える
ライト撮影のメリットを探る

画期的なコンセプトで人気のエーオーアイ・ジャパンの水中ライト・RGBlue(アールジーブルー)。

「明るければ良し」とされた水中ライトの常識を覆し、海中で失われる赤系の色味の再現性を追求した、演色性の高い、RGBlueシステム01とシステム02は、フォト派やビデオグラファーに愛用されてきた。

私もムービー撮影のメインライトとしてシステム02を使用してきたが、その発色には満足していた。
しかし、正直なところ、写真を撮る時はまだストロボとの差別化ができず、ライトならではの優位性を見いだせていなかった。

そしてこの度、満を待して発表された「RGBlue システム03」(以下、システム03)。

驚くほど小型なライトモジュールと斬新なローリングアダプターシステムは、マクロ撮影時に感じる、さまざまなストレスをなくすだけではなく、斬新かつクリエイティブなライティングが可能となった。

RGBlue システム03は
なぜライトを小型化できたのか

そもそも照度は光源からの距離の2乗に反比例する。

さらに、海の中は浮遊物などの影響で、距離を離せば光量は格段に落ちるため、いくらルーメン(lm)数の高いライトを当てても被写体から距離を離せば結局のところ光量が無駄になってしまう。

システム03は最大2000lmながらも、ポート脇からライトを当てる事で照度を落とさずに的確に被写体を照らすことができる。
その分、小型化でき、ライトの角度調整などの自由度も増した。
まさに無駄のない理想のライトシステムといえる。

実は昨年の秋、エーオーアイジャパンの社長・久野義憲さんが私の写真展会場に足を運んでくれた時、水中ライトに関する要望をあれこれ聞いてもらった。
それを覚えていてくれた久野さんは、このシステム03を発売後、いち早くテストさせてくれたのだ。
1ヶ月かけてさまざまな使用方法を模索していくうちに、マクロ撮影だけならこのライトだけで十分にクリエイティブな写真を撮ることができると確信した。

そして今回、久野さんとブルーライン田後(たじり)の山崎さん(以下、ザキさん)にご協力いただき、新製品のモニター会&フォトセミナーイベントを開催する運びとなったのである。

中村のシステム03のセッティング

中村のシステム03のセッティング

参加者全員が大満足!
「RGBlue システム03」モニター&フォトセミナー

イベントの期間は、2017年4月15、16日の2日間。
参加者7名(2日間で8名)のフォト派のダイバーたちがブルーライン田後(たじり)に集まった。

今回はなんと特別に、システム03を参加者全員に無料レンタル。

モニター貸し出し用のRGBlueシステム03がずらり

モニター貸し出し用のRGBlueシステム03がずらり

私のスライド&フォトレクチャーと、ライトの開発者の久野さんからも特別にアドバイスを聞けてしまう。
さらに、まだ発売前のフィルターホイールとマイクロスヌートなども参加者全員分用意していただいた。

システム03の使用方法などを説明する久野さん

システム03の使用方法などを説明する久野さん

カラーチャートを使用しシステム03の色温度の特性などもレクチャーしてもらう

カラーチャートを使用しシステム03の色温度の特性などもレクチャーしてもらう

まずは、システム03を使用した基本的なライティングからレクチャー。

前面に67mmの溝を切ってあるポートならそのまま取り付け可能な「ローテーションリングアダプター」を各自取り付けてもらう。
システム03を装着したカメラを手に、潜る前からテンションが上がりまくりの参加者たち。

春のダンゴウオシーズンということもあり、まずはシステム03を使ってダンゴウオを撮ってもらった。

ダンゴウオ実寸大のフィギュアでライティングの練習をする参加者

ダンゴウオ実寸大のフィギュアでライティングの練習をする参加者

この日はうねりを伴うコンディションだったが、撮りやすい地形にいるダンゴウオを次々と紹介してくれるガイドのザキさん。
各自お気に入りのマイダンゴウオと対峙して撮影に没頭していた。

システム03を装着したゲストのカメラが円陣を組む

システム03を装着したゲストのカメラが円陣を組む

うねりで時折アカモクなど海藻がダンゴウオの手前で揺れ、ライトの影になってしまうことがあったが、レンズポートの脇で2灯のライトを自在に回しながら光の角度を調整することで的確にメインのダンゴウオに光を回すことができた。

この「ローテーションリングアクション」と呼ばれる動きこそ、システム03最大の武器である。

ローテーションリングアダプタセット

ローテーションリングアダプタセット

コンデジにシステム03を取り付けた参加者もいた。
去年撮影した写真よりも飛躍的に可愛く撮れていたようで大満足の様子。

ライトが小さくて軽いことでコンデジとの相性も抜群のようだ。

コンデジにシステム03を装着。大きさのバランスがとても良い

コンデジにシステム03を装着。大きさのバランスがとても良い

参加者Mさんのコンデジで撮影したダンゴウオの写真

参加者Mさんのコンデジで撮影したダンゴウオの写真

初めてシステム03を使った参加者たちだったが、あまりの写真の出来の良さに予定していたより早く次のステップへ。
2ダイブ目から発売前の「フィルターホイール」と「マイクロスヌート」を装着してもらった。

「フィルターホイール」はまるで小型の舞台照明装置のような形をしていて、見た目も斬新なアクセサリーだ。
あらかじめ好きな色のカラーフィルターや減光フィルターなど4種のフィルターを取り付けることで、瞬時に光の色や強さを変えることができる。

フィルターホイール

フィルターホイール

そしてコブラのサイコガンのような形(例えが古いが…)をした「マイクロスヌート」。
こちらは光の角度を最小限に絞れるアイテムで、スポットライトのような演出で被写体を浮かび上がらせることができる。

マイクロスヌート

マイクロスヌート

カラーフィルターは白っぽい透け感のある被写体の方がフィルターの色が反映されやすく効果的なため、イソギンチャクやホヤ、ウミウシなどを撮影してもらった。
そしてマイクロスヌートは背景に影をつけることで被写体を浮かび上がらせる効果がある。

例えば海藻をステージに見立てて、そこに主役のダンゴウオに向けてスポットライトを当てるように演出するなどのクリエイティブな表現が可能となる。
光軸をミリ単位で動かさなければならないので、最初はゲストたちも口々に難しいと言っていたが、試行錯誤してイメージ通り撮れた時の喜びは格別。
いつにも増して集中力を上げて撮影に没頭していた。

参加者の撮影風景 撮影:山崎英治

参加者の撮影風景 撮影:山崎英治

撮影中の中村卓哉 撮影:山崎英治

撮影中の中村卓哉 撮影:山崎英治

大切なのは
何を撮るかよりもどう撮るか

私のフォトレクチャーの合言葉になっているこの言葉。
普段は海の中で通り過ぎてしまうような珍しくない生物でも、愛情をもって個性を引き立たせるように写してあげることで、どんな希少種よりも輝きを増した写真になるという意味だ。

まさに、システム03はこの言葉を具現化できるアイテムである。

例えば、可愛い被写体は影をつけないように光をきれいに回してあげたい。
そんな時、「ローテーションリングアダプター」を使えば、まるでリングライトのように光を回すことができる。

一方、砂地や岩場などに潜むような生き物を立体的に撮る場合は、ライトをサイドから当てて陰影をつけたり「マイクロスヌート」で被写体だけを浮かび上がらせて撮ることもできる。

背景を青いフィルターで色付け、手前のダンゴウオをマイクロスヌートで浮かび上がらせる中村

背景を青いフィルターで色付け、手前のダンゴウオをマイクロスヌートで浮かび上がらせる中村

「フィルターホイール」などを組み合わせれば、カラーフィルターの色味をブレンドして独自の色味を作ったり、背景だけに色をつけて手前はスヌートで本来の色味を再現するなどもできる。
何千通りもの組み合わせによる独自のライティング法でさまざな絵作りが可能になるのだ。

フィルターホイールを左右のライト両方に付けて2色のカラーをブレンドして撮影する参加者のひとり

フィルターホイールを左右のライト両方に付けて2色のカラーをブレンドして撮影する参加者のひとり

初日と2日目の午後には私のスライド&フォトレクチャーを開催した。
そこではシステム03を用いたさまざまな表現方法をレクチャーさせていただいた。

ダイビングの後は中村によるスライドでのレクチャー

ダイビングの後は中村によるスライドでのレクチャー

初日のレクチャーが終了し、フォトレクチャー参加者たちが集まった呑み会の場ではシステム03の話で持ちきりだった。
そしてなんと、その場にいた参加者7名全員がシステム03の購入を決定!

しかも発売前の「フィルターホイール」や「フィルターセット」も全員が予約。
中には「フィルターホイール」2個セットでというゲストも。
これにはライト開発者の久野さんも驚きだったようだ。

初日の打ち上げにて。システム03を購入する人は手を上げてとの中村の声がけに参加者全員一斉に挙手。写真はヤラセっぽいがマジです(笑)

初日の打ち上げにて。システム03を購入する人は手を上げてとの中村の声がけに参加者全員一斉に挙手。写真はヤラセっぽいがマジです(笑)

ものづくりに対するこだわり

久野さんいわく、システム03は過去のRGBlueシリーズの中で最も開発の時間を費やしたシステムとのこと。

思わず触りたくなるデザインや細部まで考えつくされた使い心地の良さは流石である。
私は「ローテーションリングアダプター」をくるくる回す時のなんとも言えぬ感触とカチカチカチという音が好きだ。

参加者の1人がその感触や音も計算されて設計されているのかと久野さんに問うと、「もちろん」と即答だった。

システム03に込められたこだわりを語る久野さん

システム03に込められたこだわりを語る久野さん

「RGBlueシステム03」をなぜ使うのかと問われれば、私は「カッコイイから」と即答するだろう。
その格好良いデザインの中に凝縮されたものづくりに対するこだわりが、このシステム03の最大の魅力なのかもしれない。

※RGBlueで撮影した作品集はこちらをご覧ください。

久野さんを囲み談笑する参加者たち。いつの間にか皆システム03の虜になっていた

久野さんを囲み談笑する参加者たち。いつの間にか皆システム03の虜になっていた

System03カタログは → こちら

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writer
PROFILE
1975年東京都生まれ。

10才の時に沖縄のケラマ諸島でダイビングと出会い海中世界の虜となる。

師匠は父親である水中写真家の中村征夫。
活動の場を広げるため2001年に沖縄に移住。その頃から辺野古の海に通いながら撮影を始める(現在は拠点を東京に置く)。

一般誌を中心に連載の執筆やカメラメーカーのアドバイザーなどの活動もおこなう。
最近ではテレビやラジオ、イベントへの出演を通じて、沖縄の海をはじめとする環境問題について言及する機会も多い。

2014年10月にパプアニューギニア・ダイビングアンバサダーに就任。

■著書:『わすれたくない海のこと 辺野古・大浦湾の山 川 海』(偕成社)、『海の辞典』(雷鳥社)など。
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