【ダイビング×SDGs】 アクアラング:ダイビング界のパイオニアが考える地球の未来

SDGsの視点から、企業の持続可能な社会への取り組みをご紹介する「ダイビング×SDGs連載」。今回は、ダイバーには“アクアラング”でお馴染みのダイビング器材メーカー「日本アクアラング株式会社」が実践している持続可能な取り組みについて、最前線で活躍されている営業の田中さんと山本さんにお話を伺った。

左:田中さん 右:山本さん

アクアラングが取り組むSDGs

————ダイビング業界のパイオニア的存在のアクアラング社ですが、どういった企業理念で取り組んでいらっしゃるのですか?

田中さん

弊社グループは企業理念として、「Inspiring people to enjoy water exploration」を掲げていて、弊社の製品をお使いいただく事で、世界中のより多くの方々に海を安全に楽しんでもらうべく、人々の背中を押したいと考えています。

その理念に基づき、弊社の製品はより安全性を高めるために、すべてのレギュレーターが、EN250規格(※)の合格数値を大幅に上回る設計になっています。EN250規格の合格基準は厳しく、それさえ合格すれば一級品という評判もあるようですが、レギュレーターはダイバーの命を預かる呼吸機器。

寒冷地帯や大深度でのダイビング、さらに逆立ちや仰向け、疲労、パニックなどダイバーがどんな状況下、いかなる状態であっても、安全・確実に、ダイバーが要求する十分な空気を安定して供給できることを思えば、合格数値よりもはるかに優れた条件を満たすべきだと弊社は考えております。

またレギュレーターだけでなく、多くのBCの糸や生地などの部材においても、強度や耐久性テストを行っています。ダイビングを始めたい人達は世界中に多くおられると思いますが、さまざまな理由で躊躇される人達も少なくないと思います。安全性を高めることで、弊社がそのような二の足を踏んでおられる人達の背中を押せる会社になりたいと思っております。

ベテランダイバーに向けては、ダイビングのスタイルに合わせてフルにカスタマイズできるモジュラー式BCDの開発に近年注力しています。器材選びの幅がぐんと広がることで、ベテランダイバーの幅広いニーズにも答えられるような製品開発に取り組んでおります。
(※)世界的に認識された、ダイバーが安全に使用できるダイビング器材の基準、安全規格

————基準値にとどまることなく、安全性を高めるための努力はまさに、SDGs9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」に関わってきますね。製品に関して、環境に配慮している部分はありますか。

田中さん

アクアランググループの工場、例えばイギリスAPEKS社ではテニスコート4面分のソーラーパネル設置により年間50トンのCO2削減。また、製造工場で出たゴミの資源化により4000リットルの機械用潤滑油、137トンの廃材真鍮の再利用に成功しています。

テニスコート4面分のソーラーパネル

廃材真鍮を再利利用

山本さん

その他にも、常に製品工場でのCO2排出量削減努力を続けながら、出来る限り環境に優しい素材による商品開発や、リサイクルの容易な素材をパッケージに使用しています。2020年には商品を簡易包装にしたり、WaveというBCDの購入者にはリユースできるバッグをお渡ししたりといった取り組みがスタート。今後も積極的に行っていく予定です。

リサイクル素材を利用したパッケージ

リユースできるバッグ1

リユースできるバッグ2

————SDGsでいうと14番目「海の豊かさを守ろう」にも当てはまる取り組みですね。ものづくりの工程からエンドユーザーに商品が渡るまで、細かな環境への配慮が行き届いたサービスができるのには何か秘密があるのでしょうか。

山本さん

会社として環境問題へ意識的に取り組んでいるからではないでしょうか。具体的には、コーラルガーディアンなど海洋保全活動を行うNPOなどへの出資を実施したり、全世界にあるアクアラングの現地法人代表が集まる研修で環境に関するセミナーを行ったりしています。

私自身も、入社前は水族館勤務や沖縄で現地ガイドをしておりましたので、海の環境保護の重要性や緊急性について肌で感じており、私の経験を弊社社員の皆と共有することも、草の根的な活動として大切にしております。

————SDGs4番「質の高い教育をみんなに」や8番「働きがいも経済成長も」にも紐づきますね。アクアラングで働く社員の方々の環境意識もさらに高くなりそう。

山本さん

働きがいの面では、特にコロナ禍でより現実化した感が強いのですが、よりフレキシブルな体制に変化を試みております。たとえば、有給休暇の積極的な取得や、テレワークの推奨。また、ご家庭の都合で16時に退社する時短勤務などは、十数年前から取り組んでおります。

————いまの時代に合った働き方で、無理なくイキイキと働けそうですね。

田中さん

製造から流通販売を通して、すべてのサプライチェーンでの労働者の人権を尊重し、安全で公正で平等な労働環境を提供することが目標です。弊社はグローバル企業ですので、国によって慣習や常識などさまざまな違いにおいては、人を大切にするという基本的な理念があれば、会社として正しい道を進んでいけるのではと感じております。

実は、私の大学時代は作業潜水の仕事をしながら生計を立てていたのですが、小さなダイビング業界だけとっても、本当にさまざまな職種の人達が携わっている事を知りました。そのような経験から、異なる立場の人達でも、お互いを尊重しあえるダイビング業界にして行きたいと思っています。

————SDGs10番「人や国の不平等をなくす」というところにも繋がってきますね。

77周年を迎え、今後どういった企業活動をされていくのか、これからの未来

田中さん

今年の新型コロナウイルスの世界的な流行は、働き方や企業の在り方を大きく変えたと感じています。第三波の最中にあり予断を許さない状況ではありますが、今辛い状況にあるダイビング業界も必ず再興すると思っています。

従来の様な環境にダメージを与える企業活動では生き残れない時代になっていますので、製造に伴う廃棄物をもっと削減したり、リユースできる梱包材を使用していく事がメーカーに課せられた命題なのだと思います。弊社はグループ一丸でその方向である事は間違いございません。

————ありがとうございました。人を大切にする企業理念があるからこそ、無理なくSDGsの取り組みに繋がっているのが素敵ですね。

アクアラングが取り組むSDGsまとめ

・工場にソーラーパネル設置
・工場廃材の再利用
・プラスチック不使用のパッケージへシフト
・海洋保全活動を行うNPOなどへの出資
・グループ内で環境に関するセミナーを開催
・エコバックをBCのパッケージとして使用
ほか
・ペットボトル等のオフィス内でのプラスチックの削減(図1)
・サンゴに優しい日焼け止めの販売(図2-1、2-2)

図1

図2-1

図2-2

アクアラングについてご紹介

77年前にアクアラングを発明した海洋探検家“ジャック・イヴ・クストー”と技師の“エミール・ガニヨン”

スキューバダイビングのギアカンパニーとして多くの人に高品質、革新的開発商品を提供し続けているアクアラング社。社名にもなった「アクアラング」とは、77年以上も前、海洋探検家“ジャック・イヴ・クストー”と技師の“エミール・ガニヨン”が発明した世界初の自給式水中呼吸装置の特許名からとったもの。2人のあくなき探究心とフロンティア精神を受け継ぎ、ダイビングに技術革新をもたらし、ダイビングの楽しさを広めてどのようにライフスタイルに取り入れるかを目的に、現在も技術革新を追求している。

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