オオムラクジラを知っていますか?

最近、スリランカの海洋生物学者、自然保護活動家、教育者で、シロナガスクジラの専門家であるアーシャ・デ・ボス女史(TEDフェロー)が、沖合でフィールドワークをしている際、偶然、新種のクジラを発見しました。

このクジラは、成長すると10m以上にもなり、特徴的な細長い体と左右非対称の模様があると、日本で14年前に「オオムラクジラ(※)」として記述されたものです。

しかし、それ以前は、南大西洋、東太平洋、東西インド洋で目撃され、イランで座礁した死体が見つかっただけで、分布や個体数など、詳細なことは判明していなかった種です。

それを考えても、今回の発見は大きな意味があると同時に、14年も前にこのクジラを認識していた日本の専門家はすばらしいと彼女は賞賛しています。
(※訳注:日本の鯨学の祖、大村秀雄氏にちなむもの。日本ではツノシマクジラ (Balaenoptera omurai) と記録されている)

また、このクジラはどのように発見されたかという質問に、彼女は以下のように答えています。

「2017年2月、私はスリランカの南海岸で、いつものようにシロナガスクジラの野外調査をしていました。正直、クジラが私たちのボートに近づいても、はっきりと姿を見せるザトウクジラとは異なり、ほとんどのクジラが深く潜っているので、私たちはよく見ることができません。そのため、彼らの特徴を一瞥で記録することはしばしば困難を伴います。

しかし、私が所属する非営利団体のOcean Swellは、スリランカのシロナガスクジラプロジェクトの本拠地であり、私たちの調査領域にあるすべてのクジラを識別するための、写真カタログを保管しています。

そこで私たちはボートを止め、このユニークなクジラが私たちに近づき、サークリングを始めた時、写真撮影を開始しました。この個体は非常にリラックスしていたので、私たちはその特徴をたくさん撮影することができました。

そして、フィールドハウスに戻って、学生たちが写真を照らし合わせ、その非対称のカラーなど、今まで見たことのない特徴から、これは通常観察しているクジラとはまったく異なっていることが判明したため、画像をこの種のクジラに詳しい同僚に送り、『オオムラクジラ』であることを確認しました」

そして、次のようにも語っています。

「この個体は左上顎に漁網が絡まった傷跡があります。漁網の問題は私たちが取り組まなくてはならない課題の一つです。今回スリランカの水域で、初めてこの『オオムラクジラ』 を記録できたことは、大きな意義があります。

私たちの海は生命にあふれていますが、私たちは、そのなんたるかをほとんど知りません。

私は漁やホエールウォッチングが盛んな、沖合わずか7kmの場所で、このクジラを発見しました。このように大きく、はっきりと確認できて、人間に近づいて来る生き物を見過ごせるわけがありません。

この惑星の70%は海です。しかし、私たちが調査しているのは、まだそのうちの5%以下にすぎません。

スリランカの水域で、このクジラが発見されたことは、私たちが探検や発見がまだ可能であるすばらしい世界に生きていることを自覚させてくれます。

知識を得れば得るほど、より生命を尊び、より保護していくことができるのですから!」

(TUNZA:UNEP’s magagine for youth より)
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UNEP(国連環境計画)は、世界の環境問題や持続可能な開発に向けた環境対策への取組みなど、地球規模でさまざまな環境問題の対策を実施している国連組織です。
1972年国連人間環境会議(ストックホルムにて開催)の決議により設立されました。

日本では2015年に、一般社団法人 日本UNEP協会 が発足。日本におけるUNEPの活動の普及を図るとともに、UNEPを通じて日本と海外とを結び、環境保護活動を積極的に推進しています。
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