「高緯度サンゴ群集域」って知ってる?世界的な保全団体も注目する理由とは

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サンゴは、地球の海洋面積のわずか0.2%未満ながら、海洋生物種の約25%の生息地として(注1)、海の生物多様性にとって重要な存在であることがわかっている。しかし、気候変動等の影響により、将来気温上昇を1.5℃に抑えられた場合でもサンゴ礁が減少する割合は約70~90%と推計されるなど(注2)、危機的な状況にあるのもまた、事実だ。そこで注目されているのが、世界のサンゴ礁の分布限界よりも北に位置する、「高緯度サンゴ群集域」。今年1月にはサンゴの保全団体らによる、保護活動開始も決まっている。本記事では、高緯度サンゴ群集域と保護活動内容についてご紹介。

注1:https://www.wwf.or.jp/activities/lib/pdf_marine/coral-reef/cesardegradationreport100203.pdf
注2:https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/2018/10/SR15_SPM_version_stand_alone_LR.pdf

サンゴ礁域と高緯度サンゴ群集域の違い

日本には、北は千葉県や神奈川県から、南は鹿児島県南部や沖縄県などの亜熱帯の島々まで、沿岸域を中心に広く、サンゴ礁の基礎をなすサンゴの種称であるとなる「造礁サンゴ」が生息している。しかし、地形のようなサンゴ礁が形成される海域は、基本的には鹿児島県の大隅諸島より南方の地域だけとなっており、このサンゴ礁が形成される海域を「サンゴ礁域」と呼ぶ。いわゆる、沖縄県や鹿児島県・奄美大島の周辺海域でダイビングやシュノーケリングをすると見るような、一面のサンゴ畑である。

一方、鹿児島県の大隅諸島より南方の地域以北のサンゴが生息する海域を「高緯度サンゴ群集域」と呼ぶ。この海域では、造礁サンゴが生息はしていても、サンゴ礁という地形が発達することはないのが通常。また、成長スピードも一年に数cmセンチメートルほどで、これが、仮に大きなサンゴ群集やサンゴ礁を形づくるには、何十年・何百年という長い歳月が必要なのだ。これらは、世界のサンゴ礁の分布限界よりも北に位置し、熱帯性・温帯性のサンゴの生息環境として貴重な存在であると注目されている。その地の海で育っているサンゴは、遠い場所から潮に乗って運ばれてきたものである例も少なくない。

写真:「高緯度サンゴ群集域」の高知県土佐清水市のサンゴ(黒潮生物研究所提供)

WWFジャパンと黒潮生物研究所による保護活動が決定

今年1月、長年沖縄県石垣島等でサンゴの保全活動を行なう公益財団法人・世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)と黒潮流域の生態系に関する調査研究を行う公益財団法人黒潮生物研究所は、気候変動への適応の観点から、国内のサンゴを守る新たな取り組みの一つとして、この「高緯度サンゴ群集域」に着目し、保全価値の高いエリアでの活動を行なっていくことを発表した。

高緯度サンゴ保全において地理的に特に重要で、黒潮生物研究所らの活動基盤のある四国南太平洋沿岸地域(高知県、愛媛県、徳島県)を選定し、互いに協力しながら、発信、関係者との連携、教育・普及啓発活動、その他必要な活動を行なっていく予定だ。

WWFジャパン 事務局長 東梅貞義のコメント

気候変動の影響や人間の活動によりサンゴの生息可能環境が急速に変化するなか、九州本土以北の高緯度サンゴ群集域、とりわけ四国南太平洋沿岸のサンゴは将来にわたって重要なサンゴの生息域となることが予測されています。今後、黒潮生物研究所をはじめ地域の自治体や事業者、住民の方々と協力し、高緯度サンゴ群集の保全に貢献できるよう、活動を検討・推進してまいります。皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

WWFジャパン初の高緯度サンゴ保全活動を、四国南太平洋沿岸で展開 黒潮生物研究所との協働決定、協定書を締結

黒潮生物研究所 事務長 目﨑拓真氏のコメント

四国の太平洋沿岸は、高緯度サンゴ群集域の中心で、気候変動による生態系の変化を知る上で重要な海域です。在来のサンゴ群集に加え、近年の気候変動によってサンゴの分布域が拡大しています。さらに、南方系のサンゴが加わるなど生態系の変化は大きく、オニヒトデによる食害や異常水温によるサンゴの死滅などそれらの頻度は増加しています。保全体制は整っていないため、WWFジャパンとここで協働することは、サンゴ礁保全の先駆的なノウハウを学ぶ良い機会であり、サンゴ保全体制の歴史がまだ浅い本海域の課題解決に資すると期待しています。

WWFジャパン初の高緯度サンゴ保全活動を、四国南太平洋沿岸で展開 黒潮生物研究所との協働決定、協定書を締結

広大な海の問題解決に対して、我々ができることは微力なことかもしれないが、まずは知識や最新情報を得ることが重要ではないだろうか。「高緯度サンゴ群集落」もそのひとつ。今後も、「高緯度サンゴ群集落」というキーワードに注目しつつ、少しでも海洋問題解決に貢献できることがないか探していきたい。

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