上も下もなく、ダイバーみな兄弟 ~気後れダイバーさんのお悩みから~
「ダイビングにもだいぶ慣れ、ドリフトダイビングに挑戦したいと思っていますが、びびっています。
というのも、100本も潜っている先輩が●●(とあるビッグスポット)に潜りに行ったとき、『常連さんに“その程度のレベルじゃまだ早い”的な嫌味を言われた』という話を聞いてしまったんです。
100本超えた先輩でそれですから、48本の私なんかが●●に潜るのは100年早いってことなんでしょうか……」(神奈川県・女性)
ベテランダイバーさんに気後れするというビギナーさんからの相談は、たまにですが定期的にいただきます。
逆に「たいした経験もないのに知ったかぶりをする」というベテランさんのお話を聞くこともあります。
小さい話のような気がしますが、趣味を超えて、それだけ真剣にダイビングに取り組んでいるからなのかもしれません。
ダイビングで100本は確かに大きな節目。
自分のことは何でも自分でできるようになり、ダイビング自体にストレスがなくなりダイビングが楽しくて仕方ない時期で、いわば、ダイバーの成人式です。
しかし、一方で“天狗の100本”と、自信が過信になりがちな時期とも言われています。
成人式を迎えたからと言って、いきなりその日から大人になれるわけではないのですが、気持ちはすっかり大人といった感じでしょうか。
ベテランさんの中には、それが鼻持ちならないと思う人がいるようなのです。
とあるガイドさんから聞いて思わず笑ってしまったのですが、「常連ダイバーが100本くらいのお客さんをつぶしにかかるんで困るんですよ~」。
つぶすって(笑)。
でも、ちょっとしたダイビングあるあるかもしれません。
経験本数が1000本を超え、その海だけで何百本も潜っている常連ダイバーさんたちは、いきがる100本ダイバーを見ると、「あら、坊や。そんなんで一人前のつもりかしら?」と、その鼻をポキンとやりたくなってしまうらしいのです。
確かに、ダイビングに限らず、こういうことってありますよね。
以前、ネット上でガンダムのマニアックな話で盛り上がっている方々がいて、そこに、「私もガンダム大好きです!」と入ってきた無邪気な方がいて、マニアックな方々にとっては浅い知識をぶちこんだら、たちまち潰されていました。
なにやら、その道のオタクにとっては、「そんなんじゃ俺は認めないよ」というラインがあるようです。
一方で、そんな常連ダイバーたちも初心者にはめちゃくちゃ親切という習性も持つらしいというからおもしろい。
自分の経験や知識を発揮できることに喜びを感じるベテランと、手助けしてもらえれば、ただただありがたい初心者とで幸せな相互関係が生まれるようです。
ただ、僕の知っている本当にスペシャルなダイバーは、100本ダイバーの喜びや自信を肯定的にとらえ、受け入れる方々ばかりです。
決して潰しになんてかかりませんし、「ただの趣味の話でしょ」と、ただただ人としてニュートラルに付き合います。
反対に、100本ダイバーでも謙虚でニュートラルなダイバーもいて、そういう方は経験を超えて素敵なダイバーですね。
以上のようなことを踏まえて、先述のお悩みの話にお答えするなら、そんなマニアックな常連ダイバーたちの嫌味は気にする必要はないということです。
と、同時に、こちらとしても背伸びすることなく、単純に、自分の経験本数とスキルをきちんと伝えて、設定されている基準を満たしていれば潜りにいけばいいのではないでしょうか。
結局はコミュニケーションの話。
常連ダイバーさんに迎合する必要はないですが、確かに蓄積した知識やノウハウを持っていることも確か。
普通にコミュニケーションしていれば、皆、いい人ばかりなので、良いチャンスととらえて、いろいろ聞けばいいのではないでしょうか。
要するに、天狗になっても、つぶしにかかっても誰も得はしないので、上も下もなく海が好きな者同士、ダイビングを楽しめばいいという至極当然のお話でした。