みくらとイルカの徒然コラム ~御蔵島へ通って10年以上~(第4回)

御蔵島のイルカと泳ぐためのベストな装備や必要なこととは? 

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今シーズン初めての御蔵島ドルフィンスイムに行ってきました。

御蔵島のイルカ(撮影:寺山英樹)

今回、自分の中のテーマは“リセット”。

というのも、かれこれ10年以上、御蔵島へ毎年通っているので、良くも悪くも慣れてしまい、装備や行動も適当になってきていると感じたから。
ここで一度立ち止まって、これまでの反省を活かして、改めて、イルカと泳ぐためにベストな装備や必要なことを考えてみようと思ったのです。

スキンダイビングでベストなウエットスーツとは?

まず、装備について見直してみました。

いつも悩むウエットスーツ。

“防寒”が圧倒的に重要なスキューバと違って、泳ぐ、潜る、という要素が大きいドルフィンスイムでは、「泳ぎやすさ」と「寒さ」の微妙なバランスでスーツを決めなければなりません。

最終的には人それぞれというしかありませんが、自分の場合、これまでは泳ぎやすさ重視で、下がハーフパンツで上がフードベスト+ラッシュというのが割と多かったのですが、水温が25度を切ると寒く、天気が悪ければ、船上でも寒い。
我慢できなくはないのですが、歳かもしれません(泣)。

防寒は「大丈夫」「我慢できる」ではなく、「快適」「ノーストレス」が基本なので、今回から、防寒重視で5ミリの長そで長ズボンのワンピースにしようと、まずは思いました。
過去、肌を露出した部分をプランクトンにやられ、かぶれてしまったのも理由のひとつです。

ただ、イルカだけでなく、ザトウクジラやミンククジラと泳いで、とても大事な要因だと痛感しているのが「快適な水面姿勢」と「泳ぎやすさ」。

水面に浮かんで海の中を見るとき、長ズボンだと下半身に浮力があり過ぎて、真下しか見られないんですよね。
首を上げようとすると、首が窮屈で疲れる。
重量のあるカメラを持っているとなおさらです。

首の稼働域を考えても、下半身がある程度沈んだ方が水面から水中は見やすいのです。

また、水面を泳ぐときは、しっかり蹴り込めることが大事で、そう考えるとやっぱり、ひざ上の半ズボンがベターな選択になってきます。
スキンダイビングの場合、着底もしないので、さほどヒザのケアも必要ありませんしね。

ということで、防寒と肌の露出というデメリットを少し捨て、今回は、5ミリの長そで半ズボンにしまた。

結果は、防寒に関しては快適でしたが、しっかり潜るにはウエイト2キロが必要。

たかが2キロともいえますが、やはり少し身軽さは失われました。
泳いだり潜ったりすることはもちろん、意外だったのが船上へのエグジット。

いつもはラダーを使わずに、船のヘリにつかまり、ひと蹴りして勢いをつけたらあとは腕力でヒョイっと海から上がっていたのですが、ウエイトがあると余計に腕力がいります。
また、後述しますが、柔らかいフィンだったので、蹴り上げの瞬発力が少なく、船上へのエグジットが大変になって、最後はラダーを使うことにしました……。

そんなこんなで試行錯誤した結果、自分の考えるマイベスト・ウエットスーツは、条件付で……

3ミリの長そで半ズボン

という結論に至りました。

もちろん、天候や水温次第で、もっと薄手の時もあっていいと思いますが、まあ、あまり肌の露出が多いと、プランクトンにやられて痛そうな方はよく見かけますので……。

御蔵島のイルカ(撮影:寺山英樹)

条件というのは、まずは、「首のシールド」。

スキューバと違って、船から何度も出入りをするスキンダイビングでは、首の隙間からチョロッと入って来る水が実は結構ストレスになっています。

首に隙間がないジャストフィットなウエットスーツ、もっと確実なら、海獣カメラマンでおなじみの越智カメラマンも使っているような、首かけのあるウエットスーツやフードをかぶるのがベストかもしれません。

もうひとつの条件が「ボートコート」。

イルカやクジラとスキンダイビングをする時に痛感するのが、ボートコートの重要さ。
実は水中より船上の防寒の方が大事かもしれません。

南の島や、夏の海へ行く時、荷物がかさばることもあって、ボートコートを持って行かない方は結構多いのですが、イルカやクジラを探すために船上にいる時間も長いので、天候が悪いと結構冷えます。

また、ボートコートがあれば、泳ぎやすさを重視して、水中では多少、薄手のウエットにすることもできます。
防寒の点では5ミリが快適ですが、泳ぎやすさを考えて3ミリがベターだと考えるのも、ボートコートがあればこそ。

スキンでもスキューバでもボートコートを持っていくことは、強くオススメします。

薄手のスーツ、首のチョロっとした浸水、船上でのボートコート無しなど、「そんなの大丈夫」「全然、平気だったよ」という方は多いのですが(ガイドさんでも)、一度、だまされたと思って経験してみると、その快適さに驚くかもしれませんよ。

イルカと泳ぐためにベストなフィンとは?

今回、いつものラバーフィンから、ロングフィンに変えてみました。

オマーのフィン・スティング

フリーダイビングでもお馴染みの、O.ME.R(オマー)スティングレイ

ポリプロピレン製のブレードは、長くて柔らかい(ソフトタイプを選んだので)のが特徴で、蹴り方のコツをつかめば、推進力もつき、何よりドルフィンキックの時、全身のしなりがフィンにうまく伝わって、とても楽でした。

柔らかいので瞬発力のいるジェットスタートはしづらいのですが、御蔵の場合、先回りしてイルカを待ち構えるスタイルですので、助走時間もあって問題ありません。
また、ある程度長く併走するにも最適で、とても気にいりました。
水中でのフォルムもカッコイイですしね。

デメリットは船上で動きづらいこと。

まず、エグジットの際、ラダーから船ヘリをまたぐのですが、体が硬いので股関節が痛い……。

さらに、狭い船上で長いフィンは邪魔で、歩きづらく、船上では結構ストレス。
ラダーを使わずに船に上がるにも、ひと蹴りが弱く、より腕力が必要でした。

ただ、これは改善できそうです。

このフィンはブーツを履くことを前提として手に入れたので、ブーツを履くとジャストフィット、素足だとスカスカです。

意外と知られていませんが、イルカやクジラと泳ぐスキンダイビングの際に大事なことは“すぐに着脱でき”こと。

船上で、靴を脱ぐより簡単に、すぐにフィンの脱着ができるようになると、ボートの乗り降りにストレスを感じなくなり、イルカ・クジラ遊びが本当に楽しくなります。

僕もこれまでのラバーフィンの時は、薄手の陸上用のソックスか素足で、手を使わず、靴を脱ぐ感覚でフィンが脱げたのですが、今回、しっかりしたブーツを履くとなかなかそうもいかず、船上でずっと履きっぱなしなのがストレスでした。

ちなみに、越智カメラマンはびっくりするほどスカスカのフィンを履いています。
すぐに飛び込んで撮影できることを優先し、泳ぐ際も不自由ないそうです。

ということで、もうワンサイズ下のロングフィンを手に入れ、素足で履こうかなと今考えています。
また、ブレードも今度は少し硬めを試してみようかなと……。

御蔵島ツアー(撮影:寺山英樹)

今回、御蔵ツアーに参加していただいたゲストの皆さん。あいにくの天気でしたがイルカと大接近できました!

ドルフィンスイムは食事抜き!?

フリーダイバーのムッチーさんに、競技の前は、食事を控えめにしたり、抜いたりすることを聞きました。
代謝をおさえ、より長く水中にいられるようにするためかもしれません。

「イルカと泳ぐときもそうするとよい」とのことだったので、初日の朝食は味噌汁だけにして、ランチも食べ過ぎないようにしたのですが、息ごらえが長くなったかは定かではないですが、単純に、体が軽くなったようで良い感じでした。

食べ過ぎないのはもちろん、腹3、4分目くらいがよいのかも。

最後はやっぱり体力勝負!?
最適なトレーニングとは

まあ、コツやら装備やらと言っても、最後は体力勝負。
これ、圧倒的な真実(笑)

やはり、普段から心肺機能や泳力(脚力)を鍛えておくことがイルカと泳ぐための最大のポイントであることは変わりありません。

ランニングや水泳もよいと思うのですが、僕が良いと思うのが「階段ダッシュ」と「全体的な筋トレ」。

長時間・長距離を泳ぐわけではないので、脚力と心肺機能を鍛えられる階段ダッシュは、まさに、船からエントリーして、泳いで、エグジットして、またエントリーして、泳いで……を繰り返すスタイルとピッタリ。

また、泳ぐことばかりがクローズアップされて意外と見落とされがちなのですが、船のエグジットをスムーズに行なうことは結構大事。

腕力も含めて、全体的にある程度の筋力があると、どんな船でもエグジットがスムーズにいくと思います。
※実際、御蔵ドルフィンでは、ボートの乗り降りで、上半身が筋肉痛になったりします。

御蔵島のイルカ(撮影:寺山英樹)

意外と多い、寝不足ドルフィンスイム

今回、御蔵島へのアクセスである、東海汽船・橘丸の席を2等から特2等にしてみました。

竹芝桟橋を22:30ごろ出航し、御蔵島にはおよそ6時ごろ到着しますが、いつも朝は寝不足気味。

12時過ぎまで起きていることが一番の原因ですが、2等の座席にストレスを抱えているとも思ったからです。

安いことを望むゲストの方が多いこともあり、「まあ、移動だけだし」と2等にしていたのですが、背中の硬さとスペースの狭さ、そして何より、自分のイビキがヒドイので、人の迷惑を考えるとヒヤヒヤしてよく眠れず……。
あと、もう雑魚寝が辛い歳になりました(泣)。

往復で1万円くらい高いのですが特2等にしてみて大正解。

橘丸の特2等

橘丸の特2等

相部屋の2段ベットですが、カプセルホテル並みのプライベートスペースを確保でき、背中のクッションもいい感じです。

おかげで、朝はこれまでにないスッキリ感で目を覚ますことができました。

ドルフィンスイム前の体調を考えると、よく寝ること、よく寝られる環境を整えることは大事だと痛感し、これからは特2等をデフォルトにしようと思いました。

御蔵島のイルカ(撮影:寺山英樹)

以上、あくまで追求すればという話で、スキルや経験に合わせた自分なりの楽しみ方がありますので、もちろん、ビギナーでも、簡易のレンタル器材でもイルカと十分に楽しめます。
また、たまの休日、お酒やお喋りがドルフィンスイムと同等の楽しみであってもよいと思います。

ただ、ちょっとずつ自分のスキルを向上させていって、自分にあった最適な装備で遊ぶと、イルカやクジラと泳ぐことがどんどん楽しくなっていくと思いますよ。

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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