黒ひげ危機一髪!? のタンクチャージ
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前期の活動が終わる頃には、5名の1年生のうち2名は姿を消し、3名になっていた。
人数が減ると、頼もしいS君はともかく、
練習が厳しくなると貧血で倒れるI君(I君、読んでたらごめん)、
やはり男に比べると体力的に劣る私は「辞めます」と
いつ言おうかと思っているうちに辞められなくなった。
夏合宿は八丈島で行われた。
東海汽船に下級生は小走りで器材を積み込み、航行中は交代で番をする。
たいして高価でもない学生の器材など、持ち去る人はいないと思うのだが、
とにかく伝統は守らなくてはいけない。
八丈島合宿は、初めてきれいな海でのダイビングになる。
東海汽船が底土港に入港すると、港の中なのに海底が見えるのに驚いた。
早川のみそ汁とは大違いだ。しかも、夏合宿はスクーバの初体験!
息苦しさと闘うスキンダイビングとは違い、水中で息ができる。
どこまでも見渡せる海の中には、これまで見たこともないカラフルな魚がたくさんいる。
今思えば、ミギマキ、タカノハダイ、ソラスズメダイなど普通種だったのだが、
まだ魚の知識のない1年生にとって、名前すら分からない未知の魚であふれていた。
透明度の高い海に潜り「ダイビングって楽しい❤」と虜になった。
ところが、スクーバの始まりは、さらなる悪夢の始まりでもあった。
当時、法政アクアでは、20本ほどのタンクと小型コンプレッサー2台を所有していた。
八丈島にも持ち込み、チャージも自分たちで行う。このチャージが曲者だ。
おんぼろコンプレッサーは、タンク圧が120になると悲鳴を上げ、
それ以上充填すると安全弁が飛んでしまうのだ。
安全弁が飛ぶのは危険な状況であり、飛ばした場合は始末書を書かなければならない。
「黒ひげ危機一髪」のように、ドキドキしながらチャージしなければならない。
さらに厄介なことに、1本充填するのに40分近くかかり、
すべてのタンクを充填するには4〜5時間かかる。
八丈島の民宿の庭では、海から上がり疲れ切った学生が見守る中、
コンプレッサーの唸りが夜遅くまで響いていた。