PADIの教材にもの申す

我れ潜る。故に我あり。

自分の所属する指導団体の悪口を言うのも何だが、
PADIの教材には苦言を呈したいところがある。

PADIシステムは、教育産業関係者のパパもんの目からしても
全体として非常に良くできたプログラムなのだが、
OW講習用DVDのアメリカン・テイスト満載のギャグも寒すぎるし、
上のランクの教材にいけばいく程、誤植や記載された練習問題の誤答、誤訳が増えていく。

テキストはすべて英語からの翻訳で、
日本の事情にまったく合致しないというか、無視した記載も多い。
その代表例とも言えるのが中性浮力スペシャリティ用の教材
“Improve Your Scuba: Peak Performance Buoyancy”だ。
実はこれと同じ記述はアドバンス用のテキストにもある。

そこには「ウエイト量調整のためのガイドライン」なるものが示され、
次のよう例示されている。
(短く記載するため、たとえばワンピース=ワンピと略記するが内容には手を加えていない。)

■水着またはダイブ・スキン            0.5〜2kg
■3mmウエット(ワンピ)またはジャンプスーツ   体重の約5%
■5mmウエット(ツーピ)                 体重の約10%
■7mmウエット(ワンピ)フード、ブーツ付き          体重の約10%+1.5〜3kg
■ネオプレーンのドライ               体重の約10%+3〜5kg
■シェル・タイプのドライ+薄いインナー       体重の約10%+1.5〜3kg
■シェル・タイプのドライ+厚いインナー                体重の約10%+1.5〜3kg

3mmウエットならば、まだ日本でも夏場や南の島で使う機会があるかもしれないが、
ジャンプスーツって何だ? スカイ・ダイビングじゃあるまいし。
7mmの「ブーツ付き」というのも気になる。
他のスーツの時はブーツをはかないのかとも思うが、
ブーツなんか付いていようといまいと、ウエイト量に影響はほとんどないだろう。
ましてや7mmスーツである。日本で最も一般的なのは5mmワンピースのウエットだし、
冬場ならいわゆるロクハン、つまり6.5mmのツーピースだろうが、
それはこの表で挙げられていない。

ドライスーツも日本ではネオプレーンが主流でシェル・タイプのものはそれほど普及していない。(余談になるが、どういう理由からか、
関西ダイバーにシェル・タイプのものを使っている人が多いように感じる。)

結論を言おう。

この表はまったく日本では役に立たない。
それでも、ガマンして、もう少しつき合って見てみよう。
パパもんは5mmのツーピースなんか持ってないけど、
この表によれば6kg必要ということになる。

しかしそれはアルミ・タンクの場合なのか、スチール・タンクの場合なのだろうか。
この表のどこにも、そのことは記載されていない。
皆さんもご存じの通り、ふつうアルミ・タンクの場合には
スチールのウエイト量に1〜2kgの追加が必要になるのに、である。

記載されているのは
「ダイビング終了時に1〜2kgほど浮きぎみになる(中略)
ポピュラーな12ℓタンクの場合、約2kgほど浮きぎみなるので(中略)
ウエイトを足す必要がある(中略)
あるタイプのスチール・タンクの場合には、
ガイドライン以上のウエイトを必要としないものがある」
といった表現だけである。

「約…ほど」という曖昧表現の重複も日本語として美しくないが、
この記述から推測できるのは、ここで前提とされているのは
おそらく外国ではポピュラーなアルミ12ℓタンクなのだろうということである。

少なくともパパもんは日本でこのタイプのタンクを見た事はありませんけどね。
いずれにせよ、そこに消費エアを差し引いて2kg増量しなくてはいけない訳だから結論として、
アルミ・タンクで必要なウエイトはパパもんの場合8kgという計算になる。

この量は、皮下脂肪でしっかり「保温」しているからその分、
大量のウエイトを必要とする外人さんならいざしらず、
パパもんにとっては明らかなオーバウエイトである。
中性浮力のスペシャリティであるPPBで教えていい内容だとはとても思えない。

ちなみに前回言及したDコミュの「丸わかり計算適正ウエイト」で、
条件を一番悪くして(つまりパパもんを肥満体と設定して)
同じ5mmツーピース/アルミ12ℓタンクで調べてみると5.5kgと出た。
(本来のパパもんの体型だと2.5kgと表示される)
たぶん、これではアンダーウエイトだろう。

正解はこの両極端のあいだのどこかにあるようだ。
適正ウエイトって難しいね。

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