沖縄県宜野湾市で地元ダイビング事業者20名が海中清掃を実施! ボランティアではない、その背景とは

12月20日(火)に沖縄県宜野湾(ぎのわん)市で、宜野湾ダイビング協会に加盟する市内20のダイビングショップから20名のプロダイバーが集まり、海中清掃活動が行われ、推定50kgにも及ぶごみが回収された。この活動は、宜野湾市がサポートするぎのわんマリン協会の海洋保全事業の一環。元々は2020年に、コロナ禍で事業継続の危機に瀕している事業者への企業支援と観光V字回復に向けた準備、そして持続可能な海洋環境の形成に向けた取り組みとして始まった。今年で3年目となる本事業について、活動の様子を取材するとともに、改めて目的・背景などを伺った。

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清掃活動の様子

海中清掃が行われたのは宜野湾漁港の堤防付近。釣りで利用されることも多いエリアで、前年にここで清掃を行ったところ多くのごみが集まっていたため、今年もここで清掃を行うこととなったそう。


↑赤ピンの堤防周りの海域で清掃が行われた。

約40分のダイビング2本で、回収されたのは推定50kgにも及ぶごみ。釣り糸やペットボトルなど日常生活やレジャーで出たであろうごみのほか、ロープやタイヤ、船体の一部なども回収された。

清掃に参加したマレア沖縄店の清水氏に水中の様子を伺ったところ、「初めて参加したので過去とは比較できないのですが、サンゴに引っかかっていた釣り糸がとても多かったです。また、釣り糸とサンゴが同化してしまっている様子も見られ、ごみが長い間放置されてしまっていると感じました。水深20m付近のところにはカンやペットボトル、弁当の容器が溜まっている場所もありました」とのこと。


 
これまでの清掃活動にも参加しているダイブスタジオコーラルの蓮尾氏は「タイヤや自転車、カートなど今回の事業では処理しきれないような産業廃棄物もまだまだ水中にあります。釣り糸に関していえば、毎回同じくらいの量が回収されています。つまり毎年それだけのごみが出ているということで、放っておくと溜まっていく一方です。そうならないように、コツコツ拾うのはもちろん、普段からごみを減らせるように、宜野湾の事業者全体で感度高く活動を続けられたらと思います」と話す。

清掃活動の背景

冒頭でも述べたように、本事業は宜野湾市がサポートするぎのわんマリン協会の海洋保全事業の一環として実施されている。ぎのわんマリン協会は、宜野湾市の海域に広がる豊かな海を保全し、水産業とマリンレジャー産業をリンクさせ、お互いが安定して事業を展開していくために立ち上げられた共同体。宜野湾ダイビング協会のほか、浦添宜野湾漁業協同組合や沖縄コンベンションセンター、PADIジャパン沖縄オフィスなど12の地元の企業や団体が参加している。

海域の清掃活動のほかにも護岸清掃、サンゴの保全活動、海域調査、観光コンテンツの造成、イベントなどさまざまな活動を行っている。今回の清掃活動は宜野湾ダイビング協会が実働部隊となっており、始まった2020年当初は、コロナ禍で顧客が激減して事業継続の危機に瀕している事業者へ、海中清掃の仕事を依頼することで経済的に支援するという側面も大きかった。その後、集客が回復しつつあるため、本来の「海を保全する」という目的に絞り、ハイシーズンを避けた今の時期に地元の事業者を募り、海中清掃を継続的に実施しているそうだ。

本事業に対する想いについて、ぎのわんマリン協会事務局長の高江洲(たかえす)氏はこう語る。
「宜野湾市は普天間基地があることでよく知られる場所で、那覇空港から車で20分程度の都市部ですが、海域には豊かなサンゴ礁が広がっています。地形的に大型台風や漂着物による被害を受けづらいため、サンゴがあまり破壊されていないのかもしれません。また、宜野湾市は湧水が豊富で、年間を通して22度前後の湧水が海に流れています。そのおかげで水温が一定に保たれているのか、近海のサンゴの白化被害もそれほど大きくないように思います。私自身さまざまな場所でダイビングをしていますが、沖縄本島の中でも宜野湾の海は随一だと思っています。

そして宜野湾市のみならず、きれいな海は沖縄県の財産です。気候や食べ物、県民の人間性ももちろんPRポイントですが、最大の強みはこの海で、これがあるから全世界から沖縄県は注目されていると思います。また、私は沖縄県のほぼすべての事業は観光に結びついていると考えています。ですので、マリンレジャー産業という観光分野だけではなく、いろんな分野で観光の強みである沖縄の海を守っていくという考え方が広がってほしいのです。そのため、一般の方ができない特殊作業である海中清掃を地元のダイビング事業者に行っていただき、この活動を市民に広く周知していきたいです。

今後も清掃活動は続けていくのですが、清掃活動がなくなることが一番の目標です。その目標にたどり着くには、まずはごみを捨てないことが大事です。海中でごみを拾うのは、作業的にかなり大変です。こういった意識を多くの方に持っていただくために、この清掃活動を通してアピールすることはとても大事だと考えています」。

また、 宜野湾ダイビング協会の会長を務めるアークダイブの西尾氏にもお話を伺った。
「宜野湾の海はサンゴが多く、生き物が豊富です。ポイントまで港からすぐでゆっくり潜れるので、体験ダイビングの方はもちろん、特に生き物の写真を撮影する方にとって楽しめるフィールドだと思います。

今回の清掃活動には、若い方からベテランの方まで集まってくれました。みんな海が好きだから一生懸命取り組んでくれましたし、参加者の方々から「港の中もごみが多いので、そこのごみを拾いたい」と申し出があるなど、意識の高さが感じられました。今後も一緒に協力していけたらと思いました。

清掃活動を行ったエリアは、人が立ち入りやすいエリアの近くなので、ごみが溜まっていってしまうのは仕方ないのかもしれません。コツコツと拾い続けていくことが大事なのかなと思います。しかし根本的にはごみを捨てないことが当たり前になって、こういう活動がなくなることが一番です。宜野湾だけでなく、他のエリアにもこういった活動が広がり、発信されていくことで、より良くなっていくことも期待しています」。

都心部から近くサンゴが広がる宜野湾市での清掃活動はダイビング事業者だけでなく、宜野湾市や地元の企業、団体が連携して観光資源である海を保全していこうという想いから実施されていた。ボランティアではなく仕事として行うことで、活動自体の持続性を担保しているのが特徴だと感じた。この活動が他の場所にも広がり、ますます美しい海が次世代に続いていくことを応援していけたらと思う。

▶︎宜野湾ダイビング協会
▶︎ぎのわんマリン協会

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