海牛杯開催中!オーシャナ編集部が昨年優勝した雲見で参戦。そこはウミウシパラダイスだった
身も凍る寒さの中、ダイバーの間では「海牛杯(ウミウシカップ)」という名の熱い戦いが行われているのをご存知だろうか。全国のダイビングショップのウミウシマスター(ウミウシを探すのが上手なガイド)たちと、約2ヶ月の期間内で、ウミウシの体色と数の合計得点を競う“ダイビングショップ対抗戦”。同時に、ウミウシ限定の“フォトコンテスト”も開催中だ。
今年で開催4回目を迎える海牛杯。8ショップの参加があった昨年を上回る、10ショップが参加という、年々盛り上がりを見せる海牛杯の様子を現場からお届けすべく、今年もオーシャナ編集部・セリーナが参戦。今回は昨年の優勝ダイビングショップである静岡県・雲見の「コリンズDC」で、その強さの秘訣をこの目で確かめるべく向かうことに!優勝ダイビングショップの強さの秘密はいかに…!?
挑戦の舞台は静岡県の西伊豆に位置する雲見の海
ウミウシを探し始める前に、今回お世話になるコリンズDCのオーナー毛利佑さん(以下、毛利さん)に雲見の海について、少しお話しを伺ってみた。毛利さんは、20年近く雲見を案内している、まさに雲見を知り尽くしたガイドさん。
「雲見は伊豆半島屈指とも言われるほど地形が有名なスポットとして知られていますが、地形だけでなく、キンメモドキの大群をはじめ、キビナゴやイサキの群れ、初夏から秋にかけてはトビエイやハンマーヘッドシャークなどの大物との出会いなど、魚影が濃いポイントもあります。今回のように冬にはウミウシ、その他にもマクロを楽しめるポイントがあったりと、1年を通しオールラウンドに楽しめる海だと思っています。ポイントによっては、少し潮の流れが速い箇所もあれば、10mの潜降ロープが用意されている箇所もあるので、初心者から上級者まで、ゲストに合わせて満足いただけるような内容をご提案しています」。
続いてウミウシの紹介を始めた理由について伺ってみた。
「ウミウシを中心にご案内するスタイルは約6年前から始めました。もともと雲見の海はマクロ生物も多く甲殻類やウミウシなども以前から好きだったのですが、6年前、雲見に通い始めてくださったゲストがウミウシが好きで、一緒に探していくうちに雲見のウミウシの多さと魅力に引き込まれてしまいました。このことをきっかけに全国各地のウミウシガイドさんの元へ赴き、ウミウシの探し方を見聞きさせていただき、その土地のウミウシが多いとされるポイントの立地条件と似た場所を雲見で探し、ウミウシの餌となるカイメンやコケムシ、海藻などがたくさん生えている箇所を調査しつつウミウシポイントの開拓を行ってきました。その成果もあり、特に冬の間もゲストの皆さまに雲見の海を楽しんで頂ける一つの見所となりました」。
海牛杯には、現在熱海にダイビングショップを構えるClover Diving Serviceのオーナー・木部氏に誘われて、昨年から参加し始めたという。そして昨年、初参加で、他のダイビングショップを抑えて初優勝してしまったのだから、驚きだ。
雲見に生息するウミウシは、毎年水温が20度を下回る11月下旬から6月上旬にかけて出現する。ただ、その中でも時期によって、水温や餌(海藻やコケムシ等)が変わるので、ウミウシの種類も変わるそうだ。例年だと、浅い水深でも出現するようになる2、3月は、最も種類と数が多い時期だという。特に、背中にミノのような突起が規則的に並ぶ「ミノウミウシ類」という種類のウミウシが多いそうだ。なんと、多い日には1日で80種ものウミウシを見つけたそうだ。まさに、ウミウシパラダイスとでも言えようか…。
1本目は「黒崎」へ。初めて見るウミウシがたくさん
ではここから、海のレポートをしていこう!1本目は「黒崎」というポイントへ。ここは雲見の中で最も北に位置するポイントで、「黒崎大穴」、「Vケーブ」という洞窟が見どころ。洞窟の入り口を塞いでしまうほどのキンメモドキの大群が圧巻のポイントだ。しかし、今回はウミウシがメイン。洞窟にはいかず、ウミウシの餌となる海藻やコケムシがたくさん生えている「黒崎大穴」(下図、赤枠部分)前にある斜面を目指す。
取材日は天気にも恵まれ、海も凪ている。これは期待ができそうだ。
港からボートに乗船し、約5分。船酔いする間もなく到着。
どうやらこれが、ウミウシが餌とする海藻らしい。パッと見では、ウミウシがどこにいるかなんて、まったくわからない。
しかし、海藻をじっくりと探すと…。そこには…。
こんなにたくさんの種類のウミウシが…!
ほぼ初めて見るウミウシばかりで、「なんでそんな色・形になった!? 」と内心思うウミウシばかりでおもしろい。ミヤコウミウシは芸術作品のような色合いだし、ヤグルマウミウシに至っては、小さすぎる…!もちろん、見つけたのは私ではなく、毛利さん。さすがウミウシマスター。ちなみに、1本目で私が見つけられたウミウシの数はたったの2匹ほど。(笑)
1本目のダイビングを終えたところで、ウミウシダイビングをより楽しむためのコツを毛利さんに教えていただいたので、ここで少しご紹介。
- ●餌となる海藻を頼りに探す
ウミウシは基本的に餌となるものの上にいる。海藻やカイメン、ヒドラ、コケムシなどが主な餌。だだっ広い海の中で、1cmにも満たないウミウシをあてもなく探していては心が折れてしまう。 - ●サーチ用のライトは「白」がおすすめ
ウミウシを探す際にはライトの色が重要。赤みが強いライトだと背景の色とウミウシが同化してしまい探しづらくなる。白色のライトを使うことでウミウシの色味が増し、見つけやすくなる。 - ●写真撮るときは、水中ライトを真上から当てる
横からだとウミウシに影ができてしまうため、影ができないようにライトを真上から当てることでより鮮やかな色合いになる。 - ●カメラの「顕微鏡モード」とホワイトバランスの設定を駆使する
カメラの設定は機種によって異なるが、もし選択できれば「顕微鏡モード」を選択。使用している水中ライトが白色の場合は、ホワイトバランスの設定を「蛍光灯」にする(今回、私はオリンパス デジカメ TG-4を使用)。使用している水中ライトの光の色味に合わせてホワイトバランスを設定するだけで、綺麗な色味の写真が撮れる
2本目は「牛着岩」へ。エンドレスにウミウシを楽しむ
40分ほどの休憩を挟み、続いて2本目は、「牛着岩」というポイントへ。ここは、港からボートでたったの2〜3分。大牛と小牛の2つの大きな露出岩の周辺にも大小の岩が点在していて、岩と岩の隙間にクレバスやトンネル、アーチ、穴などが無数にできているのが特徴のポイントだ。通常であれば、神秘的な光を堪能しつつ大牛と小牛の間を抜けたり、小牛を大きく回ったり、外側から大牛の周りを巡ったりと、さまざまなコース取りができる。だが我々は、ここでも地形や魚に脇目も振らずウミウシの餌を探す(下図赤枠部)。
このカイメンの上をよーく探すと、ウミウシがちょこん、と乗っかっているのだ。フサフサした海藻で探すより、探しやすい!とはいえ、私は結局5匹ほどしか自分で見つけられず、毛利さんが次から次へと見つけるウミウシをエンドレスにひたすら撮影していた(笑)。自分で探す間もないほどだったが、これはこれで楽しかった。
あっという間に2本終了!果たして何種類のウミウシを見つけることができたのか。
ダイビングショップに戻り、集計タイム!
ダイビングを終え、ショップに戻って本日の集計。
今回見つけたウミウシはなんと56種!獲得したポイントは350ポイント!
※同じ日に参加していたゲストの方との合計
雲見で海牛杯に参加してみて、ウミウシが好む餌である海藻やカイメンが多いことに比例して、ウミウシも多いということ。ゲストの皆さまに雲見の海をもっと楽しんでほしいという毛利さんの想いで、ウミウシがたくさん生息する場所を開拓してきたこと。こういったことが昨年の海牛杯での優勝に繋がったのではないかと思った。
今年で2回目の参加となったが、1年の中でこんなにウミウシを探して、写真を撮って、いろんな種類のウミウシを見られる日は他にない。改めてダイビングや海の新しい魅力を発見する機会であることは間違いないだろう。
「海牛杯&フォトコンテスト」結果発表について
2023年「海牛杯&フォトコンテスト」の結果発表は、Facebookのイベントページ、および各参加ショップのブログやホームページ、SNSによって発表される。中間発表は3月1日、結果発表が4月上旬。イベントページには各ダイビングショップが見つけたウミウシの写真も見ることができる。
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