水中写真家・鍵井靖章氏が海洋ごみをテーマにした写真、映像+αの展示「海とゴミと鍵井靖章」を6/13~開催

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常に新しいテーマを求め、様々な水中写真の可能性を表現してきている水中写真家・鍵井靖章氏(以下、鍵井氏)。今回は「海洋ごみ」に真正面から向き合い、それをアートとして表現する全く新しい展示「海とゴミと鍵井靖章」を企画。2023年6月13日(火)~18日(日)、原宿から表参道を繋ぐキャットストリートにある「ミルギャラリー神宮前」で開催する。その展示内容は鍵井氏の水中写真のほか、日本各地の海で仲間のダイバーたちと拾ってきた海洋ごみも作品として展示されるという。いったいどんな展示になるのか?鍵井氏に話を伺った。

海洋プラスチックの水面下で漂うアオリイカの群れ(写真:鍵井靖章)

国内の海で撮影を続けてきたここ3年で、日本の海岸線の現状を知った

オーシャナ編集部(以下、――)

鍵井さんが環境問題に真正面から取り組んだ展示をされるのは、今回が初めてなのではないかと思います。このような展示をしようというきっかけや経緯を教えてください。

鍵井氏

コロナ禍になってから、日本各地の海で撮影する機会が増えました。そんな中で愛媛県の佐多岬を訪れたときに、膨大な量の漂着プラスチックごみを目の当たりにして、とても衝撃を受けたんです。ほかにもいろいろな海岸で漂着したごみを見る機会があり、日本の海岸線の現状を初めて知ったという感じでした。

海を仕事場としている水中写真家として、海の環境問題は見過ごせない。何かできないか?と考え始めましたが、すぐには形にできませんでした。ようやく2年くらい経ってから多くの仲間が協力してくれて、今回の展示が実現しました。ただ、自分の中では「30年間海にお世話になった水中写真家の自分が何をすべきか」という思いはずっとあって、今回のような展示を行うことは必然だったように感じています。

――

どのような展示内容になりそうですか?

鍵井氏

海洋プラスチックごみをスクリーンにして、海の映像を流そうと思っています。あと水中写真の展示は当然する予定なんですが、全体像はまだ頭の中のイメージの世界という感じで…。僕と協力者の方で拾ってきたプラスチックごみを使って、何か表現したいなとも考えています。前日の設営日まで、どうなるかわからないところもあって、いつもの写真展とは違って、少し不安もあります。

――

今回展示に使用されるごみは、鍵井さんが実際に各地で仲間の皆さんと拾われてきたものなんですよね。

鍵井氏

そうです。主に愛媛県の愛南と和歌山県の串本で拾ってきたものなんですが、これから沖縄県の阿嘉島にも行くので、もう少し拾ってきたいと思っています。

海岸に漂着した膨大な量の海洋ごみを、鍵井さん自らが仲間の皆さんと一緒に拾い集めてきた

鍵井さんに伺ったところ、今回の展示には以下の方や企業、団体等が協力してくれているという。

「海とゴミと鍵井靖章」に協力している方、企業・団体等(順不同、敬称略)

DIVE愛南、一般社団法人E.Cオーシャンズ、甲田圭、西良顕行(wedge川西)、
武藤洋、濱雅則、串本海中フォトコンテスト実行委員会、
栗巣弘子(川西阪急)、手塚まりこ(大丸神戸店)、中西知果、
MIL GALLERY JINGUMAE、一緒に海洋ゴミを拾ってくれた海の仲間

ダイバーには「海に対して恩返ししたい」という気持ちがあることがわかった

――

多くの方の協力の上に、今回の展示は成り立っているのですね。具体的にはどのようにごみを拾い、そして集めてきたのでしょうか。

鍵井氏

撮影やイベントなどのダイビング終了後、ダイバーの方たちに「ごみ拾いしませんか?」と声をかけると、皆さん参加してくれました。誰一人嫌な顔をしないで、待ってましたとばかりに一緒にごみ拾いをしてくれて。断ってきた方は、いなかったかな…。
潜り終わったばかりなのに、疲れた顔も見せずに付き合ってくれて。ダイバーの皆さんは、僕と一緒で海に対して恩返ししたいという気持ちに溢れているんだと感じました。

――

海を愛する気持ちが、自然とごみ拾いという行動に結びついているんですね。

鍵井氏

きっかけがあれば、皆さんこういうことをしたいという気持ちがあるんでしょうね。これは自分にとって、新たな気づきでした。

愛媛県佐多岬の海岸線には、プラスチックごみだけでなく、木材や漁具などさまざまなごみが流れ着いてくる

――

こういった展示は今回がスタートで、今後も続けていかれると思っていいわけですね。

鍵井氏

もちろん今までやってきたような自分の作品を中心とした、海の写真展は変わらずに開催していきますが、東日本大震災が起きてからずっと三陸の海を潜って撮影してきたように、この海洋ごみをテーマにした活動はこれからも並行して続けていくと思います。今回はミルギャラリー神宮前の方から、写真展のこけら落としとして僕の展示をしてほしいと声をかけていただきまして。初めてのギャラリーなので、それも楽しみです。8月には僕の地元の川西阪急でも展示の予定があります。

――

海の環境問題をテーマにした表現は、鍵井さんの新たなライフワークになっていきそうですね。最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

鍵井氏

今回の展示で、皆さんに何をどのように伝えることができるのか。初めての試みなので、自分自身まだわからない部分もあります。しかし、だからと言って、何もしないよりは何か始めたほうがいい。来てくださる方の海の環境問題への意識を高めようとか、そういう気持ちは全くなくて、とりあえず今回は新しいことに挑戦させてくださいという気持ちです。ぜひたくさんの方に見に来ていただけたらと思っています。

――

ありがとうございました。どんな展示になるのか楽しみにしています。

鍵井氏は毎回さまざまなテーマの写真展を開催し、私たちを楽しませてくれるが、今回は新たな挑戦ということで、インタビュー時も展示に向けての準備真っ最中という雰囲気だった。水中写真家・鍵井靖章氏が、どのようなアプローチで海洋ごみ問題に向き合い、仲間の皆さんと表現するのかとても楽しみだ。開催期間中、鍵井氏は在廊予定とのことなので、ぜひ会場へ足を運んでみてはいかがだろうか。

「海とゴミと鍵井靖章」 


■開催期間:2023年6月13日(火)〜18日(日)
■開館時間:11:00~19:00
■会場:MIL GALLERY JINGUMAE(ミルギャラリー神宮前) 
https://milgallery.jp/
東京都渋谷区神宮前4-25-28 2F
℡ 050-5236-2341
(東京メトロ明治神宮前駅 徒歩3分、東京メトロ表参道駅 徒歩7分、JR原宿駅 徒歩8分)
■入場料:無料

水中写真家 鍵井靖章
1971年、兵庫県生まれ。1993年よりオーストラリア、伊豆、モルディブに拠点を移し、水中撮影に励む。
1998年に帰国し、独立。自然のリズムに寄り添い、生き物に出来るだけストレスを与えないような撮影スタイルを心がける。多彩な視点と色使いが人気で、大胆かつグラフィカルな水中写真で多くの人々を魅了する。一方3.11以降は、震災を経験した海に生きる生命を定期的に記録している。主な写真集に『unknown』(日経ナショナルジオグラフィック社刊)、『不思議の国の海』(PIE International)など多数。
2013年、2015年 日経ナショナルジオグラフィック優秀賞受賞など受賞歴多数。TBS「情熱大陸」、TBS 「クレイジージャーニー」などにも出演。

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PROFILE
大学時代に慶良間諸島でキャンプを行い、沖縄の海に魅せられる。卒業後、(株)水中造形センター入社。『マリンダイビング』、『海と島の旅』、『マリンフォト』編集部所属。モルディブ、タヒチ、セイシェル、ニューカレドニア、メキシコ、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、オーストラリアなどの海と島を取材。独立後はフリーランスの編集者・ライターとして、幅広いジャンルで活動を続けている。
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