ウミガメが直面するプラスチック問題。原因と解決策とは?

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現在、世界的にプラスチック製品の生産と使用量が加速度的に増大している。プラスチックは自然環境下での分解が極めて遅いため、使用後に適切に処理されないプラスチック製品は長期にわたって海洋を汚染し続ける状況だ。今もなお、海洋生態系におけるプラスチック流出による汚染の影響は年々深刻化しており、生物多様性の危機が叫ばれるようになっている。そこで、ウミガメをはじめとするプラスチック汚染の被害を受けている海洋生物の実状をまとめるとともに、私たちが今すぐできる解決策を提案したい。

プラスチックが海洋環境に与える大きな影響

マイクロプラスチックの場合

5mm以下のプラスチック片のことを指すマイクロプラスチックは、魚やウミガメが餌と間違えて誤食するなどして身体に取り込まれやすい。そして、食物連鎖を通じて影響が広範囲に広がっていくことが懸念されている。さらに、マイクロプラスチックに含まれる添加剤などの有害化学物質が、生体内に蓄積することで慢性的な健康被害を及ぼす可能性も指摘されている。この問題は、魚を食べる私たち人間にも関係することでもある。

プラスチックごみの場合

海を浮遊するビニール袋や漁業に使われる魚網などのプラスチック製品は、クジラやウミガメが誤飲したり身体を絡めたりすることで、致死的な障害の原因となる。たとえば、インドネシアの国立公園で発見されたマッコウクジラの死体からは、約6キロのプラスチックごみが検出された。これにはプラスチックコップ115個、ペットボトル4本、ビニール袋が25袋、ビーチサンダル2足が含まれており、海洋生物が直面する深刻な脅威を示した典型的な例と言えるだろう。

このように、海洋生物がプラスチックごみと直接接触することで起きる物理的な障害は、個体群の存続の危機にも直結する。特に、東南アジア諸国では使い捨てプラスチックが問題となっており、海に漂着するプラスチックごみの60%が中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイの5カ国から出ているとされている。これらの国の中でも、タイはプラスチックごみ削減に向け急速な対応が行われており、2022年にプラスチック製レジ袋を全廃となるなど改善に向けた動きもみられている。

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大型プラスチックとされる漁業網Photo by Unsplash, Kristin Snippe

ウミガメが直面するプラスチックごみ問題

ウミガメを含む長寿の海洋生物は、海洋プラスチック汚染の影響を最も受けやすい存在。なぜなら、生涯にわたって膨大な量のプラスチックを接触するリスクが高いからだ。

漂流するプラスチックごみや廃棄された漁具に身体を絡め取られ、溺死するケースが後を絶たない。また、クラゲなどの餌をプラスチック製品と間違えて飲み込むことで、消化管の詰まりや破裂が起き、死に至る例も数え上げるときりが無いほど発生している。

ウミガメの胃からは、ビニール、レジ袋、歯ブラシ、ライターなど、私たちの日常生活で使われるあらゆるプラスチックゴミが検出されている。マイクロプラスチックの摂取も多くみられ、将来的な健康被害が危惧される状況でもある。ウミガメにとってプラスチックは、生存そのものを左右する重大な脅威なのだ。

浮遊するビニール袋とウミガメ Photo by adobe stock

ウミガメがプラスチックを誤飲する理由

美味しそうな匂いが原因

今まで、誤食の原因は透明または半透明のプラスチック製品を、自然界での餌であるクラゲや他のゼラチン質の生物と見分けがつきにくいからという説があった。しかし、2020年に発表された、ウミガメの調査と保護を行うCaretta Research Project(カレッタリサーチプロジェクト)の研究員らの研究結果から、ウミガメがプラスチックごみを食べてしまうのは、海を漂うプラスチックに付着する藻類や微生物の臭いが原因ということが明らかになった。藻類もまたウミガメの餌であり、その匂いで餌と認識していたということだ。

このように、ウミガメがプラスチックを誤飲する現象は、海洋プラスチック汚染の深刻な副作用の一つであり、生態系全体に影響を及ぼす可能性がある。海洋プラスチック汚染が進むにつれて、ウミガメがプラスチックを誤飲する確率は高まり、その結果、消化管の障害や栄養不足、内分泌系の乱れなど、健康上の深刻な問題に直面することに繋がる。ウミガメの保護と海洋環境の改善に向けた取り組みは、これらの問題に対処するために不可欠なのだ。

海を漂うプラスチックごみと魚 Photo by Unsplash, Naja Bertolt Jensen

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ウミガメだけじゃない。他の生き物にも広がる被害

海洋プラスチック汚染の影響は、ウミガメ以外の生物種にも及んでいる。クジラ、イルカ、アザラシなどの大型哺乳類、アホウドリやカモメなどの海鳥類もまた、深刻な被害に晒されている。

これらの生物の胃からも大量のプラスチックゴミが検出されており、物理的な障害だけでなく、有害化学物質による健康への影響が危惧されている。プラスチックごみを餌と間違えることで栄養失調に陥り、生存競争に敗れる個体も出てきている。海洋生物にとってプラスチックは、避けて通れない死の危険だといえる。

網に締め付けられるアザラシ Photo by Unsplash, Brian Yurasits

海洋生物とプラスチック問題に対する解決策

海洋プラスチック汚染を食い止めるためには、世界中の人々の意識と行動、そして社会システムの変革が必要不可欠だ。ライフスタイルやビジネス活動を根本から見直し、使い捨てプラスチックの利用を最小限に抑える必要がある。

日常生活の中でできることとして、マイボトルの活用や過剰なパッケージを避けるなど、プラスチックごみの発生自体を減らすことが重要。行政による廃棄物処理制度の確立や、企業のプラスチック削減目標もまた大きな役割を担う。

たとえば、「mymizu(マイミズ)」という企業は、ペットボトルの使用料削減に向け、給水できるスポットを紹介するアプリを開発し、マイボトルを持つ習慣を啓蒙している。他にも、京都に店舗を構えるスーパー「斗々屋」では、ビニールや包装物の削減に向け、量り売りスタイルで商品を販売している。

今日では、科学技術の進展を活用し、環境負荷の少ない新素材の開発や、再生可能なバイオプラスチックの利用拡大が期待されている。そして、海を未来に受け継ぐために、世界中の人々が知恵を絞って行動を起こすことが求められている。1人で始められること、仕事で携われることなど、自分の身の回りでもプラスチック問題の解決に貢献できることを探してみてはいかがでしょうか。

まずはできることから!プラスチックの使用量を診断しよう

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PROFILE
奄美在住。高校生の時にブラジル留学を経験。泳ぐのが苦手で海とは縁がない人生だと思っていたが、オーシャナとの出会いを通じてOWD(BSAC)を取得。オーシャナを通じ、環境問題や海のことについて勉強中。
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