東京から近場の日帰りダイビング!神奈川県の城ヶ島でボート&ビーチダイビング
「ダイビングは1年中楽しめる」という話を巷ではよく聞くが、ダイバーのみなさんをズブズブ沼にはめるための謳い文句ではない。海外旅行に行けないことを嘆くよりも、ダイビングが1年中楽しめることを立証するために、こんな今だからこそ近場の海の魅力に触れてみてはいかがだろうか?水温が低いときにしか現れないダンゴウオを見るためにドライスーツデビューしてみてもよいと思う。
南国のダイビングだけではもったいない、知れば知るほど奥が深い日本の海。今回は3月の春の海で出会った水中生物の話をしよう。
城ヶ島のダイビングで出会ったダンゴウオ
東京都心を朝5:30に出発し、美しい朝焼けを浴びながら湾岸線を走ること約1時間。ビルや港湾施設だらけの景色から、あたりは緑深い山の景色へと変貌する。遠く海の向こうに見えるのは千葉県の房総半島、東京湾を挟んで神奈川県側にあるのが今回の目的地「城ヶ島」だ。神奈川県の先端にある三浦半島と橋で繋がった島で、三崎マグロが有名な地域でもある。
日本の海は3月頃から徐々に水温が暖かくなり、水中には海藻が増えはじめる。オーシャナで連載中の“海の森「藻場」を育てて守ろう”でも紹介したように、海藻は魚たちの大切な生息場所だ。
そしてこの時期になると、伸びてきた海藻にどこからともなく現れるのが今回の主役である「ダンゴウオ」。ダイビングショップやダイバーのSNSでダンゴウオの写真が出てくると、春の訪れを桜の開花よりも敏感に感じる風物詩的な存在。
城ヶ島でボートダイビング
本来ならダンゴウオが目的のダイビングなので、水深が4〜5mと浅い城ヶ島のビーチではタンク(シリンダー)を借りてセルフダイビングで十分。ダイブコンピューターのNDL(※1)を心配せずに1時間は余裕で生物探索と撮影に没頭できる体に優しいダイビングスポットだ。
しかし、それだけでは物足りないと言うダイバーが多いのがこのスポットの特徴。
そこで、アドバンス以上のランクで20本以上のダイビング経験がある方には、1本だけでもボートダイビングに参加することをおすすめする。5分〜10分程度しか船に乗らず、1本潜ったら港に帰ってくるので船酔いの心配ない。
ただし、ボートダイビングのスポットは水深がやや深めなので、NDLやエア切れには十分注意が必要だ。最大で25m〜30m、平均でも18〜20mとなるので、エンリッチド・エア(※2)を使うことも推奨する。個人的な見解ではあるが、車の方は帰りの運転が楽になるので渋滞する高速道路での安全も確保できると感じている。
海に行く時は大体1週間前から気象情報や海況情報をチェックするのだが、天気やダンゴウオのことよりも、インドネシアでしか見れないと思っていた“気になるあいつ”情報があったので、直前までボートダイビングに参加するか悩んでいた。
現地で合流する予定の一人旅ダイバー仲間と相談し、数日前にダイビングショップのFacebookで生存確認がとれた“気になるあいつ”の正体「ボロカサゴ」をボートダイビングで撮りにいくことに。
日本の海でこの妖艶なカサゴを見れたことはとても嬉しかった。あきらかに普段よりもエアの消費が早かったので、かなり興奮していたのだろう。
(※1)No Decompression Limitの略。減圧不要限界や無減圧潜水時間と呼ばれ「今いる水深に減圧停止をせずにあとどれくらい潜れるか」を示す時間。
(※2)エンリッチド・エア・ナイトロックス。空気より酸素濃度の高い呼吸ガスのことで、ナイトロックスは窒素と酸素の英語「Nitrogen」と「Oxygen」を組み合わせた造語。
城ヶ島でビーチダイビング
ボートダイビングから帰ってきたらドライスーツを着たまま温水シャワーを浴びて、少し冷えた体を暖める。
日本のダイビングサービスはダイバーが快適に過ごせるようによく考えられている。このホスピタリティはぜひ外国人ダイバーにも味わって欲しい。
そして再び器材を装着して今度はビーチダイビングへ。
城ヶ島のビーチスポットは器材を着て歩く距離が短く、階段も手すりも整っており海へのエントリーがやさしいので、沖縄や海外でダイビングを続けてきたリゾートダイバーの本州デビューにもおすすめだ。
ビーチダイビングスポットは白い砂地と海藻が着いた岩場で水底が構成されている。天気が良くて透視度が8m程度あれば、沖縄のビーチダイビングスポットと寸分違わず楽しめるくらいだ。水中には目印のガイドロープも設置されており、迷う心配も少ない。
今回は、事前にダンゴウオ出没エリアをダイビングショップのスタッフに聞いていたので、水中MAPを確認しながら海藻ゾーンを探す。
そして無数にある海藻からわずか数cmのダンゴウオを探す…。
通常はここで一度心が折れるのだが、城ヶ島では心配ない。なぜなら、ダンゴウオが発見された場所には親切に目印が置かれているので、その目印を探せば見つかる確率がグンとアップするからだ。リゾートで目が肥えてしまってマクロが苦手な僕にはとても嬉しいサービス。
無事に1ダイブで4個体を発見し、その中でもお気に入りのサイズやカラーのダンゴウオに絞り、撮影を始める。写真を数枚撮った後に動画も撮影したのだが、これがなかなか苦戦した。
撮影をする時は、なるべく生物にストレスを与えないように反応をよく観察して距離やライトを調整する。また、カメラやフィンが魚の生息環境にダメージを与えないように神経を張り巡らせて注意する。少しでも水底にうねりがあると、たった水深5mの海での難易度は5つ星レベルに達するが、そこにスキルアップの楽しみとやりがいがあるのだ。
水中撮影に関しては、今回特別にお借りして使ってみた道具もあるので、また別の記事で詳しく書こうと思う。
とにかく、水温が16℃とまだまだ冷たい水中だったが、たった1匹の赤ちゃんダンゴウオを見つけただけで幸せになることができた。それだけで1週間は仕事をがんばれそうだ。
コロナ禍でも楽しみたいローカルダイビング
ボロカサゴやダンゴウオは、沖縄でダイビングをしている時に見ることはなかった。15年間で6000本のダイビング経験があるのだが、東京から車で行ける海でこんなに素晴らしい環境があることにいつも驚かされる。デスクワークが増えたので潜る頻度は減ってしまったが、6000分の1の出会いにワクワクしながら、次はどこに一人でひっそりと潜りに行こうか楽しみにしている。
仕事がほぼテレワークになり、自宅で過ごす時間が多くて歩くことも少なくなった。旅行にも行きづらくなり、大自然を目にする機会も激減。
ふと思うと海に潜るだけでなく、太陽に当たることも草木や動物に触れることも減っている。いかん、これでは免疫力が下がる。コロナウイルスの思う壺ではないか。
各都市のダイビングショップや現地ダイビングサービスは、この1年間でガイドラインや設備を整えコロナ対策を徹底している。とはいえ、緊急事態宣言発令中や感染者が増えている地域では引き続き注意が必要なこともあり、旅行の計画が立てられなかったり、突然旅行が中止になってしまうこともある。
しかし、人間は旅をすることで進化してきた生き物。ストレスの軽減やインスピレーションを得るためには、地元の散策なり車で行ける範囲なりで小さな旅をすることが大切だと思う。
ダイビングに行く直前にガイドへ連絡し、海のコンディションを聞きつつ県外から行ってもよいか確認する。控えてほしいと言われたら延期する。そんな気軽に行けるお気に入りのローカルダイビングスポットをつくってみてはいかがだろうか?
今回紹介したダンゴウオは、東京から行きやすい場所だと神奈川県、千葉県、静岡県のダイビングスポットで見ることができる。名古屋や大阪からだと石川県、富山県、三重県に、中国地方では鳥取県、島根県、九州では熊本県と、全国各地で見られる。
ダンゴウオが見れる全国のダイビングスポット
静岡県(伊豆)
2019年伊豆のダンゴウオシーズン開幕! 卵を守るオスやお腹の大きなメス、珍しい繁殖行動を見るなら今がチャンス!
鳥取県(田後)
東京から鳥取・田後へ! ~意外と近いぞダンゴウオの海 編~
神奈川県(葉山)
三浦半島の葉山でダンゴウオの産卵シーンに遭遇!これで産卵~ハッチアウト~稚魚~成魚までの全繁殖ステージを制覇
たった数cmの小さな水中生物が、ライフスタイルを変える出会いのきっかけになってくれると嬉しい。
オーシャナでは、海の旬のネタや水中生物の情報を募集しています。取材に来て欲しい!というダイビングショップ様やダイビングサービス様は、ぜひご連絡ください。
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