編集部・スイカがシーズン最後にサンゴの産卵シーンに立ち会えるかチャレンジ!
5月27日のサンゴの産卵ライブ配信から約1ヶ月経過した6月28日、配信中実況を担当していたスイカが、今度はリアルで産卵シーンを見るため、沖縄県恩納村の「山田ポイント」という別のサンゴの養殖場でダイビングをしてきた。
▶︎サンゴの産卵シーンのライブ配信に海からチャレンジ【5/26~28夜】
実はこの1ヶ月、サンゴの産卵を画面ではなく肉眼で見ようとずっとその時を待っていたのだ。ライブ配信の際、私は肉眼でサンゴの産卵を見ていない。なぜなら、船上でひたすらにモニターを見ながら解説を務める役割に徹していたからだ。結果的に視聴者の皆さまには楽しい時間をお届けできたと思っているが、あの現場で産卵を生で見られないという状況を想像してみてほしい。ダイバーであれば、絶対に潜って目の前で見たいとうずうずしてしまうのではないだろうか。
例に漏れずうずうずした私は、ライブ配信でご協力いただいた沖縄ダイビングサービスLagoonのサンゴの産卵ツアーに申し込みをし、6月10日~17日の約1週間、ほぼ毎夕、Lagoonさんからの「産卵しそうです」連絡を待ち続けた。しかし、私が行けない日に限って、なぜかサンゴは産卵していく。これはもうサンゴに嫌われているとしか思えない。
結局Lagoonさんのツアーには参加できず今年はもう見られないかなと諦めかけていた矢先、幸運にも違うポイントでサンゴの産卵を狙うと、恩納村美ら海を育む会代表の山城正己さんから連絡をいただき、そちらに参加することに。山城さんは漁師でありダイビングインストラクターでもある。長年サンゴ養殖にも関わるいわばこの海域のサンゴのプロフェッショナル。今日こそ、生でサンゴの産卵が見られる…!と、期待が高まる。
夕日とダブルレインボー!産卵も見られる気がする
そして来る6月28日、この日はエントリーする前からなんだか縁起が良かった。仕事が終わり18時にショップに集合。ゆっくりと準備をし、19時ごろに出港、そして山田ポイントへと向かう。
エントリー前にインストラクターたちが水中に様子を見に行っている間、船に揺られて夕日を眺めていた。美しい夕日は恩納村ではいつものことながら、反対側を向くとなんとダブルレインボーが現れた。潜る前からこんなに美しい景色が見られるなんて…。もう産卵見られなくても良い。とは言わないが、それくらい気持ちが満たされた時間であった。
19時40分。山城さんからの合図をきっかけにエントリーを開始する。日は沈みきっておらず、まだ薄明るい光が差し込む海の中へと入っていった。山田ポイントでは、水深5m前後に等間隔に立てられたポールから養殖サンゴが伸びている様子を観察することができる。
インストラクターがしきりに目を凝らしサンゴを見ているので近づいてみると、サンゴの枝のポリプ一つひとつに卵らしきものが見える。ちょっと気持ち悪い(笑)。蓮コラを見た時のゾワゾワ感というか…集合体恐怖症の人は薄目で見た方が良いかもしれない。
卵やサンゴの間に隠れる魚やエビを観察しながらのんびり楽しんでいると、誰かがライトをくるくると振り回し始めた。産卵が始まった。
念願の一斉産卵シーン!
近づいて見てみると、サンゴから小さな卵が湧き上がっている。思っていた以上に小さい。1mmくらいだろうか。卵と精子が入っているというバンドルがサンゴから離れて浮き上がっていく。ライブ配信の時も思ったが、たらこスパゲティのソースにしか見えない。スズメダイもエサのバイキング状態で浮かれて食べまくっている。
ライトに照らされバンドルがゆらゆらと昇っていく幻想的な光景に目を奪われていると、別のサンゴが同じように産卵し始めた。連鎖して、他のサンゴがまた産卵する。後から後からバンドルが湧き上がり、気づくと見渡す限りピンク色の球体に囲まれている。サンゴから目を離し宙を仰ぐと平衡感覚がなくなり、まるで宇宙空間に浮いているようだ。
この時産卵していたのはドネイと呼ばれるサンゴ。6個体が産卵していたそうで、山城さんによると、この6個体はすべて兄弟だという。似た遺伝子を持つため産卵タイミングも被ったのだろうか。しかし遺伝子が近いと受精確率は下がるそうなので、他の場所の遠いDNAを持ったサンゴのバンドルと出会えることを祈るばかりだ。
また、複数の種類のサンゴがこの養殖場にはあり、近いタイミングでウスエダミドリイシも少し産卵していたそう。22時過ぎには、また違う種類のサンゴが産卵するのではという予想もされていた。産卵の時間を種類ごとにずらすことで、効率よく受精できるようにサンゴ同士調整しているそうだ。サンゴ、思った以上に賢い…!
約1時間、サンゴの産卵の幻想的な風景を飽きることなく楽しませていただいた。しかし、これだけ長い時間潜ったにも関わらず、写真と動画が全然撮れていない。バンドルが小さすぎるのと、周りのサンゴを傷つけないようにと気を使うあまり中性浮力を取るのに必死でなかなか撮影がうまくいかないのだ。
今まで見ていたサンゴの産卵の写真は、写真家さんや普段から水中写真に力を入れているダイバーの努力の賜物だったのかと思うと、改めてカメラを極めている人すごいなと感心させられた。
念願だったサンゴの産卵。もう見たから満足ではなく、来年はいい画像や映像をお届けできるよう、そして他の種類のサンゴの産卵も見られたらと新たな野望が生まれたのであった。
取材協力:恩納村美ら海を育む会